ベーリンガーインゲルハイムのゾンゲルチニブ、治療歴があるHER2遺伝子変異陽性肺がん患者さんにおいて、有望な有効性プロファイルを示す

和訳リリース,
  • 第1b相Beamion LUNG-1試験が盲検下独立中央判定(BICR)の評価に基づき、66.7%という有意な客観的奏効率(ORR)を示し、主要評価項目を達成1
  • 脳転移がある患者群において予備的な作用が認められ、頭蓋内奏効率は33%、病勢コントロール率(DCR)は74%であった
  • ゾンゲルチニブの有害事象による投与中止率は3%であった
  • データカットオフ時点で患者さんの3分の2が治療継続中であり、無増悪生存期間(PFS)や奏効期間(DoR)を含むより詳細なデータが年内に報告される予定

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が9月9日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。

2024年9月9日 ドイツ/インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムは、治療歴のある活性型HER2変異陽性の進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした第1b相Beamion LUNG-1試験コホート1の主要解析において、ゾンゲルチニブ(BI 1810631)が良好な結果を示したことを報告しました。ゾンゲルチニブは有意な客観的奏効率を示しました。この結果は、世界肺癌学会(WCLC/IASLC 2024)のプレジデンシャル・シンポジウムで発表され、WCLC公式プレスプログラムでも取り上げられました。

2024年5月時点で、132名の患者がゾンゲルチニブ120mg(n=75)または240mg(n=57)を1日1回投与されました。盲検下独立中央判定(BICR)の評価に基づき確認された客観的奏効率(ORR)は66.7%(97.5% 信頼区間[CI]53.8–77.5, p<0.0001)であり、コホート1(120mg; n=75)の主要評価項目を達成しました。腫瘍の縮小は、治験担当医師の判定に基づき、全用量の患者全体の94%で見られました。本試験デザインは、この患者群におけるゾンゲルチニブの最適な用量を探るための用量拡大が実施されました。患者は、1対1の比率で120mg投与群(n=58)と240mg投与群(n=55)に無作為に割り付けられました。無益性の中間解析の後、コホート1で評価を進める用量として120mgが選択され、さらに17人の患者が登録されました。患者を1対1の比率で無作為に割り付けたパートにおいて、ゾンゲルチニブは1日1回120mg投与群で72.4%、1日1回240mg投与群で78.2%の奏効率を示し、病勢コントロール率(DCR)はそれぞれ95%と100%でした。

第1b相試験のコホート1のデータから、ゾンゲルチニブによる予備的な脳転移への効果が示されました。BICRのRANO-BM基準(腫瘍反応および病勢進行に関する標準評価の勧告)に基づき、無症候性の脳転移がある患者のうち、120mg投与群(n=27)の33%および240mg投与群(n=25)の40%において客観的奏効率を達成し、DCRはそれぞれ74%と92%でした。NSCLCにおいて中枢神経系の部位への転移はよく見られ、予後不良および生活の質(QOL)の低下と関連しています2。診断された時点で、活性型HER2遺伝子変異陽性のNSCLC患者の最大30%に脳転移が見られます3

治験責任医師を務めたテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn Heymach博士(MD, PhD)は、次のように述べています。「今回の新しいデータは、活性型HER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者さんの今後の治療にとって朗報と言えます。この遺伝子変異は稀ですが、非小細胞肺がん症例のサブセットにおける重要な原因であり、現在の治療オプションは非常に限られています。このタイプのがん患者さんは一般的に予後不良であり、一次治療で奏功する割合は約半数で、二次治療ではわずか20%です4,5,6,7

ゾンゲルチニブは、開発中の経口HER2チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、活性型HER2遺伝子変異陽性の進行性NSCLC患者さんを対象に臨床試験が進められています。ゾンゲルチニブは、野生型EGFRに作用しないように設計されているため、付随する有害事象が軽減される可能性があります。現在、活性型HER2遺伝子変異陽性の進行性NSCLC患者さんを対象に、一次治療としてゾンゲルチニブと標準治療を比較する国際共同第3相試験(Beamion LUNG-2)の患者登録が進行中です。

ベーリンガーインゲルハイムのイノベーションユニット担当取締役のPaola Casarosaは、次のように述べています。「ゾンゲルチニブの有効性および忍容性プロファイルは、本剤がHER2遺伝子変異陽性の肺がん患者さんの将来的な治療選択肢の1つとなる可能性を示しています。ゾンゲルチニブは、新しい治療薬の発見と開発に取り組む私たちの科学的アプローチの実例です。ベーリンガーインゲルハイムは、がん患者さんにブレークスルーセラピーを提供するために全力を尽くしており、ゾンゲルチニブの今後の臨床プログラムの進展を期待しています」

ゾンゲルチニブは、120mgおよび240mgの用量で薬剤関連の死亡例はなく、減量(11%)や投与中止(3%)につながる有害事象の発生率は低い水準にとどまりました。新たな安全性シグナルや薬剤関連の間質性肺疾患(ILD)は認められず、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、ゾンゲルチニブ120mg投与群で17%、240mg投与群で19%でした。最もよく見られるTRAEは、グレード1または2の下痢(それぞれ43%と11%)、グレード1または2の発疹(それぞれ19%と8%)でした。

今後もデータは増え、データカットオフ時点で奏効患者の3分の2が投与を継続中であるため、無増悪生存期間(PFS)や奏効期間(DoR)などのデータは、今後の医学会議で報告される見込みです。

非小細胞肺がん(NSCLC)について
肺がんは、他のがんよりも多くの人の死因となっており、発生率は上昇し、2040年までに世界で300万人以上に増加する見通しです8。NSCLCは、最も一般的な肺がんです9。この病気は診断が遅れることが多く10、診断後の5年生存率は患者さん10人に3人を下回ります11。進行性NSCLC患者さんは、日常生活の中で身体、精神、心理、感情面でさまざまな影響を受けます。進行性NSCLCでは、依然として新たな治療オプションに対する高いアンメットニーズが存在します。肺がんの約4%は、HER2遺伝子異常によって引き起こされます12。HER2の遺伝子変異は、過剰発現や過剰活性化を引き起こし、制御不能な細胞産生、細胞死の阻害、腫瘍の成長・進展につながります13

ゾンゲルチニブについて
ゾンゲルチニブ(BI 1810631)は、治験中の経口HER2特異的チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、HER2遺伝子変異がある非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬候補として開発されています。ゾンゲルチニブは、全身療法の治療歴がある活性型HER2遺伝子変異陽性の進行性NSCLCの成人患者さんに対する治療薬として、2023年に米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定されており、2024年には、FDAおよび中国医薬品評価センター(CDE)よりブレークスルーセラピー指定を受けています。HER2は、ErbBファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼ(化学伝達物質のように作用する酵素)です14。最近の非臨床試験では、治験化合物であるゾンゲルチニブが単独療法として、およびADC療法やKRAS標的薬との併用療法として、HER2依存性の固形腫瘍に対するさらなる臨床試験に進展する可能性を示しています14

Beamion臨床試験プログラムについて
Beamion LUNG-1(NCT04886804)試験は、活性型HER2遺伝子変異陽性の進行性または転移性の固形腫瘍やNSCLCの患者さんを対象に、単剤療法としてのゾンゲルチニブを評価する第1相非盲検用量漸増試験(用量の確認と拡大を含む)です。試験は2つのパートに分かれています。1つ目のパートは、前治療が奏効しなかったさまざまな進行がん(HER2遺伝子変異がある固形腫瘍)の成人患者さんが対象です。2つ目のパートは、HER2遺伝子の特異的変異がある非小細胞肺がんの患者さんが対象です。Beamion LUNG-2試験は、第3相非盲検無作為化実薬対照試験であり、HER2チロシンキナーゼドメイン変異を有するNSCLCのうち、切除不能の局所進行性または転移性非扁平上皮がんの患者さん270人を登録し、ゾンゲルチニブを標準治療と比較評価する予定です。

ベーリンガーインゲルハイムのオンコロジー領域について
私たちは、がん患者さんの生活を変革するために有意義な進歩を実現し、幅広いがんの治療を目指す明確な目標を持っています。ベーリンガーインゲルハイムが世代を超えて推進するサイエンスイノベーションへの取り組みは、がん細胞を標的とした治療薬およびがん免疫療法からなる開発パイプラインの進展、ならびにこれらのアプローチの組み合わせに反映されています。ベーリンガーインゲルハイムは多様な考え方を結集し、綿密かつ幅広いアプローチで研究を進めることで、オンコロジー領域における共同研究ネットワークを構築することを目指しています。これは、困難でありながらも大きな影響をもたらす可能性のあるがん研究分野に取り組む上で必要不可欠なアプローチです。ベーリンガーインゲルハイムは、これからもがんの個別化治療を目指していきます。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の健康に取り組むバイオ製薬企業です。研究開発において業界トップクラスの投資を行い、アンメットメディカルニーズの高い分野で画期的な治療法の開発に注力しています。1885年の創業以来、ベーリンガーインゲルハイムは株式を公開しない独立した企業形態により長期的な視点を維持し、バリューチェーン全体にサステナビリティを組み込んだ活動を行っています。より健やかでサステナブルかつ公平な未来を築くため、53,500人以上の社員が130ヵ国以上で事業を展開しています。

詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)

 

References
1 Ruiter G. et al. Phase Ib Analysis of Beamion LUNG-1: Zongertinib (BI 1810631) in Patients with HER2-Mutant NSCLC. presented at WCLC, San Diego, 7-10 September, 2024.
2 Arrieta, O., Saavedra-Perez, D., Kuri, R. et al. Brain metastasis development and poor survival associated with
carcinoembryonic antigen (CEA) level in advanced non-small cell lung cancer: a prospective analysis. BMC Cancer 9, 119 (2009). https://doi.org/10.1186/1471-2407-9-119.
3 Offin M, et al. Cancer 2019;125(24):4380–87.
4 Nützinger J, Lee JB, Low JL, et al. Lung Cancer. 2023;186:107385. doi:10.1016/j.lungcan.2023.107385
5 Brazel D, Kroening G, Nagasaka M. BioDrugs. 2022;36(6):717-729.
6 Jebbink M, de Langen AJ, Boelens MC, Monkhorst K, Smit EF. Cancer Treat Rev. 2020;86:101996. doi:10.1016/j.ctrv.2020.101996
7 Passaro A, Peters S. N Engl J Med. 2022;386(3):286-289.
8 International Agency for Research on Cancer – World Health Organization. Rates of trachea, bronchus and lung cancer. Available at: https://gco.iarc.fr/tomorrow/en (Accessed August 2024).
9 Zappa C & Mousa Non-small cell lung cancer: current treatment and future advances, Transl Lung Cancer Res. 2016 Jun; 5(3): 288–300.
10 Polanco D et al. Prognostic value of symptoms at lung cancer diagnosis: a three-year observational study. J Thorac Dis 2021;13:1485–1494
11 National Cancer Institute Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER). https://seer.cancer.gov/statfacts/html/lungb.html (Accessed: August 2024).
12 Arcila, M. E. et al. Prevalence, clinicopathologic associations, and molecular spectrum of ERBB2 (HER2) tyrosine kinase mutations in lung adenocarcinomas. Clin. cancer Res.  an Off. J. Am. Assoc.  Cancer Res. 18, 4910–4918 (2012).
13 Galogre M, et al. A review of HER2 overexpression and somatic mutations in cancers, Critical Reviews in Oncology/Hematology, Volume 186, 2023, 103997
14 Wilding, B et al. Cancer Discov. 2024. DOI 10.1158/2159-8290.CD-24-0306

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