ベーリンガーインゲルハイム、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重篤な呼吸器疾患患者さんを対象とした、標的治療薬の第2相臨床試験を開始

和訳リリース,
  • 本試験では、SARS-CoV-2に感染し、現時点では治療選択肢が限定された重篤な呼吸器疾患を合併した入院患者さんを対象に、ファースト・イン・クラス化合物のBI 764198を評価
  • この新しい治療選択肢は、新型コロナウイルス感染症で集中治療室に入院した患者さんの67~85%に発症する 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)1対して、人工呼吸器サポートの必要性を低減し、生命を救う可能性
  • この第2相臨床試験の開始は、新型コロナウイルス感染症患者さんに対して緊急に必要とされる医薬品の創薬および開発を加速するためのベーリンガーインゲルハイムの取り組みのひとつ

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が10月27日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。

2020年10月28日 ドイツ/インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムは、受容体作動性カチオンチャネルであるTRPC6(Transient Receptor Potential Cation Channel Subfamily C Member 6)を阻害する薬剤 BI 764198の第2相臨床試験を開始したことをお知らせ致します。この強力かつ選択的なTRPC6阻害剤は、新型コロナウイルス感染症で入院した患者さんの肺への損傷をやわらげ、急性呼吸器合併症のリスクの低下あるいは重症度を低下させる可能性がある、強力で選択性が高い標的療法の候補です。BI 764198による治療の目的は、人工呼吸器サポートの必要性を低減し、患者さんの回復率を改善することで、最終的により多くの命を救うことです。ベーリンガーインゲルハイムは、新型コロナウイルス感染症との闘いに取り組み、このウイルスによる重篤な合併症に苦しむ患者さんのために新たな治療選択肢を開発するべく、専門知識とリソースを集結しています。

ヴァンダービルト大学の内科学教授、Ralph and Lulu Owen寄付講座教授、病理学・微生物学・免疫学教授を務めるDr. Lorraine B. Wareは、次のように述べています。「新型コロナウイルス感染症は、肺炎など重症の肺合併症を引き起こし、重篤な症例では、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を経て、呼吸不全に移行します。新型コロナウイルス感染症関連の呼吸窮迫症候群で入院した患者さんは、自発呼吸ができない場合があり、全身に酸素を循環させるために人工呼吸器が必要になることがあります。将来的には、ワクチン接種が浸透し、新型コロナウイルス感染症の重症例を低減させることが期待されますが、感染患者さんの呼吸器合併症に対処し、病院での治療の負担を軽減する可能性がある人工呼吸器の代替選択肢を提供する、というアンメットニーズが残されています」

SARS-CoV-2感染患者さんの約15%が重篤な病気を発症し、重症例の最大30%が集中治療室(ICU)での治療を必要とします。ICUに入院した患者さんの67~85%が重症の新型コロナウイルス感染症の致命的な合併症であるARDSを発症します1。重篤な呼吸器疾患を減少させ、命を守り、最終的にはウイルスが医療制度に及ぼす大きな負担を軽減するため、BI 764198が目指すような治療選択肢が切望されています。

ベーリンガーインゲルハイムの医学担当コーポレートシニアバイスプレジデント兼最高医学責任者のDr. Mehdi Shahidiは、次のように述べています。「この治験薬は、新型コロナウイルス感染症関連の呼吸窮迫症候群に対する初の治験薬として、新型コロナウイルス感染症患者に対する治療レジメンの重大なギャップを埋められる可能性があります。我々はこの数カ月の間、本疾患の病理学について理解を深めた結果、BI 764198が多くの重篤な患者さんを助けるユニークな可能性があるかもしれないと考え、臨床試験を実施することを決定しました。この前進によって、新型コロナウイルス感染症の呼吸器合併症を患う入院患者さんの予後を向上させる新たな手段を、治療にあたる医師へ提供できると期待しています」

ベーリンガーインゲルハイムは、研究開発主導型の企業として、総力を挙げて新型コロナウイルス感染症との闘いに取り組んでいます。さまざまな分野の専門知識を駆使し、学術研究者、国際機関、製薬業界の他社と緊密に協力し、このパンデミックに対する医療ソリューションを見出すべく多くの活動に従事しています。ベーリンガーインゲルハイムは現在、SARS-CoV-2を標的とするウイルス中和抗体の研究開発、ウイルスの増殖を阻害する低分子化合物、凝固亢進を防止するための治療の開発を含め、この疾患に立ち向かい、患者さんの命を救うための幅広いイニシアチブに参加しています。またベーリンガーインゲルハイムは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のグローバルなアクセスイニシアチブや、新型コロナウイルス感染症セラピューティクスアクセレーター(CTA)、CAREコンソーシアムによる世界的な開発イニシアチブにも積極的に参画しています。

本試験について
この第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、新型コロナウイルス感染症で入院した患者さんを対象に、最長4週間にわたりBI 764198を1日1カプセル投与し、評価します。主要評価項目は、治療開始から29日目の時点での人工呼吸器を使用せずに生存している患者さんの割合です。その他の評価項目は、臨床症状の改善、酸素飽和度、ICUへの入院です。新型コロナウイルス感染症のために入院する患者では、気道損傷のため、活性酸素種(ROS)が増加します。ROSは、TRPC6を活性化させ、TRPC6は、細胞障害カスケードを引き起こし、細胞バリア機能を破壊し、透過性亢進、浮腫を引き起こし、最終的には、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に至ります。肺損傷の動物モデルにおけるBI 764198の治療では、細胞障害と肺浮腫が軽減されることが明らかになっています。BI 764198による治療は、重篤なSARS-CoV-2感染患者さんにも同様のベネフィットをもたらす可能性があります。BI 764198は、健康な成人を対象に実施した第1相試験(NCT03854552)において、十分な忍容性があることが明らかになっています。

BI 764198の試験の患者登録は、2020年10月に開始され、8カ国の約40施設が参加予定です。

 

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムの中核をなすのは、人と動物のためにより良い医薬品をお届けすることであり、生活を変える画期的な医薬品や治療法を開発していくことが当社の使命です。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持しています。将来のヘルスケアにおける課題を見据え、ベーリンガーインゲルハイムが最大限の力を発揮できる分野で貢献できるよう、長期的な視点をもって邁進していきます。

ベーリンガーインゲルハイムは、世界有数の研究開発主導型の製薬企業として、51,000人以上の社員が、医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。2019年度、ベーリンガーインゲルハイムは約190億ユーロの純売上高を達成しました。研究開発に約35億ユーロを投じてイノベーションに注力し、生命を救いクオリティオブライフ(生活の質)を向上させる新しい医薬品の創出に注力しています。

ベーリンガーインゲルハイムはパートナーシップを重視し、ライフサイエンス分野における多様な知見を活かして科学的な可能性を広げていきます。

様々な協働を通じて、現在そして未来の患者さんの生活を変えるような画期的な治療法を提供していきます。

詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com
(アニュアルレポート 英語)

 

References

  1. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). “Interim Clinical Guidance for Management of Patients with Confirmed Coronavirus Disease (COVID-19).” Retrieved from:
    https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/clinical-guidance-management-patients.html. Accessed on Oct. 19. 2020.

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