ウクライナへの寄付はどのように役立っているのでしょうか?

ウクライナでの戦争は、苦しみと苦難をもたらし続けています。戦争が始まった当初、ベーリンガーインゲルハイムは会社としてまず、緊急支援組織に250万ユーロの寄付を実施しました。しかし、その支援以上に必要なものがあることを知り、私たちは2022年3月からポーランド赤十字とドイツ赤十字にそれぞれ100万ユーロを毎月12回に分けて寄付を実施しています。現在、ポーランドやドイツの赤十字では、BIからの寄付金にも支えられて、できる限りの支援が行われています。先日、ポーランドとウクライナの国境を訪れた際、ウクライナからの避難者たちへの支援がいかに多様であるか、そしてなぜ冬になると支援者が大きな心配をするのかを、私たちは直接知ることになりました。

2022年2月26日:ポーランド東部の町、ジェシュフ

ウクライナのカテリーナ・アファナセンコさんは、2日連続で眠れない夜を過ごしました。サイレンが鳴り響き、3人の子どもたちは泣き止まない。また爆発が起きると、幼い2人は全身を震わせて恐怖に震えます。カテリーナさんにも、「このままではいけない」ことは、明白でした。翌朝2月26日、彼女は自分と子供たちの必需品をまとめ、子供たちを連れて西へ向かう列車に乗り込みました。ウクライナの戦争から逃れるため…目的地はポーランド東部のジェシュフ。ウクライナとポーランドの国境にほど近い場所でした。

「そこには遠い親戚が住んでいて、最初の晩は彼らと一緒に過ごしました」
ロシアがウクライナに侵攻して10カ月が経った今、カテリーナさんはこう話します。慣れない土地での最初の数日間は大変だった、と彼女は振り返ります。家や友人、隣人たちが恋しくなりました。そして何より、4歳の愛犬を置き去りにしなければならなかったこと。彼女は声が途切れ、目をそらしながら、戦争が始まったころのことを振り返ります。

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ポーランドの国境駅、プシェムィシル駅には毎日数百人の難民が到着している。

現在、カテリーナさんは、ポーランドの首都、ワルシャワの南東250キロにあるザモシチで、3人の子どもたちと小さなアパートで暮らしています。ポーランド赤十字が運営する施設で出会った彼女は、ちょうどポーランド語のレッスンが終わったところでした。道を尋ねたり、買い物に行ったりするには十分な語学力だそう。「でも、もっと上達しなければならないんです」と彼女は言います。

ポーランド赤十字の現地支部は2022年8月から、難民のために語学講座を毎日開催していて、支援の幅を広げています。「国境で難民に人道的支援を行うことは、今も私たちの重要な仕事の一つです」と施設のコーディネーターであるヴィクトリア・クラズンさんは話します。また、ポーランドに定住し、社会に溶け込むことを必要とするウクライナ人も増えています。「最終目標は、難民の人々が私たちと一緒にいて安全で快適だと感じ、将来、私たちの助けも借りながら自立できることです」。そのため、ポーランド赤十字は語学コースの提供や宿泊施設の手配、職探しの支援などを行っています。このようにして、ウクライナの人々が最も必要としていることが、持続的かつ長期的に支援されています。戦争と苦しみは、まだ終わっていないのですから。カテリーナさんとその家族のように、ポーランドで新しい生活を築きつつある難民もいます。しかし、戦場から避難して来たばかりの人たちもいます。

2022年11月9日:ポーランド国境のプシェムィシル駅

午後3時40分、国境駅のプシェムィシル。予定より30分近く遅れて、東ウクライナのザポリージャからの列車が、フェンスで厳重に囲われた5番ホームに到着しました。250人以上の難民たちが、パスポートと税関検査のための飾り気のない黄色い建物に案内されます。数分後には、彼らは正式にポーランドに入国し、安全を確保できるのです。
親族がカラフルな風船や花束を持って、難民の人々を出迎えます。抱き合い、喜びの涙を流します。ナタリアさんとアレキサンダーさんのように、さらに西へ向かう人もいます。21歳の若い二人は、赤いトラックスーツにスニーカーを履いていました。「東部での戦闘はますます脅威となりました。ついに停電にもなりました。もう怖い思いはしたくないから、カトヴィツェにいる友達のところへ向かっています」と彼らは説明します。

ポーランド赤十字のボランティアやスタッフが、二人をアンナ・ミシニャクさんのもとへ案内してくれます。彼女は、駅から10分のところにある、ポーランド赤十字が運営するいわゆるトランジットセンターの管理者。ここは元倉庫で、最大1200台のベッドが用意されています。さらに、カフェでは温かい食事が提供されます。頭痛や高血圧の患者さんたちは、医務室で治療を受けています。ゲームルームでは子どもたちが遊び、その一角では2人の子どもがカラフルな絵を描いています。「多くの難民の人々にとって、このトランジットセンターは旅の最初の停留所です。ここで寝る場所とケアを与えられ、48時間以内に他の都市やコミュニティへ移動できるよう、お手伝いをしています」とアンナさんは話します。プシェミシルでは長い間、住宅が不足していました。かつて人口6万人だったこの小さな町には、現在1万人以上のウクライナ難民が居住しているとアンナさんは推測します。収容人数はもう限界を超えています。

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トランジットセンターには、子どもたちが描いた絵がたくさん貼られている。

このポーランドの国境町には、毎日数百人のウクライナ人が到着し続けています。アンナさんやポーランド赤十字は、冬の間はもっと多くの人が到着するのではないかと懸念しています。「ウクライナの多くの場所で、生活インフラが損傷または破壊されています。多くの家庭で暖房が効かなくなり、基本的な生活必需品も不足しています」。ポーランド赤十字は、今後数ヶ月の間に、ウクライナから最大75万人が自国を離れる可能性があると予測しています。
ポーランド赤十字のボランティアの中に、3児の母である難民のカテリーナさんがいました。彼女は美容師なので、ポーランド語の授業の後、クラスの仲間の髪を無料でカットしています。その理由を彼女に聞くと、彼女はこう答えました。「たくさん助けてもらったから、どれだけ困っているかが分かったの。状況が落ち着いて来た今なら、私も誰かの助けになれます。すべてのことに意味があるから」。