【全国47都道府県比較 健康診断の二次検査受診に関する実態調査】 心臓病や腎臓病、糖尿病に関わる異常所見:3人に1人が二次検査を未受診 1つの疾患の放置が将来的に合併症を引き起こすことを4割の人が知らない 「緊急性/必要性を感じない」ことから、 異常所見を確認しながらも二次検査を先送りする “健診結果の既読スルー” の実態が判明
報道関係者向け情報
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2023年10月17日
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役 医薬事業ユニット統括社長:荻村正孝、以下、日本ベーリンガーインゲルハイム)および日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下、日本イーライリリー)は、日本全国47都道府県在住の40歳~69歳の人のうち、2022年4月~2023年3月の間に健康診断または人間ドックを受診し、心臓病、腎臓病、糖尿病のいずれかに関わる項目で異常所見*がみられた人を対象に、二次検査に関する調査を行いました。
近年、心臓と腎臓の疾患が相互に影響する「心腎連関」が注目されていますが、最近ではさらに糖尿病に代表される代謝疾患もこれらに連関し、相互に影響する「心腎代謝連関」があることがわかってきました1。この3つの領域の疾患はいずれも患者数が多く、厚生労働省が発表した「令和2年(2020)度 国民医療費の概況」によると、3つの領域の疾患だけでかかる平均医科診療費の合計は6兆円を超えます。QOL(Quality Of Life=生活の質)を下げる可能性が高いこれらの慢性的な疾患の連関を防ぐためには、早期発見・早期治療が喫緊の課題となっています。今回の調査は、疾患の早期発見のために重要な役割を担う二次検査に対する意識と実態について調べたものです。調査結果からは、この3つの疾患に関わる異常所見が健康診断や人間ドックで示されても、約3人に1人が、二次検査を受診していない実態が明らかになりました。
* 異常所見あり: 各項目で正常所見以外のチェックが入っている、または総合評価で「要再検査」「要精密検査」「要治療」 「要医療」などが記載されている状態。
サマリー
1. 心臓病や腎臓病、糖尿病に関する「糖代謝検査(血糖値)」「腎尿路系検査(腎機能、尿検査)」「心電図検査」「呼吸器系検査(胸部X線)」の検査項目に異常所見が見られても、3人に1人が「二次検査」を受診していない項目あり。都道府県により差あり。
■健康診断または人間ドックにおいて、心臓病や腎臓病、糖尿病に関わる検査項目:「糖代謝検査(血糖値)」「腎尿路系検査(腎機能、尿検査)」「心電図検査」「呼吸器系検査(胸部X線)」の中で1つでも異常所見が指摘された人のうち、約3人に1人(38.2%)が「二次検査」を受診していない項目あり。
■都道府県別でみると、宮崎県と岡山県が3つの検査項目(糖代謝検査、腎尿路検査、心電図検査)において二次検査の受診率が上位に入る。
2. 各検査項目がどんな疾患を見つけるものなのか「ある程度」以上知っている人は半数程度。二次検査が重要と認識しつつも「現時点での緊急性/必要性を感じないから」受診を先送りに。
■「糖代謝検査(血糖値)」「腎尿路系検査(腎機能、尿検査)」「心電図検査」「呼吸器系検査(胸部X線)」のうち、自身に異常所見があった検査項目がどんな疾患を見つけるものなのか「ある程度」以上知っている人は半数程度。
■糖代謝検査(血糖値)、腎尿路系検査(腎機能、尿検査)、心電図検査、呼吸器系検査(胸部X線)に異常所見があった場合に二次検査を受診することが重要との回答が8割以上。
■二次検査を受診しない理由は、「現時点での緊急性/必要性を感じないから」が最も多い(4項目平均32.6%)。
3. 異常所見を放置した人のうち、心臓病や腎臓病、糖尿病を放置すると将来的に合併症を引き起こすリスクを知っていれば、二次検査を受診すると39.5%が回答
■心臓病や腎臓病、糖尿病に関わる項目で異常所見があった方のうち、「心臓、腎臓、代謝の各機能は相互に関連しあっていて、一つの機能障害が他の臓器に悪影響を及ぼすこと」について知っている人は59.2%。
■異常所見を放置した人のうち、心臓病や腎臓病、糖尿病を放置すると将来的に合併症を引き起こすリスクを知っていれば、二次検査を受診すると39.5%が回答。
■異常所見があった人のうち、心臓病や腎臓病、糖尿病と関連する4つの検査項目において、心腎代謝連関について知っている人の方が二次検査の受診率が高い。
■既に心臓病や腎臓病、糖尿病といった心腎代謝にかかわる疾患で通院中の人のうち、91.0%の人が「二次検査」が治療のきっかけになったと回答。
監修者のコメント
横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授 寺内 康夫 先生
「特に糖尿病など自覚症状が出にくい疾患は、本人に実感できる症状がなければ、検査値異常が指摘されたとしても「大したことが無い」と判断され先送りにしてしまいがちです。実際に、異常値を示されてもそのままにしてしまう方が多く、いつの間にか病気が進行、気付いた時には合併症を発症し QOL(Quality Of Life)が低下、患者一人での自立した生活が困難になるといったケースも生じ得ます。そうならないために、二次検査を受診して自分の状態を知り、早期の段階から適切な治療を受けておくことが非常に重要です」
埼玉医科大学 医学部 腎臓内科 教授 岡田 浩一 先生
「保健師の活動が活発な市町村では、二次検査のみならず、一次健診の受診率も高く、末期腎不全に至る患者さんが少ない、あるいは減少傾向にあります。これまでにも、受診率の低い市町村が保健師の数を増やし、同時に検査結果の意味や放置した場合の経過について、視覚的にわかりやすいパンフレット等を用いながら理解を促進、更に蛋白尿陽性者にもわかりやすい説明をしたことで、ぐっと二次検査の受診率が向上したということ事例があります。二次検査の受診率向上は、透析導入率の減少に結びつきます。検査によって判明した異常所見のある項目のほとんどは、生活習慣の改善や治療によって良くすることや悪化を止めることができます」
横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学 主任教授 田村 功一 先生
「心臓と腎臓のいずれか一方に機能低下が起こると、影響して他方にもトラブルが起こる『心腎連関』に加え、糖尿病がある方においては更に代謝疾患が加わり、心臓・腎臓・代謝疾患がより複雑に影響を及ぼしあいます。これを『心腎代謝連関』といいます。2型糖尿病のある方の約40%が慢性腎臓病を併発するとの報告2や、また糖尿病では正常血糖と比較して心不全発症リスクが58%増加するとの報告3があります。つまりどれか1つでも発症しそのままにしていると、その疾患が悪化するだけでなく、他の疾患も併発してしまう可能性があるということです。だからこそ、二次検査を受診することは非常に重要です」
青森大学 客員教授 竹林 正樹 先生
「二次検査を受診しない理由の1位が『現時点での緊急性/必要性を感じないから』だったのは、将来的に訪れるかもしれない苦痛より目の前の面倒を過大評価し、行動を先送りしてしまう『現在バイアス』が働いた可能性も考えられます。実際に、喫煙者や肥満者は現在バイアスが強いという先行研究4があることからも、『ナッジ(認知バイアスに沿った行動促進方法。提唱者のR.セイラー博士(米国)はノーベル経済学賞を受賞)』のような、新しい手法の必要性を実感しています」
調査概要
<一次調査>
■調査依頼元:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、日本イーライリリー株式会社
■調査会社:株式会社ディーアンドエム
■調査期間:2023年7月12日~7月27日
■調査手法:インターネット調査
■調査地域:全国
■標本台帳:株式会社ディーアンドエム登録モニター
■有効回答数:60,857件
<二次調査>
■調査依頼元:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、日本イーライリリー株式会社
■調査会社:株式会社ディーアンドエム
■調査期間:2023年7月12日~7月27日
■調査手法:インターネット調査
■調査地域:全国
■標本台帳:株式会社ディーアンドエム登録モニター
■対象者:「糖代謝検査(血糖値)」「腎尿路系検査(腎機能、尿検査)」「心電図検査」「呼吸器系検査(胸部X線)」といった、心臓病や腎臓病、糖尿病などの疾患に関わる項目で異常所見があった、40~69歳の男女4,700名(各都道府県100名)
■有効回答数:4,700件
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、世代を超えて生活を変革する画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型のバイオ製薬企業のリーディンクカンパニーとして、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出を目指しています。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態により長期的かつサステナブルな視点を維持しています。ヒト用医療用医薬品とアニマルヘルスの2つの事業分野において、53,000人以上の社員が世界130ヵ国以上で事業を展開しています。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)
References
- Interconnection between cardiovascular, renal and metabolic disorders: A narrative review with a focus on Japan Kadowaki T, et al.: Diabetes Obes Metab. 2022; 24(12): 2283-96.
- Murphy D, et al.: Ann Intern Med. 2016; 165(7): 473-81.
- Kaneko H, et al.: Atherosclerosis. 2021; 319: 35-41.
- Lawless L, et al: Agricultural and Food Economics. 2013; 1(1): 17.