ベーリンガーインゲルハイムとMDアンダーソンがんセンターが提携を拡大、肺がんに対するKRASおよびTRAILR2標的化合物の開発を加速

和訳リリース,
  • 共同で運営するバーチャル研究開発センター(VRDC)を通じた消化器がんの前臨床試験の成功に基づく契約
  • 継続的な提携により、ベーリンガーインゲルハイムの豊富ながん治療薬ポートフォリオを活用してKRASおよびTRAILR2を標的とする肺癌に対する治療薬の探索を推進、ファースト・イン・クラスの治療オプションをがん患者さんに提供する取り組みを強化

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が4月14日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。

2021年4月14日 ドイツ・インゲルハイムおよび米国ヒューストン
ベーリンガーインゲルハイムと米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(以下、「MDアンダーソンがんセンター」)は本日、バーチャル研究開発センター(VRDC: Virtual Research and Development Center)の共同運営を継続し、規模を拡大することを発表しました。今後、ベーリンガーインゲルハイムとMDアンダーソンがんセンターは、肺がん(特に非小細胞肺がん)の治療薬候補について、ベーリンガーインゲルハイムが保有するカーステン・ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS: Kirsten rat sarcoma)、および腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド受容体2(TRAILR2: TNF-related apoptosis-inducing ligand receptor 2)を標的とする治療薬ポートフォリオを活用して新たな分子の探索を進めます。

2019年に本提携が開始されて以来、MDアンダーソンがんセンターが有する革新的な臨床研究基盤と、当センター創薬部門の患者さん主体の医薬品開発能力、そして、ベーリンガーインゲルハイムが保有する革新的ながん治療薬パイプラインと、画期的な治療法を生み出し続ける専門知識が融合し、すでに成果を挙げてきました。今回の新契約に基づき、共同研究がさらに5年間継続されます。

ベーリンガーインゲルハイムのグローバルがん研究責任者のNorbert Kraut(Ph.D.)は、次のように述べています。「MDアンダーソンがんセンターとの提携は、最も治療困難ながんに対するソリューションを見い出すという私たちの決意を強めてくれるものです。この取り組みは特に、当社の包括的なKRAS標的治療薬開発プログラムにおいて重要な一歩となります。MDアンダーソンがんセンターとの提携が継続でき、たいへん嬉しく思います。患者さんへの献身と革新へのアプローチを共有すれば、肺がんと消化器がんの患者さんが待ち望む治療薬を提供できると信じています」

VRDCに関する本契約は柔軟に設定されており、ベーリンガーインゲルハイムとMDアンダーソンがんセンターの両者は、肺がんに対するKRASおよびTRAILR2標的治療薬の開発プログラムの対象を、ベーリンガーインゲルハイムが保有するファースト・イン・クラスのSOS1::汎KRAS阻害剤(BI 1701963)をはじめ、KRAS G12C阻害剤(BI 1823911)、MEK阻害剤(BI 3011441)、さらに新たな二重特異性TRAILR2作動薬(未公表)などに拡大できるようになっています。

この提携による成果は、共同出版物1の刊行や学会発表(2021年米国がん研究協会(AACR)年次総会2など)、臨床試験といった形で、すでに公表されています。ベーリンガーインゲルハイムは、今後VRDCを通じて行われるKRAS変異を標的とする包括的な開発プログラムに、MDアンダーソンがんセンターと協働で取り組んでまいります。

MDアンダーソンがんセンターの治療創薬部門オンコロジー研究責任者のTimothy Heffernan氏(Ph.D.)は、次のように述べています。「このたび、KRASおよびTRAILR2を標的とする新たな標的治療薬の開発という、非常にエキサイティングな医薬品開発領域で、ベーリンガーインゲルハイムとの提携が拡大されることになったことを誇りに思います。この提携は、確固たる協力関係と補完的な専門知識に基づいており、がん患者さんの革新的な治療薬の研究に向けて、学術機関と製薬会社が戦略的に協力できることを示しています」

MDアンダーソンがんセンターの創薬部門は、経験豊富な医薬品開発の専門家が中心となり、次世代のがん治療薬の開発に取り組んでいます。Heffernan氏が推進する、オンコロジー領域での治療薬およびイノベーションの発展を目指すトランスレーショナルリサーチプラットフォーム(TRACTION)は、最先端のトランスレーショナルリサーチを実施し、新たな治療薬を、最も高い効果が期待できる患者さんに迅速に提供しています。

KRASは、最も高頻度に変異が生じる発がん性がん遺伝子です。ヒトの転移性がん全体の7分の1がKRAS変異を発現しており、変異率は肺腺がんで30%以上、大腸がんで40%以上、膵臓がんで90%以上です。KRAS変異がんに対する承認済み治療薬は、現時点では存在せず、研究開発への継続的な投資が重要とされています。腫瘍細胞に選択的なTRAILR2の活性化は、肺がんや消化器がんなどのメディカルニーズの高い疾患において、がん細胞死をもたらす可能性があります。

本プレスリリースの対象
本プレスリリースは、ドイツ・インゲルハイムの本社が発行したものであり、当社のグローバル事業に関する情報を提供することを目的としています。承認状況や既承認薬の適応症に関する情報は、国によって異なる可能性があることにご注意ください。当社が事業を展開する国では、本件に関し、国によって異なるプレスリリースが発行されている場合があります。

開示事項
MDアンダーソンがんセンターは、本研究に関してベーリンガーインゲルハイムと金銭的利益相反の関係にあるため、利益相反マネジメントおよびモニタリングプランが適用されています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。

ベーリンガーインゲルハイムのがん領域での取り組み
がんは、私たちの人生から多くを、愛する人たちや貴重な時間を奪っていきます。ベーリンガーインゲルハイムオンコロジー部門は、患者さんに希望をもたらすため、がん治療に真摯に取り組み、努力を続けています。がんの治療法を確立するため、多様なサイエンスコミュニティとの連携を通し、患者さんの生活を一変させるためのブレークスルーを目指しています。私たちは、肺および消化器がんに焦点をあて、画期的なファースト・イン・クラスの治療を確立するために尽力しています。イノベーションに対する私たちの取り組みは、これまで肺がん治療に先駆的な進歩をもたらしました。より広範ながんとの闘いに挑むため、がん細胞を直接標的とする治療法の独自パイプライン、免疫腫瘍治療および理論的な併用アプローチを進展させています。

MDアンダーソンがんセンターについて
米国テキサス州ヒューストンにあるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターは、がん患者さんの治療、研究、教育、予防を専門とする、世界で最も評価の高いがんセンターのひとつです。当センターの唯一の使命は、世界中の患者さんとそのご家族のために、がんを撲滅することです。当センターは、米国国立がん研究所(NCI)が指定する49の総合がんセンターのひとつでであり、米国News & World Report誌の「優良病院調査」では、がん治療分野で第1位を獲得しています。同調査が1990年に始まって以来、当センターはがん治療分野で全米のトップ2のひとつであり、過去17年間のうち14回、第1位を獲得しています。当センターは、米国国立衛生研究所の組織であるNCIからがんセンター助成金(P30 CA016672)を受給しています。

 

当社についての詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com
(アニュアルレポート 英語)

References

  1. Marco H. Hofmann, Michael Gmachl, Juergen Ramharter, et al. BI-3406, a Potent and Selective SOS1-KRAS Interaction Inhibitor, Is Effective in KRAS-Driven Cancers through Combined MEK Inhibition. Cancer Discovery 2021;11:1-16.
  2. Joint presentations at the 2021 American Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting, held virtually April 10-15, 2021:
  • Presentation Title: Trial in Process: Phase 1 studies of BI 1701963, a SOS1::KRAS Inhibitor, in combination with MEK inhibitors, irreversible KRASG12C inhibitors or irinotecan. Abstract Number: CT210
  • Presentation Title: In vitro and in vivo characterization of BI 1823911 - a novel KRASG12C selective small molecule inhibitor. Abstract Number: 1271
  • Presentation Title: BI 905711 selectively induces apoptosis and anti-tumor response in TRAILR2/CDH17- expressing pancreatic cancer models. Abstract Number: 985

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