ベーリンガーインゲルハイム、糖尿病黄斑虚血を対象とした初の国際臨床試験での良好な結果を発表

和訳リリース,

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が5月6日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。

2024年5月6日 ドイツ/インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムは本日、糖尿病黄斑虚血(DMI: diabetic macular ischemia)の治療薬候補としてBI 764524を評価する初の試験であるHORNBILL第1/2a相臨床試験の良好なデータを発表しました。本試験では、BI 764524は硝子体内への単回または反復投与において主要安全性評価項目を満たすと共に、有効性の初期徴候を示しました1

糖尿病黄斑虚血は、糖尿病網膜症(DR: diabetic retinopathy)によく見られる、不可逆性の病態であり、失明につながる恐れもあります1,2,3,4 。長期間にわたって、中心網膜の光感受性細胞に十分な血液が供給されない場合に発症する可能性があります。現在、糖尿病黄斑虚血を対象に承認されている治療薬はありません。

進行した糖尿病網膜症に対する現在の標準治療(海外)には、抗VEGF硝子体内治療または侵襲性のレーザー治療が含まれます。しかしながら、一部の患者さんでは、これらの治療を行っても病態が進行する場合があります5。BI 764524は、Sema3A経路を阻害するというこれまでにない作用機序で虚血領域に再灌流を起こし、従来以上の治療効果が得られる可能性が期待されています1

Byers Eye Instituteの眼科学教授、スタンフォード大学医学部の内科学および小児科学教授であり、本試験の治験責任医師および治験調整医師を務めたQuan Dong Nguyen博士(MD, MSc, FARVO, FASRS)は、次のように述べています。「HORNBILL試験の結果は非常に有望です。早期の介入によって、糖尿病網膜症の患者さんが糖尿病黄斑虚血のような視力を脅かす不可逆性の病態を発症するリスクを低減し、場合によっては予防する道筋が開ける可能性が示されました。糖尿病網膜症の患者さんでは、網膜無灌流が視力低下の主な要因となります。しかし、このHORNBILL試験までは、網膜無灌流が潜在的な治療対象として検討されたことはありませんでした」

ベーリンガーインゲルハイムの網膜疾患領域の責任者であるUlrike Graefe-Mody(Ph.D.)は、次のように述べています。「糖尿病網膜症や糖尿病黄斑虚血などの網膜疾患に伴う視力低下は、生活の質に深刻な影響を及ぼします。今回の結果は、不可逆的な障害に至る前に視力低下を予防するために、適切なタイミングで適切な患者さんに適切な治療を提供する個別化医療の開発という、私たちの目標の達成に向けた重要な一歩となります。BI 764524の安全性と有効性をさらに検討する第2b相試験の開始を心待ちにしています」

HORNBILL試験は、2024年The Association for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)年次会議で発表された、網膜無灌流、糖尿病網膜症、地図状萎縮、滲出型加齢黄斑変性などに関する他の試験を含む、ベーリンガーインゲルハイムの網膜疾患領域ポートフォリオに関する演題23本のうちの1本です。 

HORNBILL試験について
HORNBILL試験は、単回漸増投与(SRD: single rising dose、N=12)と反復投与(MD: multiple dosing、N=31)の2つのパートで構成されており、それぞれにおいて、用量制限有害事象(SRDパート)および治療関連有害事象(MDパート)の発現被験者数という主要安全性評価項目を達成しました1。また、16週目時点で偽注射投与*と比較した中心窩(ちゅうしんか)無血管(むけっかん)(FAZ: foveal avascular zone)領域の安定化という早期有効性についても、事前に規定した基準を満たしました(p<0.2)1。このことから、BI 764524が網膜無灌流に好影響をもたらし、網膜毛細血管の減少を防止する可能性があることが示唆されます1。今後開始される第2b相CRIMSON試験では、糖尿病網膜症を対象にBI 764524の安全性と有効性のさらなる評価が行われる予定であり、今年後半に被験者の募集が始まります。 
*偽注射投与:硝子体内投与をせずに、針のないシリンジを局所麻酔下で眼球にあてる方法

補足:
HORNBILL試験(NCT04424290試験)について
この第1/2a相試験では、汎網膜光凝固術による治療歴がある糖尿病黄斑虚血(DMI)を伴う糖尿病網膜症(DR)患者を対象にBI 764524の忍容性が評価されました1。本試験は、単回漸増投与(SRD)の後に反復投与(MD)を行う構成であり、BI 764524を硝子体内注射で投与しました1

単回漸増投与(SRD)パート
非無作為化非遮蔽のSRDパートでは、合計12人の患者が0.5 mg(n=3)、1.0 mg(n=3)、2.5 mg(n=6)の用量でBI 764524の硝子体内注射投与を受けました1。主要評価項目は、用量制限有害事象(DLEs: dose-limiting events)を発現した患者数でした。副次評価項目は、治療関連有害事象および何らかの眼の有害事象を発現した患者数でした1

SRDパートの患者の平均年齢は61.8歳でした1。SRDパートでは、DLEsは報告されませんでした1。患者4人の試験眼において5件の眼の有害事象が発生しましたが、いずれも試験薬との関連性はありませんでした。最高試験用量(BI 764524 2.5 mg)は安全であると判断され、反復投与(MD)パートに適用されました1

反復投与(MD)パート
無作為化遮蔽偽注射対照のMDパートでは、31人の患者がBI 764524 2.5 mgの硝子体内注射(n=21)または、偽注射投与(n=10)を4週間間隔で3回連続投与されました(ベースライン、4週目、8週目)。その後、22週目の試験終了時まで、14週間のフォローアップを行いました1。主要評価項目は、治療関連有害事象を発現した患者数でした。副次評価項目は、眼の有害事象を発現した患者数、中心窩無血管領域(FAZ)面積のベースラインからの変化、最高矯正視力(BCVA: best corrected visual acuity)、中心網膜厚(CRT: central retinal thickness)などでした1

MDパートの患者の平均年齢は59.5歳でした1。患者7人において眼の有害事象が発現し(試験眼、BI 764524投与群で3人の患者に4件の有害事象、偽注射投与群では4人に6件の有害事象)、そのうち1人について試験薬との関連性があると報告されました(飛蚊症)1。さらに、1人に全身性の有害事象が発現しました(治験担当医師により、試験薬との関連性があると判断)。眼内炎または閉塞性網膜血管炎は認められませんでした1

ベースライン時の平均BCVAは65.2文字、平均FAZ面積は0.65 mm²、平均CRTは252 mmでした1。HORNBILL試験では、16週目時点で偽注射投与と比較したFAZの安定化という早期有効性について、事前に規定した基準を満たしました(p<0.2)。短期間の試験期間において、他の副次有効性評価項目については関連性のある変化は認められませんでした。

BI 764524について
BI 764524は、網膜の虚血領域に再灌流を起こし、網膜での漏出を軽減することで、網膜疾患における網膜無灌流に対処することを目的とするヒト化抗Sema3Aモノクローナル抗体です。この化合物は、ベーリンガーインゲルハイムによって創薬・開発されたもので、網膜疾患領域の研究開発ポートフォリオに含まれています。

糖尿病網膜症(DR)と糖尿病黄斑虚血(DMI)について
糖尿病網膜症は、糖尿病患者の3人に1人が罹患し、労働年齢の成人における視力低下の最大の原因となっています。世界中で糖尿病の発症率が上昇するにつれて、今後も罹患者が増加することが予想されています。糖尿病黄斑虚血は、糖尿病網膜症の病態であり、徐々に進行し、不可逆的に視力低下に至るおそれがあります。

 

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の健康に取り組むバイオ製薬企業です。研究開発において業界トップクラスの投資を行い、アンメットメディカルニーズの高い分野で画期的な治療法の開発に注力しています。1885年の創業以来、ベーリンガーインゲルハイムは株式を公開しない独立した企業形態により長期的な視点を維持し、バリューチェーン全体にサステナビリティを組み込んだ活動を行っています。より健やかでサステナブルかつ公平な未来を築くため、53,500人以上の社員が130ヵ国以上で事業を展開しています。

詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)

References
1  Nguyen QD, Jhaveri C, Habib MS. Oral presentation at the Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO) 2024. Abstract number: 959
2 Marques IP, et al. Diabetes 2019;68:648–653
3 Sim DA, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci 2013;54:2353–2360
4 Tey KY, et al. Eye Vis (Lond) 2019;6:37
5 Ip MS, et al. Ophthalmology 2014;122:367–374

お問い合わせ