CAROLINA®試験およびCARMELINA®試験の結果によりアジアの幅広い成人2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの心血管および腎の安全性プロファイルが示される

和訳リリース,
  • CAROLINA®試験のサブグループ解析において、グリメピリドと比較して、リナグリプチンは心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのあるアジアの早期の成人2型糖尿病患者において心血管リスクを増加させないことが明らかになりました1
  • 心血管イベントや腎イベント、またはその両方のリスクが高い成人2型糖尿病患者を対象としたCARMELINA®試験とともに、アジアの幅広い2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの心血管および腎の安全性プロファイルが示されました2

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が6月29日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるトラゼンタ®錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。

2020年6月29日 ドイツ/インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムは、心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある、アジアの早期の成人2型糖尿病患者を対象としたCAROLINA®試験のサブグループ解析の結果を発表しました。Diabetology International誌に掲載された解析結果は、リナグリプチンが心血管リスクのあるアジアの成人2型糖尿病患者において、グリメピリドと比較して心血管リスクを増加させないことを示しており1、CAROLINA®試験の全体集団の結果と一貫していました1

近年、アジアでは2型糖尿病患者が急激に増加しています3。2019年、国際糖尿病連合(IDF)では、世界の糖尿病患者4億6,300万人のうち半数以上の2億5,100万人が東南アジアと西太平洋地域の患者であると推定しています4。事前に規定されたCAROLINA®試験のサブグループ解析では、CAROLINA®試験の全参加者6,033人の15.5%にあたるアジアの成人2型糖尿病患者933人が解析対象とされました1

CAROLINA®試験のアジアの2型糖尿病患者において、リナグリプチン投与群では、グリメピリド投与群と比較して、低血糖の発現率が低値でした1。全ての重症度分類の低血糖の発現率は、グリメピリド投与群の42.1%に対し、リナグリプチン投与群では13.1%でした1。リナグリプチン投与群では、グリメピリド投与群と比較して、体重の増加は認められず、グリメピリド投与群との体重差の平均値は–1.82 kgでした1

本論文の筆頭著者である、虎の門病院 院長の門脇孝先生は次のように述べています。「糖尿病治療の目標は併発症の発症、増悪を防ぎ、健康人と変わらないQOLの維持と、健康人と変わらない寿命を全うすることにあります。今回、CAROLINA®試験でのアジアの2型糖尿病患者において、リナグリプチンの長期的な安全性プロファイルと、グリメピリドと同程度の長期的な血糖コントロールが確認されたことは非常に意義があると考えます」

リナグリプチンは長期安全性に関する包括的な臨床データとして、CAROLINA®試験とCARMELINA®試験の2つの心血管アウトカム試験のエビデンスを有しています5,6。2019年10月にDiabetology International誌に掲載されたCARMELINA®試験のサブグループ解析では、心血管イベントあるいは腎イベント、またはその両方のリスクが高いアジアの成人2型糖尿病患者において、リナグリプチンがプラセボに対して心血管および腎イベントのリスクを増加させないことが示されました2。これらの結果は、CARMELINA®試験の全体集団の結果と一貫していました2

CARMELINA®試験のサブグループ解析論文の筆頭著者である、京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 教授の稲垣暢也先生は次のように述べています。「アジアでは腎機能が低下した2型糖尿病患者が多く、そのような糖尿病患者では血糖降下薬の選択が限られてしまいます。腎機能が低下した2型糖尿病患者も多く参加したCARMELINA®試験において、アジアにおける心血管および腎イベントに対するリナグリプチンの安全性プロファイルが示されたことの意義は非常に大きいと考えます」

リナグリプチンの長期安全性に関する包括的なエビデンスについて、ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長Waheed Jamal(M.D.)は、次のように述べています。「CAROLINA®試験とCARMELINA®試験では、幅広い2型糖尿病患者さんにおけるリナグリプチンの長期安全性プロファイルが示されました。このような地域ごとのサブグループ解析はその地域の患者さんにとって最適な血糖降下薬を選択する際の価値ある情報となると考えます」

参考情報
CAROLINA®試験について

CAROLINA®試験(CARdiovascular Outcome study of LINAgliptin versus glimepiride in patients with type 2 diabetes:成人2型糖尿病患者において、リナグリプチンとグリメピリドを比較する心血管アウトカム試験)は、43カ国、600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,033人が参加し、中央値6年以上にわたり観察を行った多施設共同無作為化二重盲検実薬対照試験です5,7。試験には、薬剤未治療、または1~2種類の血糖降下薬(メトホルミンなど)の投与を受けている罹病期間中央値6.2年以上の比較的早期の2型糖尿病患者が参加しました7。この試験は、心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある、成人2型糖尿病患者に対するリナグリプチン(5 mgの1日1回投与)の心血管安全性への影響について、SU薬のグリメピリドを対照として評価することを目的として計画されました(どちらも血糖降下薬と心血管系治療薬の標準療法に追加して使用)5,7。これらの患者は、医師が日常診療において診察している多くの患者に当てはまるものと考えられます8
CAROLINA®試験は、臨床試験運営委員会およびベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーが主導して実施しました。CAROLINA®試験は、DPP-4阻害薬で唯一の実薬対照心血管アウトカム試験です。
CAROLINA®試験の詳細については、https://www.carmelinatrial.com/をご覧ください。

CARMELINA®試験について
CARMELINA®試験(CArdiovascular safety and Renal Microvascular outcomE with LINAgliptin in patients with type 2 diabetes at high vascular risk trial:心血管イベントあるいは腎イベント、またはその両方のリスクが高い成人2型糖尿病患者において、リナグリプチンの心血管および腎アウトカムへの影響を評価する試験)は、27カ国、600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,979人が参加し、中央値2.2年にわたり観察を行った多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験です6,9。試験の対象者の多くは、腎機能障害を有する心血管リスクの高い成人2型糖尿病患者で、リナグリプチン(5 mgの1日1回投与)の心血管イベントに対する影響を、プラセボを対照として評価することを目的として計画されました(どちらも血糖降下薬と心血管系治療薬の標準療法に追加して使用)6,9。心血管イベントあるいは腎イベント、またはその両方のリスクが高い患者は、医師が日常診療において診察している多くの患者に当てはまるものと考えられます8
CARMELINA®試験は、臨床試験運営委員会とベーリンガーインゲルハイムおよびイーライリリー・アンド・カンパニーが主導して実施しました。
最近報告された2型糖尿病におけるDPP-4阻害薬の他のアウトカム試験と比較した場合、CARMELINA® 試験の対象者には、腎機能障害を有する患者が最も多く含まれています10*。
CARMELINA®試験の詳細については、https://www.carmelinatrial.com/をご覧ください。

トラゼンタ®(一般名:リナグリプチン)について
トラゼンタ®は、成人2型糖尿病患者での血糖降下作用をもつ、1日1回投与のDPP-4阻害薬です。年齢、罹病期間、人種、BMI、肝機能および腎機能に関係なく、同一用量で成人2型糖尿病患者に処方することができます11。トラゼンタ®は、すべてのDPP-4阻害薬の中で最も低い腎排泄率を示しています12–15
トラゼンタ®は、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーのアライアンスによって開発・販売されています。

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの心血管アウトカム試験について
心血管疾患は2型糖尿病における主要な合併症であり、主な死亡原因となっていることから、心血管安全性は極めて意義のあるものです。世界において、多くの2型糖尿病患者は心血管イベントが原因で死亡しています16。2015年、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンの心血管アウトカム試験であるEMPA-REG OUTCOME®試験の結果を発表しました。この試験では、標準療法に加えてエンパグリフロジンを投与することにより、心血管疾患既往の成人2型糖尿病患者における心血管死の相対リスクが38%減少しました17–19†‡。結果として、エンパグリフロジンは、複数の国で心血管死のリスク減少に関するデータが添付文書に記載された初めての経口2型糖尿病薬となりました17,18
CAROLINA®試験およびCARMELINA®試験は、DPP-4阻害薬リナグリプチンの心血管アウトカム試験であり、DPP-4阻害薬の長期安全性に関する最も包括的な臨床データの一部です5,6,7,9
CARMELINA®試験は、27カ国、600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,979人が参加し、中央値2.2年にわたり観察を行った多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験です6,9。CARMELINA®試験では、心血管イベントあるいは腎イベント、またはその両方のリスクが高い成人2型糖尿病患者における心血管および腎イベントへの安全性に対するリナグリプチンの影響を評価しました6,9。この試験では主要評価項目§が達成され、標準治療に上乗せした場合のリナグリプチンの安全性プロファイルは、プラセボと同様であることが示されました9。CARMELINA®試験には、重要な副次評価項目**も含まれ、プラセボと同様の腎の安全性プロファイルが示されました9。CARMELINA®試験におけるリナグリプチンの安全性プロファイルは、これまでのデータと一貫しており、新たな安全性への懸念は検出されませんでした9。また、CARMELINA®試験における心不全による入院の割合は、リナグリプチン投与群とプラセボ投与群で同程度でした9

* 糸球体濾過量は60 mL/分/1.73m2未満
 2型糖尿病、冠状脈疾患、末梢動脈疾患、または心筋梗塞・脳卒中の既往歴がある成人患者
 標準療法には、医師の裁量で投与される心血管治療薬および血糖降下剤を含む
§ 主要評価項目は、3P-MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中)のいずれかの初回発現までの期間として定義
** 重要な副次評価項目は、持続的な末期腎不全(ESKD)、腎疾患による死亡、プラセボと比較してベースラインから40%以上の持続的eGFR低下のいずれかの初回発現までの期間として定義

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムの中核をなすのは、人と動物のためにより良い医薬品をお届けすることであり、生活を変える画期的な医薬品や治療法を開発していくことが当社の使命です。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持しています。将来のヘルスケアにおける課題を見据え、ベーリンガーインゲルハイムが最大限の力を発揮できる分野で貢献できるよう、長期的な視点をもって邁進していきます。
ベーリンガーインゲルハイムは、世界有数の研究開発主導型の製薬企業として、51,000人以上の社員が、医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。2019年度、ベーリンガーインゲルハイムは約190億ユーロの純売上高を達成しました。研究開発に約35億ユーロを投じてイノベーションに注力し、生命を救いクオリティオブライフ(生活の質)を向上させる新しい医薬品の創出に注力しています。
ベーリンガーインゲルハイムはパートナーシップを重視し、ライフサイエンス分野における多様な知見を活かして科学的な可能性を広げていきます。様々な協働を通じて、現在そして未来の患者さんの生活を変えるような画期的な治療法を提供していきます。

詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com
(アニュアルレポート 英語)

References

  1. Kadowaki T, Wang G, Rosenstock J, et al. Effect of linagliptin, a dipeptidyl peptidase-4 inhibitor, compared with the sulfonylurea glimepiride on cardiovascular outcomes in Asians with type 2 diabetes: subgroup analysis of the randomized CAROLINA® trial. Diabetol Int. 2020. doi.org/10.1007/s13340-020-00447-5.
  2. Inagaki N, Yang W, Watada H, et al. Linagliptin and cardiorenal outcomes in Asians with type 2 diabetes mellitus and established cardiovascular and/or kidney disease: subgroup analysis of the randomized CARMELINA® trial. Diabetol Int. 2019. doi:10.1007/s13340-019-00412-x.
  3. Nanditha A, Ma RC, Ramachandran A, et al. Diabetes in Asia and the Pacific: implications for the global epidemic. Diabetes Care. 2016;39(3):472–85.
  4. International Diabetes Federation. IDF Diabetes Atlas. 9th ed. Brussels, Belgium: International Diabetes Federation; 2019. https://www.diabetesatlas.org/en/resources/. Accessed: June 2020.
  5. ClinicalTrials.Gov. CAROLINA: Cardiovascular outcome study of linagliptin versus glimepiride in patients with type 2 diabetes. Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01243424. Accessed: June 2020.
  6. ClinicalTrials.Gov. Cardiovascular and renal microvascular outcome study with linagliptin in patients with type 2 diabetes mellitus (CARMELINA). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01897532?term=NCT01897532&rank=1. Accessed: June 2020.
  7. Rosenstock J, Kahn SE, Johansen OE, et al. Effect of Linagliptin vs Glimepiride on Major Adverse Cardiovascular Outcomes in Patients With Type 2 Diabetes: The CAROLINA Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;322(12):1155–66.
  8. Boehringer Ingelheim and Eli Lilly and Company. Data on file.
  9. Rosenstock J, Perkovic V, Johansen O, et al. Effect of Linagliptin vs Placebo on Major Cardiovascular Events in Adults With Type 2 Diabetes and High Cardiovascular and Renal Risk: The CARMELINA Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321(1):69–79.
  10. Rosenstock J, Perkovic V, Alexander JH, et al. Rationale, design, and baseline characteristics of the CArdiovascular safety and Renal Microvascular outcomE study with LINAgliptin (CARMELINA®): a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial in patients with type 2 diabetes and high cardio-renal risk. Cardiovasc Diabetol. 2018;17(1):39.
  11. European Medicines Agency. Trajenta® (linagliptin) tablets. EMA Summary of Product Characteristics. Available at: http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/002110/WC500115745.pdf. Last updated: February 2020. Accessed: June 2020.
  12. European Medicines Agency. Onglyza® (saxagliptin) tablets. EMA Summary of Product Characteristics. Available at: http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/001039/WC500044316.pdf. Last updated: May 2020. Accessed: June 2020.
  13. European Medicines Agency. Vipidia® (alogliptin) tablets. EMA Summary of Product Characteristics. Available at: http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/002182/WC500152271.pdf. Last updated: December 2018. Accessed: June 2020.
  14. European Medicines Agency. Januvia® (sitagliptin) tablets. EMA Summary of Product Characteristics. Available at: http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/000722/WC500039054.pdf. Last updated: March 2020. Accessed: June 2020.
  15. European Medicines Agency. Galvus® (vildagliptin) tablets. EMA Summary of Product Characteristics. Available at: http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/000771/WC500020327.pdf. Last updated: March 2020. Accessed: June 2020.
  16. World Heart Federation. Cardiovascular Disease Risk Factors. Available at: https://www.world-heart-federation.org/resources/risk-factors/. Accessed: June 2020.
  17. Jardiance® (empagliflozin) tablets U.S. Prescribing Information. FDA. Available at: https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2016/204629s008lbl.pdf. Last updated: December 2016. Accessed: June 2020.
  18. Jardiance® (empagliflozin) EMA Summary of Product Characteristics. Available at: http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/002677/WC500168592.pdf. Last updated: May 2020. Accessed: June 2020.
  19. Zinman B, Wanner C, Lachin JM, et al. Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015;373(22):2117–28.

お問い合わせ