エンパグリフロジンのランドマーク試験である慢性腎臓病を対象としたEMPA-KIDNEY試験、慢性腎臓病の進行または心血管死の発現率がプラセボと比較して28%低下、有意なベネフィットが明らかに

和訳リリース,
  • 慢性腎臓病におけるSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の臨床試験であるEMPA-KIDNEY試験において、日常診療で良く見られる患者さんに関する新たなエビデンスを発表しました1,2
  • 本第Ⅲ相試験ではすべての入院において統計的に有意な減少(14%)を示し1,2、患者さんの安心や、保険医療システムの負担軽減につながることが期待されます3

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2022年月11月4日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。なお、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10mgです。

2022年11月4日 英国/オックスフォード、ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス
EMPA-KIDNEY第Ⅲ相臨床試験において、成人慢性腎臓病患者の腎臓及び心血管イベントに対する有効性が示され、主要評価項目を達成しました1,2。エンパグリフロジンの投与により、慢性腎臓病の進行または心血管死のリスクがプラセボ投与群に比べ28%低下し、有意差が認められました (HR; 0.72; 95% CI 0.64 to 0.82; P<0.000001) 1,2。EMPA-KIDNEY試験は、オックスフォード大学医療研究協議会ポピュレーションヘルス研究ユニット(MRC PHRU)がベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE: LLY)と共同で計画・実施と分析を行った試験で、結果は本日、MRC PHRUによって米国腎臓学会(ASN)のKidney Week 2022で発表されました。また結果は、The New England Journal of Medicineにも同日掲載されました。

EMPA-KIDNEY試験は、慢性腎臓病を対象としたSGLT2阻害薬の臨床試験としては初めて、試験計画書で事前規定された主な検証的副次評価項目の1つであるすべての入院を有意に減少(14%)させた試験となりました (HR; 0.86; 95% CI 0.78 to 0.95; p=0.0025 )1,2。慢性腎臓病は、患者さんの入院リスクが倍増する世界の死因の上位にある疾患です4,5。米国の慢性腎臓病の患者さんにかかる総医療費の35%~55%は、入院費用が占めます6

全般的な安全性データは、過去の報告と概ね一致しました。

EMPA-KIDNEY試験の共同試験責任医師かつ、オックスフォード大学公衆衛生学のクリニカルサイエンティストで名誉顧問腎臓専門医であるウィリアム・ヘリントン(William Herrington)准教授は次のように述べています。「慢性腎臓病の進行を抑制し、透析や移植などが必要となる時期を遅らせる効果のある新たな治療薬の登場が期待されています。本日発表された結果では、エンパグリフロジンは、糖尿病の有無にかかわらず、あらゆる重症度の慢性腎臓病の成人患者に有益である可能性を示しています」

共同試験責任医師であるリチャード・ハインズ(Richard Haynes)教授は、次のように述べています。「エンパグリフロジンは、慢性腎臓病の進行や心血管死のリスクを抑制することで、世界中の保健医療システムに良い影響を及ぼす可能性があります。EMPA-KIDNEY試験の実施にあたっては試験計画を策定し、従来の試験対象の枠を超える幅広い患者層を対象としました。SGLT2阻害薬の臨床試験は従来、糖尿病のある患者さんや、尿蛋白が多い患者さんなど、特定のグループを対象として行われてきました。今回の肯定的な試験結果は、慢性腎臓病をもつ幅広い患者層で認められたものであり、この疾患の治療を改善し、透析導入を防ぐことができることを示しています」

EMPA-KIDNEY試験は、今まで行われたSGLT2阻害薬の臨床試験としては最大規模で、幅広い患者層を含んでいます7。本試験は、心血管疾患、腎疾患、代謝疾患などの様々な合併症を有し、幅広い背景疾患を持つ世界各地の6,609名の患者を対象としました。本試験では、様々な重症度の慢性腎臓病の患者さんにおける腎臓と心血管のアウトカムを評価しました8

ベーリンガーインゲルハイムのヒューマンファーマビジネスユニット担当取締役のカリン・ブルヨン(Carinne Brouillon)は、次のように述べています。「ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPA-KIDNEY試験において、エンパグリフロジンの重要な所見がまた一つ得られたことを誇らしく感じています。本日発表したデータは、70万人を超える心血管疾患、腎疾患、代謝疾患の成人患者を対象とした本剤の臨床試験プログラムで蓄積されたエビデンスにさらなる知見を付け加える内容です。EMPA-KIDNEY試験は、エンパグリフロジンには、これらの密接に関連した疾患群の治療に変革をもたらす重要な役割がある可能性をさらに示す試験となりました」

上記以外の主な副次評価項目である、心不全による入院または心血管死、全死亡の減少は、統計的に有意な減少はみられませんでしたが、それは観察されたイベントの数によって制限されたことが原因です。これらの評価項目におけるリスク低下は、 同項目の有意なリスク低減を明確に示した他の臨床試験で得られているエビデンスと同様の傾向を示しています。

イーライリリー・アンド・カンパニーの製品開発部門バイスプレジデントのジェフ・エミック(Jeff Emmick)M.D., Ph.D.は、次のように述べています。「本日発表したEMPA-KIDNEY試験の結果は、慢性腎臓病の患者さんや医学界に歓迎いただけることでしょう。私たちも、試験開始からわずか2年で入院リスクの低下がみられ、その低下度は先に行われたエンパグリフロジンの心血管アウトカム試験でみられた有意な減少と並ぶ結果であったことに励まされる思いでいます。両社は今後、世界各地での慢性腎臓病の適応追加申請の計画を協議してまいります」

*腎臓病の進展:末期腎臓病(維持透析の開始または腎移植を含む)、eGFRが10 mL/min/1.73 m2未満で持続、腎死、またはeGFRの無作為化時点からの低下率が40%以上で持続と定義

*末期腎臓病:維持透析の開始、または腎移植を受けることを含む

慢性腎臓病や心・腎・代謝疾患に関する詳しい情報については、www.boehringer-ingelheim.com/chronic-kidney-disease をご覧ください。

参考情報
EMPA-KIDNEY試験について(エンパグリフロジンによる心腎保護効果の検討)1,2,8

EMPA-KIDNEY試験(NCT03594110)は、国際無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、慢性腎臓病の進展と心血管死のリスクに対するエンパグリフロジンの影響を評価する試験として設計されました。主要評価項目は、心血管死または慢性腎臓病の進展[末期腎不全(透析や腎移植などの腎代替療法が必要とされる状態)、eGFRが10mL/min/1.73m2未満で持続する状態、腎死、またはeGFRの無作為化時点からの低下率が40%以上で持続する状態のいずれか] のいずれかが生じるまでの期間としました。主な副次評価項目は、心血管死または心不全による入院、すべての入院、および全死亡としました。EMPA-KIDNEY試験には、慢性腎臓病の診断が確立した6,609人の成人患者が糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず参加し、標準治療に加えてエンパグリフロジン 10mgまたはプラセボの投与を受けました。

オックスフォード大学のMRC PHRUについて
オックスフォード大学の医療研究協議会ポピュレーションヘルス研究ユニット(Medical Research Council Population Health Research Unit, MRC PHRU )は、オックスフォード・ポピュレーション・ヘルス(Oxford Population Health)の一部門として、慢性疾患の治療と予防の向上のため、世界的に成人の早期死亡と障害による負担の多くを占めている心血管疾患と代謝性疾患(糖尿病や慢性腎臓病など)を対象とした研究を進めています。MRC PHRUは、EMPA-KIDNEY試験運営委員会の共同議長を務めたColin Baigent教授が率いています。MRC PHRUは、健康に大きなインパクトをもたらす革新的な臨床試験やメタアナリシスの調整役を果たしています 。今回の試験以外にも、MRC PHRUは、新型コロナウイルス感染症における画期的な無作為化評価(RECOVERY; Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy)を進め、これにはEMPA-KIDNEY運営委員会の共同議長である Sir Martin Landray教授がリーダーの一人として関わりました。MRC PHRUはその世界的なアプローチを通じて多数の被験者を対象とする研究に関与し、病因や治療効果に関する信頼性の高い情報を提供し、グローバルヘルスに大きなインパクトをもたらしています。

EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています9。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。9つの臨床試験と1つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。

エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です。エンパグリフロジンは、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています。また、世界各国で、成人の左室駆出率を問わない心不全患者の治療薬として、承認されています10,11

*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントのみならず、アンメットメディカルニーズを満たす可能性のある領域にも力を注いでいき、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。心不全やCKDの患者さんに対するエンパグリフロジンの影響を評価するための臨床試験が開始されています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。

イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)

This press release contains forward-looking statements (as that term is defined in the Private Securities Litigation Reform Act of 1995) about Jardiance® as a treatment for adults with type 2 diabetes, to reduce the risk of cardiovascular death in adults with type 2 diabetes and known cardiovascular disease, and to reduce the risk of cardiovascular death and hospitalization for heart failure in adults with heart failure, and as a potential treatment for adults with cardio-kidney-metabolic conditions and reflects Lilly’s current beliefs and expectations. However, as with any pharmaceutical product, there are substantial risks and uncertainties in the process of drug research, development and commercialization. Among other things, there can be no guarantee that planned or ongoing studies will be completed as planned, that future study results will be consistent with the results to date or that Jardiance® will receive additional regulatory approvals. For a further discussion of these and other risks and uncertainties that could cause actual results to differ from Lilly’s expectations, please see Lilly’s most recent Forms 10-K and 10-Q filed with the U.S. Securities and Exchange Commission. Lilly undertakes no duty to update forward-looking statements.

References

  1. EMPA-KIDNEY full data presentation, presented on 4 November 2022 at the American Society of Nephrology (ASN) Congress 2022 - Kidney Week
  2. Herrington, W.G. et al. Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease, N Engl J Med, online publication on November 4, 2022, at NEJM.org. DOI: 10.1056/NEJMoa2204233
  3. Iwagami M, Caplin B, Smeet L, et al. Chronic kidney disease and cause-specific hospitalisation: a matched cohort study using primary and secondary care patient data. British Journal of General Practice. 2018; 68(673): e512-e523.
  4. USRDS. 2021 Annual Report. [online] Last accessed: October 2022.
  5. Neuen BL, Chadban SJ, Demalo AR, et al. Chronic kidney disease and the global NCDs agenda. BMJ Glob Health. 2017;2:e000380.
  6. Nichols GA, Ustyugova A, Déruaz-Luyet A, et al. Health Care Costs by Type of Expenditure across eGFR Stages among Patients with and without Diabetes, Cardiovascular Disease, and Heart Failure. JASN. 2020; 31 (7):1594-1601.
  7. The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. [Published online ahead of print March 3, 2022]. Nephrol Dial Transplant. 2022. DOI:10.1093/ndt/gfac040.
  8. Clinical Trials. EMPA-KIDNEY (The Study of Heart and Kidney Protection With Empagliflozin). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03594110 Last accessed: October 2022.
  9. GBD 2015 Mortality and Causes of Death Collaborators. Global, regional, and national life expectancy, all-cause mortality, and cause-specific mortality for 249 causes of death, 1980–2015: A systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. Lancet. 2016;388(10053):1459–544.
  10. Jardiance® (empagliflozin) tablets. European Product Information, approved April 2020. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/jardiance-epar-product-information_en.pdf. Last accessed: October 2022.
  11. Jardiance® (empagliflozin) tablets, U.S. Prescribing Information. Available at: http://docs.boehringer-ingelheim.com/Prescribing%20Information/PIs/Jardiance/jardiance.pdf. Last accessed: October 2022.

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