エンパグリフロジン、慢性腎臓病*患者を対象とした第3相試験                EMPA-KIDNEY試験の日本人サブグループ解析結果を発表

日本/東京,
  • 日本からは612名が参加し、試験患者数全体の10%弱を占めた
  • エンパグリフロジンの主要アウトカムに対するリスク低下効果は日本からの参加者にも当てはめられることが示された
  • 日本人サブグループ解析においてもエンパグリフロジンの安全性データは過去の報告と概ね一致した

*ジャディアンス®錠10mg慢性腎臓病に対する効能・効果は、慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。) です。

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

2024年5月9日
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役 医薬事業ユニット統括社長:荻村 正孝、以下、日本ベーリンガーインゲルハイム)及び日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下、日本イーライリリー)は、慢性腎臓病患者におけるSGLT2阻害剤の臨床試験としては大規模・広範囲の臨床試験であり、糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず、日常診療で良く見られる慢性腎臓病患者を対象としたエンパグリフロジンの第3相試験であるEMPA-KIDNEY試験1の日本人サブ解析結果2が、日本腎臓学会の公式英文ジャーナルであるSpringer社『Clinical and Experimental Nephrology』に掲載されましたことをお知らせします。

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎障害を示す所見や腎機能の低下が慢性的に持続する疾患です3。死亡や心筋梗塞、脳卒中、心不全などの心血管疾患のリスクファクターであり、進行すると末期腎不全に至り、透析療法や腎移植が必要となります。慢性腎臓病の治療目的は、腎機能の低下を抑え末期腎不全への進行を遅らせること、および心血管疾患の発症を予防することです3,4

日本では、成人の7人に1人、1,480万人がCKDに罹患している5中、これまで日本人 CKD患者を対象としたデータは多くありませんでした。
EMPA-KIDNEY試験は、英国Oxford大学により主導され、腎疾患の進行や心血管死などのアウトカム等、重要な情報に焦点を当てて収集する試験デザインを採用し、試験参加者や試験施設の負担を軽減することで、各試験施設からより多くの参加者が登録できるように工夫され6、8カ国から6609名のCKD患者が登録、日本では25施設から612名が登録されました1。今回の日本人サブグループ解析では、日本からの参加者と日本以外の地域からの参加者におけるエンパグリフロジンの効果が比較、検討されました2

試験全体では、主要アウトカム(腎疾患進行又は心血管死)はエンパグリフロジン群の432名、プラセボ群の558名に発現し、プラセボ投与群に対してエンパグリフロジン投与群で28%のリスク低下が認められました(HR; 0.72; 95% CI 0.64 to 0.82)1。今回の日本人サブグループ解析では、日本以外の地域からの参加者における主要アウトカムに対する結果(HR 0.75、95%CI 0.66-0.86)及び日本からの参加者における結果(HR 0.49、95%CI 0.32-0.75;異質性のp=0.06)が新たに示され、試験全体でみられたエンパグリフロジンの主要アウトカムに対するリスク低下効果が日本から参加したCKD患者にも当てはまることが示唆されました2
また、エンパグリフロジンの安全性プロファイルについて、日本からの参加者においても新たな知見を示すものは確認されませんでした2

日本ベーリンガーインゲルハイムならびに日本イーライリリーは、グローバルレベルでのアライアンスのもと、CKDおよび、心腎代謝疾患領域におけるアンメットメディカルニーズに対する一層の貢献をしてまいります。

以上

 

参考情報

慢性腎臓病について
慢性腎臓病は、全世界で人口の10%以上である約8億5千万人が罹患しています7。この病気は、腎臓の障害が進行し、本来の機能を発揮できなくなることで起こります。慢性腎臓病は、症状が進行するまで無症状のため、多くの人が診断されず、毎年数百万人が慢性腎臓病と関連する合併症で死亡しています8,9,10。ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、慢性腎臓病及び相互に関連する心腎代謝疾患を持つ人々の治療の変革に取り組んでまいります。

EMPA-KIDNEY試験について(エンパグリフロジンによる心腎保護効果の検討)11,12,13
EMPA-KIDNEY(NCT03594110)は、国際無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、腎臓病の進行と心血管死のリスクに対するエンパグリフロジンの影響を評価する試験として設計されています。主要評価項目は、心血管死または腎臓病の進行 [末期腎不全(透析や腎移植などの腎代替療法が必要とされる状態)、eGFRが10mL/min/1.73m2に持続的に低下する状態、腎死、または、ランダム割付後にeGFRが40%以上持続的に低下している状態のいずれか] のいずれかが生じるまでの期間としました。EMPA-KIDNEYには、慢性腎臓病の診断が確立した6,600人を超える成人患者が糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず参加し、標準治療に加えてエンパグリフロジン10mgまたはプラセボの投与を受けました。

EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています14。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させ、効果をもたらす治療を創造することに取り組んでいます。9つの臨床試験と2つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で70万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害剤について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものの1つとなっています。

心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心腎代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます。

心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわるリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます15,16,17

両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを低減することが出来るようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のために資源を重点的に投資してまいります。

エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害剤であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です。エンパグリフロジンは、血糖マネジメントが不十分な成人で2型糖尿病のある方の治療薬として承認されています。また、世界各国で、成人の左室駆出率を問わない慢性心不全患者の治療薬**と慢性腎臓病治療薬**として、承認されています15,18

**日本において慢性心不全もしくは慢性腎臓病に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス®錠10mgであり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。)および慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。)です。

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
20111月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の健康に取り組むバイオ製薬企業です。研究開発において業界トップクラスの投資を行い、アンメットメディカルニーズの高い分野で画期的な治療法の開発に注力しています。1885年の創業以来、ベーリンガーインゲルハイムは株式を公開しない独立した企業形態により長期的な視点を維持し、バリューチェーン全体にサステナビリティを組み込んだ活動を行っています。より健やかでサステナブルかつ公平な未来を築くため、53,500人以上の社員が130ヵ国以上で事業を展開しています。

イーライリリー・アンド・カンパニー(リリー)について
リリーは世界中の人々のより豊かな人生のため、科学に思いやりを込めて、革新的医薬品を創り出す製薬会社です。約150年にわたり、リリーは患者さんの人生を変えるような発見や開発を続け、今日では世界中で年間5,100万人以上の患者さんに医薬品を提供しています。糖尿病治療における変革に加え、肥満症やアルツハイマー病への継続的な挑戦、自己免疫疾患へのソリューション提供、そして最も治療の困難ながん(癌)を管理可能な疾患に変えること。こうした世界で最も重要とも言える健康課題の解決を目指し、リリーの科学者たちはバイオテクノロジー、化学、遺伝子医学を駆使して一刻も早く患者さんに医薬品をお届けできるよう、開発に取り組んでいます。この世界の多様性を反映した革新的な臨床試験や医薬品へのアクセス改善を含め、「世界中の人々のより豊かな人生への貢献」という使命を胸に、リリーはさらなる健康な世界の実現に向けて、一歩ずつ歩みを進めてまいります。リリーの詳細については、Lilly.comLilly.com/newsをご覧ください。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。


詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.com/jp
(日本イーライリリー)


References
1 Herrington, W.G. et al. Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease, N Engl J Med, online publication on November 4, 2022, at NEJM.org. DOI: 10.1056/NEJMoa2204233
2 Nangaku M, Herrington WG, Goto S, et al. Effects of empagliflozin in patients with chronic kidney disease from Japan: exploratory analyses from EMPA-KIDNEY. Clin Exp Nephrol. Published online April 20, 2024. doi:10.1007/s10157-024-02489-4
3日本腎臓学会(編集)エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社; 2018.
Matsushita K, van der Velde M, Astor BC, Woodward M, Levey AS, de Jong PE, et al. Association of estimated glomerular filtration rate and albuminuria with all-cause and cardiovascular mortality in general population cohorts: a collaborative meta-analysis. Lancet 2010;375:2073-81..
Nagai K, et al. Clin Exp Nephrol 20212588592., エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 P.150
EMPA-KIDNEY Collaborative Group. Design, recruitment, and baseline characteristics of the EMPA-KIDNEY trial. Nephrol Dial Transplant. 2022;37(7):1317-1329. doi:10.1093/ndt/gfac040
7https://www.cdc.gov/kidneydisease/pdf/CKD-Factsheet-H.pdf
8 Coresh J. Update on the Burden of CKD. J Am Soc Nephrol. 2017;28(4):1020–1022.
9 Luyckx V, et al. Bull World Health Organ. 2018;96(6):414–422D.
10 Usman M, et al. Chronic Kidney Disease and Type 2 Diabetes. Arlington (VA): American Diabetes Association; 2021. Available at: https://professional.diabetes.org/sites/default/files/media/ada-ckd_compendium_fin_3_5-26-21_web2.pdf. Accessed: July 2023.
11 The New England Journal of Medicine. 2023; 388:117-127.
12 EMPA-KIDNEY full data presentation, presented on 4 November 2022 at the American Society of Nephrology (ASN) Congress 2022 - Kidney Week.
13 Clinical Trials. EMPA-KIDNEY (The Study of Heart and Kidney Protection With Empagliflozin). Available at:
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03594110. Accessed: July 2023.
14 GBD 2015 Mortality and Causes of Death Collaborators. Global, regional, and national life expectancy, all-cause mortality, and cause-specific mortality for 249 causes of death, 1980–2015: A systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. Lancet. 2016;388(10053):1459–544.
15 Anker S, Butler J, Filippatos G, et al. Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction. N Engl J Med. 2021;385:1451-1461.
16 Packer MD, Anker S, Butler J, et al. Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure. N Engl J Med. 2020; 383:1413-1424.
17 Yim HE, Yoo KH. Obesity and chronic kidney disease: prevalence, mechanism, and management. Clin Exp Pediatr. 2021;64(10):511-518.
18 Wanner C, Inzucchi SE, Lachin JM, et al. Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016;375:323-34.

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