心臓病、治療や予防は人でも動物でも似ているかもしれません

心臓は生命のリズムを刻みます。心臓の動きが乱れると、人でも動物でもからだ全体に深刻な影響が生じることがあります。しかし心臓病と診断されても、人でもペットでも大抵は定期的な検診と適切な治療によってきちんとケアでき、十分にコントロールすることができます。

家族と犬のイメージ

トクントクン。心臓は常に動いています。1年365日休むことなくよく働く強い臓器であり、毎秒その鼓動を刻みながら絶え間なく動き続け、細胞に酸素を与えるために、からだのあらゆる部位に休みなく血液を送り出しています。その回数は、寿命にもよりますが、一生のうちにだいたい10億回前後かそれ以上と言われており1、延々と続く営みです。

心臓がその役割を果たせなくなれば、全身の機能が損なわれます。これは、あらゆる哺乳類、とりわけ人や、犬や猫のようなペットなど複雑な生き物にいえることです。こうした生き物にとって、心臓の不調が体全体の健康に大きな影響を及ぼしうるリスクがあります。そして、人でもペットでも同じように、そのリスクを軽減する身近な方法があります。

 

※1 https://japan-who.or.jp/factsheets/factsheets_type/the-top-10-causes-of-death-2/
※2 Keene BW, et al. ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs. J Vet Intern Med. 2019 May;33(3):1127-1140.

 

心臓の問題に関する数多くの側面

心疾患は日本人の死因の第二位であり2、とても身近な疾患です。実は、ペットとして身近な存在でもある猫も肥大型心筋症に罹患しやすいと言われています3
心疾患以外にも、人と猫はともに高血圧症を患います。9歳を超える猫の20パーセント以上が高血圧症を患っている4といわれており、一方、人では、世界全体での有病率は35パーセントを超えています5。また、犬によくみられる心臓病としては、粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)があり、犬の10パーセント近くが罹患している6と言われています。この病気では、心臓の左側の弁に変性が起こり変形してしまった結果、血液が正しく送り出されなくなり乱流が起きていきます。聴診器で心雑音として確認されます。

心臓病のリスクを軽減する方法

多くの場合で、心臓病と、ライフスタイルおよび家族歴の間には強い関連性があると考えられるようになっています7。問題の根本原因が何であれ、重篤な病気のリスク因子は運動不足、肥満、不健康な食事だと言われています8。人でもペットでも、こうしたライフスタイルを避けることが、心臓病の様々なリスク軽減に役立つかもしれません。

 

人、猫、犬における心臓病の共通のリスク因子等

https://www.jhf.or.jp/secondary-prevention_mi/lifestyle/

 

さらに、人・犬・猫いずれでも、心臓病の多くは病気が進行するまで症状がない、あるいははっきりしないため、気付きにくいのが特徴です。ですから、人でも犬でも猫でも、心臓病を抱えながら生きることはリスクがあるといえますが、定期的な検診で心臓病を早期発見することができ、いったん発見できれば適切に治療することが可能です。したがって、人は定期的に検診を受けること、ペットの飼い主さんは愛犬や愛猫を毎年検診に連れて行くことがとても重要です。

 

「多くの人々、そして動物たちが心臓病を患って亡くなります。しかし、必ずしも心臓病が直接の死亡原因だとは限りません。速やかに診断を受け適切な治療を受ければ、心臓病を患っても、多くの場合は高齢であっても高い生活の質を維持することができます。」

Dr. Philip Watson、グローバルテクニカルディレクター、ペット・動物治療学

 

通常、心臓病は目立った症状や明らかな弊害を発症する前でも発見できる可能性があります。人・犬・猫いずれも、血圧測定、心電図、X線、又は心臓超音波などの検査によって診断することができます。結果に応じて、医師又は獣医師は、どんな治療が適切か助言や支援ができます。まずは、健康的な食事と十分な運動が、心臓のリズムを取り戻すための治療の一環になります。
心血管疾患は、人と動物に共通して起こる疾病の一例にすぎません。その他にも腎臓病、糖尿病、てんかん、変形性関節症などがあり、こうした疾患は、種の区別なく同じように発症します。したがって、私たちベーリンガーインゲルハイムは医療用医薬品とアニマルヘルスの2つの事業領域を有し、それぞれで培った知識や知見を可能な限り活かすために、協力して取り組んでいきます。

 

本文はグローバルのコンテンツをベースに翻訳したものです。

References

  1. https://www.jhf.or.jp/publish/upload_images/No17.pdf
  2. 令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況
  3. ISFM/International Society of Feline Medicine,
    „ Hypertrophic CardioMyopathy (HCM) and Testing “
    Conroy M, et al. J Vet Intern Med. 2018 Nov;32(6):1846-1855.5Keene BW, et al.
  4. ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitra valve disease in dogs. J Vet Intern Med. 2019 May;33(3):1127-1140.
  5. Zhou B, et al.Lancet. 2021 Aug 24.
  6. Keene BW, et al. ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs. J Vet Intern Med. 2019 May;33(3):1127-1140
  7. https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei1957/44/1/44_1_3/_pdf
  8. https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html