ベーリンガーインゲルハイムとリリー、デューク臨床研究所と共同で、急性心筋梗塞後の心不全発症および死亡に対するエンパグリフロジンの影響を評価するpragmatic trial*を実施

和訳リリース,
  • 心筋梗塞を含む虚血性心疾患は、世界で最も多い死因1です。
  • EMPACT-MI試験は、SGLT2阻害薬として初めて、糖尿病の合併の有無を問わず、急性心筋梗塞後の心不全発症に対する影響を評価する試験です。
  • この試験は、SGLT2阻害薬の中で最も幅広く、包括的に心腎代謝疾患へのエンパグリフロジンの影響を探索する、EMPOWER臨床試験プログラムの一部です。

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2020年5月26日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果、慢性心不全の適応は取得しておりません。

2020年5月26日 ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は、新しい試験であるEMPACT-MI試験(EMPAgliflozin for the prevention of Chronic heart failure and morTality after an acute Myocardial Infarction:急性心筋梗塞後の慢性心不全の発症および死亡に対するエンパグリフロジンの影響を評価する試験)に関して、デューク臨床研究所(Duke Clinical Research Institute:DCRI)と共同研究を開始することを発表しました。この共同研究では、エンパグリフロジンが糖尿病の合併の有無を問わず、一般的に心臓発作として知られている急性心筋梗塞を発症した成人の予後を改善し、心不全の発症を抑制できるかどうかを評価します。この無作為化試験は、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーによる資金提供の下、DCRIと共同で実施、解析し、報告される予定です。

EMPACT-MI試験では、16カ国以上から急性心筋梗塞の既往歴がある約3,300人の患者さんを組み入れます。主要評価項目は、全死亡および心不全による入院に対するエンパグリフロジンの影響を評価することです。この試験は、幅広く、包括的に心腎代謝疾患へのエンパグリフロジンの影響を探索する臨床試験プログラムである、EMPOWERプログラムの一部です。

EMPACT-MI試験の共同代表者を務めるDCRIのエグゼクティブディレクターのAdrian Hernandez博士(M.D., M.H.S.)は、次のように述べています。「今回の共同研究は、急性心筋梗塞を発症した患者さんの生命をどのように守るのかを知る上で重要な一歩となります。心筋梗塞は心疾患の中で最も多い死因です。この試験は、心筋梗塞を発症した患者さんの生存率を高め、心不全への進行を抑制する可能性を評価するSGLT2阻害薬として初めての試験です」

EMPACT-MI試験の代表者を務めるミシシッピ大学医学部長のJaved Butler教授(M.D., M.P.H., M.B.A.)は、次のように付け加えました。「急性心筋梗塞患者さんの予後を改善する上で、エンパグリフロジンが新しい標準療法となるかどうかを検討するEMPACT-MI試験に期待しています」

日常臨床のデータを用いてエビデンスを構築するPragmatic clinical trialである今回の共同研究は、実臨床の医療制度下における治療とアウトカムとの関係に焦点を置いています。今回のパートナーシップにより、Pragmatic clinical trialsにおけるDCRIの経験を活かし、リモートでのフォローアップや対象を絞ったデータ収集といった革新的かつ効率的な試験要素を施行することで、高いデータの質を保ちながら、患者さん志向の試験が可能となります。

ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長 Waheed Jamal(M.D.)は次のように述べています。「このたび、EMPACT-MI試験に関してデューク臨床研究所と協力できることをとても嬉しく思います。この試験では、心臓発作の既往歴がある成人において、生存率を高め、心不全の発症を抑制する可能性を評価します。従来の治療を行っても、これらの患者さんには高いリスクが残されたままですが、すでにSGLT2阻害薬で観察されている複数のベネフィットにより、このリスクに対処できる可能性があります」

イーライリリー・アンド・カンパニーの糖尿病事業部製品開発部門バイスプレジデント Jeff Emmick(M.D.,Ph.D.)は次のように述べています。「EMPACT-MI試験は、広範かつ包括的な臨床開発プログラムの一部です。このプログラムでは、エンパグリフロジンが心腎代謝疾患を患っている広範囲にわたる患者さんの健康アウトカムをどのように改善し、治療ギャップをどのように満たすことができるかを検討します」

* Pragmatic clinical trial:日常臨床のデータを用いてエビデンスを構築する方法の一つ
(参考:https://rethinkingclinicaltrials.org/chapters/pragmatic-clinical-trial/what-is-a-pragmatic-clinical-trial/

参考情報
デューク臨床研究所について

デューク大学医学部に属するデューク臨床研究所(DCRI)は、世界最大の学術臨床研究組織です。革新的な研究を通じて、患者ケアを改善するための知見を発展させ、共有することを使命としています。同研究所は、先駆的な多国籍臨床試験を実施し、大規模な国内患者症例登録を管理し、画期的なアウトカム研究を実施しています。DCRIの研究は、小児から高齢者まで、プライマリーケアからサブスペシャリティ医療まで、ゲノミクスからプロテオミクスまで、多分野にわたります。またDCRIは、研究機関による世界最大かつ最古の心血管データベースであるデューク心血管疾患データバンクの拠点となっています。同データバンクは、設置から40年以上、臨床上の意思決定に貢献しています。

EMPACT-MI試験について
EMPACT-MI試験(EMPAgliflozin for the prevention of Chronic heart failure and morTality after an acute Myocardial Infarction:急性心筋梗塞後の慢性心不全の発症および死亡に対するエンパグリフロジンの影響を評価する試験)は、効率的な無作為化・盲検・プラセボ対照・多施設共同試験であり、急性心筋梗塞で入院した成人におけるエンパグリフロジンの有効性と安全性を評価します。

EMPOWERプログラムについて
EMPOWERプログラムは、心血管疾患および腎疾患の患者さんの予後向上を目指すベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーのアライアンスによる長期的な取り組みです。EMPOWERプログラムは、これまでに世界中の成人患者さん13,000人以上が参加しているSGLT2阻害薬に関する心血管臨床試験プログラムの1つです。このプログラムの目的は、世界中の数百万人の成人患者さんとその家族、および医療制度に影響を及ぼす重大な臨床心血管・腎アウトカムを改善することです。

この開発プログラムには、EMPACT-MI試験の他に、以下の試験が含まれます。

  • EMPEROR-Reduced試験:駆出率が低下した慢性心不全の患者を対象とし、心血管死および心不全による入院に対するエンパグリフロジンの有効性と安全性の評価を目的とした試験。
  • EMPEROR-Preserved試験:駆出率が保持された慢性心不全の患者を対象とし、心血管死および心不全による入院に対するエンパグリフロジンの有効性と安全性の評価を目的とした試験。
  • EMPULSE試験:急性心不全で入院した患者を対象とし、心血管複合アウトカムおよび患者報告アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響の評価を目的とした試験。
  • EMPA-KIDNEY試験:慢性腎疾患の患者を対象とし、腎疾患の進行および心血管死に対するエンパグリフロジンの影響の評価を目的とした試験。
  • EMPERIAL-Reduced試験:駆出率が低下した慢性心不全の患者を対象とし、運動耐容能と患者報告アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響の評価を目的とした試験。
  • EMPERIAL-Preserved試験:駆出率が保持された慢性心不全の患者を対象とし、運動耐容能と患者報告アウトカムの向上を目的とした試験。
  • EMPA-REG OUTCOME®試験:心血管疾患の既往を有する2型糖尿病患者を対象とし、心血管死を含む主要心血管イベントに対するエンパグリフロジンの影響の評価を目的とした試験。
  • EMPRISE研究:日常診療におけるエンパグリフロジンの心血管イベントリスクに対する有効性、安全性、医療資源利用、医療費をDPP-4阻害薬と比較評価することを目的とした非介入研究。

急性心筋梗塞について
急性心筋梗塞(心臓発作)を含む虚血性心疾患は、世界中で死亡や障害の最大の原因となっており1、毎年、700万人以上が急性心筋梗塞を発症しています2。急性心筋梗塞の患者さんは、心不全の発症や死亡のリスクが高まります。心臓発作は、血栓またはアテローム性動脈硬化症(脂肪性沈着物または血栓の血管内壁への沈着)によって心筋組織への血液の供給が阻害され、心臓組織が壊死することで起こります。できるだけ多くの心臓組織を保護するため、迅速な診断と、影響が生じた血管の血流を回復する治療が極めて重要です3

心不全について
心不全とは、心臓が体中に十分な血液を送り出すことができず、酸素を含んだ血液の需要を満たせない状態、または満たすために血液量を増やさなければならず、肺および末梢神経に液体貯留(鬱血)が生じている状態の進行性の疾患であり、死亡に至る場合もあります4。心不全は、世界中に6,000万人の患者がいる一般的な病気であり、人口の高齢化が進むにつれて患者数が増加すると予想されます5。心不全は糖尿病患者で大変多く見られますが6、心不全患者全体の約半分は糖尿病を罹患していません7

エンパグリフロジンの心不全プログラムは、EMPA-REG OUTCOME®試験のデータに基づいて開始されました。同試験では、標準治療にプラセボを上乗せした群とエンパグリフロジン(10 mgまたは25 mg 1日1回)を上乗せした群とでエンパグリフロジンの有効性を評価しました8。EMPA-REG OUTCOME®試験は、心血管疾患既往の成人2型糖尿病患者において、心血管死の相対リスクが減少したSGLT2阻害薬として初めての試験です。被験者の45%以上は心筋梗塞の既往がありました8

エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です9,10,11
血糖値が高い2型糖尿病患者にエンパグリフロジンを投与し、SGLT2を阻害することで、過剰な糖を尿中に排出させます。さらに、塩分(ナトリウム)を体外に排出させ、循環血漿量を低下させます。エンパグリフロジンによる体内の糖・塩分・水の代謝変化がEMPA-REG OUTCOME®試験で確認された心血管死の減少に寄与する可能性が示唆されています12

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムの中核をなすのは、人と動物のためにより良い医薬品をお届けすることであり、生活を変える画期的な医薬品や治療法を開発していくことが当社の使命です。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持しています。将来のヘルスケアにおける課題を見据え、ベーリンガーインゲルハイムが最大限の力を発揮できる分野で貢献できるよう、長期的な視点をもって邁進していきます。

ベーリンガーインゲルハイムは、世界有数の研究開発主導型の製薬企業として、51,000人以上の社員が、医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。2019年度、ベーリンガーインゲルハイムは約190億ユーロの純売上高を達成しました。研究開発に約35億ユーロを投じてイノベーションに注力し、生命を救いクオリティオブライフ(生活の質)を向上させる新しい医薬品の創出に注力しています。

ベーリンガーインゲルハイムはパートナーシップを重視し、ライフサイエンス分野における多様な知見を活かして科学的な可能性を広げていきます。様々な協働を通じて、現在そして未来の患者さんの生活を変えるような画期的な治療法を提供していきます。

イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)

This press release is issued from Boehringer Ingelheim Corporate Headquarters in Ingelheim, Germany and is intended to provide information about our global business. Please be aware that information relating to the approval status and labels of approved products may vary from country to country, and a country-specific press release on this topic may have been issued in the countries where Boehringer Ingelheim and Eli Lilly and Company do business. This press release contains forward-looking statements (as that term is defined in the Private Securities Litigation Reform Act of 1995) about clinical trials to evaluate empagliflozin as a treatment for adults with acute myocardial infarction and reflects Lilly's current belief. However, as with any pharmaceutical product, there are substantial risks and uncertainties in the process of development and commercialization. Among other things, there can be no guarantee that future study results will be consistent with the results to date or that empagliflozin will receive additional regulatory approvals. For further discussion of these and other risks and uncertainties, see Lilly's most recent Form 10-K and Form 10-Q filings with the United States Securities and Exchange Commission. Except as required by law, Lilly undertakes no duty to update forward-looking statements to reflect events after the date of this release.

References

  1. GBD 2016 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators. Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 328 diseases and injuries for 195 countries, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016. Lancet. 2017;390(10100):1211–59.
  2. Reed GW, Rossi JE, Cannon CP. Acute myocardial infarction. Lancet. 2017;389(10065):197–210.
  3. National Heart, Lung and Blood Institute. Heart Attack. Available at: https://www.nhlbi.nih.gov/health-topics/heart-attack. Accessed: May 2020.
  4. American Heart Association. What is Heart Failure? Available at: https://www.heart.org/en/health-topics/heart-failure/what-is-heart-failure. Accessed: May 2020.
  5. GBD 2017 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators. Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 354 diseases and injuries for 195 countries and territories, 1990–2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017. Lancet. 2018;392(10159):1789–1858.
  6. Yancy CW, Jessup M, Bozkurt B, et al. 2013 ACCF/AHA guideline for the management of heart failure: a report of the American College of Cardiology Foundation/ American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol. 2013;128(16):e240–e327.
  7. Suskin N, McKelvie RS, Burns RJ, et al. Glucose and insulin abnormalities relate to functional capacity in patients with congestive heart failure. Eur Heart J. 2000;21:1368–75.
  8. Zinman B, Wanner C, Lachin JM, et al. Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015;373:2117–28.
  9. Jardiance® (empagliflozin) tablets, U.S. Prescribing Information. Available at: http://docs.boehringer-ingelheim.com/Prescribing%20Information/PIs/Jardiance/jardiance.pdf. Accessed: May 2020.
  10. European Summary of Product Characteristics Jardiance®, approved May 2018. Data on file.
  11. Jardiance® (Full Prescribing Information). Mexico; Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals, Inc; 2017.
  12. Vallon V and Thompson SC. Targeting renal glucose reabsorption to treat hyperglycaemia: the pleiotropic effects of SGLT2 inhibition. Diabetologia. 2017;60(2):215–25.

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