左室駆出率を問わない成人心不全患者の治療薬として、エンパグリフロジンが欧州で承認

和訳リリース,
  • 今回の承認により、エンパグリフロジンの既存の適応が拡大され、これまで欧州では承認薬が存在せず十分な治療を受けられなかった患者群である、左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)の成人患者が対象に加わります。
  • 欧州での販売承認は、2月24日に取得した米国食品医薬品局(FDA)の承認に続くものです。

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2022年3月7日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。なお、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎です。また、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」

2022年3月7日 ドイツ・インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、慢性心不全の成人患者の治療薬として、欧州医薬品庁(EMA)がエンパグリフロジンの販売を承認したことを発表しました1 。本日の承認により、ジャディアンス®は、左室駆出率が低下及び保持されている慢性心不全(HFrEF及びHFpEF)を含む、左室駆出率(LVEF)を問わない慢性心不全の成人患者に対する治療薬となります。

欧州では1,500万人以上が心不全に罹患しており、年間200万件近くの入院の原因となっています2。HFpEFは、これらの患者さんの約半数を占めており3 、その有病率、転帰不良、そして現在までに治療薬がないことから、「心血管領域で最大のアンメットニーズ」とされてきました4 , 5

Global Heart HubのNeil Johnson事務局長は、次のように述べています。「心不全の患者さんは、世界で6,000万人以上に達すると推定されています。多くの場合、この複雑な病態は、身体的・精神的に生活の質に深刻な影響を及ぼし、仕事ができなくなった場合は経済面にも影響します。これまで十分な治療を受けられなかった患者さんに対し、アウトカムを改善して入院を減らす新たな治療薬ができたことは、患者さんにとって素晴らしいニュースです。」

今回の承認は、第Ⅲ相EMPEROR-Preserved®試験の結果に基づいています。この試験では、LVEFが40%を超える心不全の成人患者5,988人を対象に、1日1回のエンパグリフロジン10 mgとプラセボを標準療法に追加して比較評価しました6。エンパグリフロジン群では、心血管死または心不全による入院の主要評価項目について、相対リスクが21%低下しました(絶対リスク低下3.3%、0.79 HR、0.69-0.90 95% CI)。確立されたベネフィットは、左室駆出率や糖尿病合併の有無にかかわらず認められました6。エンパグリフロジンは、過去に左室駆出率が低下した成人心不全患者(HFrEF)の治療薬として承認されています。

ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長のWaheed Jamal(M.D.)は、次のように述べています。「本日の欧州での承認によって、EUの多くの心不全患者さんの標準療法が再定義されます。6年前、エンパグリフロジンは、心血管疾患既往の2型糖尿病患者さんの心血管死を減少させる最初の治療薬として歴史に名を刻みました。そして本日、LVEFに関わらず、心不全の成人患者さんにおいて統計的に有意なベネフィットを示す治療薬として、その歴史を塗り替えました。この承認により、幅広い慢性心不全の成人患者さんに対するエンパグリフロジンの新しい可能性が強調され、この分野におけるリーダーとしてのベーリンガーインゲルハイムとイーライリリーの実績を裏付けるものとなります」

イーライリリー・アンド・カンパニーの製品開発部門バイスプレジデントのJeff Emmick(M.D.,Ph.D.)は、次のように述べています。「最近の米国食品医薬品局(FDA)による承認に続き、EMAが左室駆出率を問わない成人心不全患者さんに対する治療薬としてエンパグリフロジンを承認する決定を下したことを嬉しく思います。これは、幅広い心腎代謝疾患の患者さんのために治療オプションを発展させる取り組みにおいて必要不可欠な一歩です。引き続きこれらの病気のアウトカムを改善するエンパグリフロジンの可能性を模索していくと共に、慢性腎臓病の治療においてエンパグリフロジンの可能性を探るEMPA-KIDNEY試験の結果がまもなく得られることを心待ちにしています」

EMPEROR-Preserved®試験は、SGLT2阻害薬の中で最も幅広く、包括的に心腎代謝疾患の患者におけるエンパグリフロジンの影響を研究するEMPOWER臨床試験プログラムの一部です。

参考情報
EMPEROR慢性心不全試験7,8について
EMPEROR(EMPagliflozin outcomE tRial in patients with chrOnic heaRt failure:慢性心不全の患者を対象にしたエンパグリフロジンのアウトカム試験)慢性心不全の臨床試験プログラムは、2型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、エンパグリフロジンの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する以下の2つの第Ⅲ相無作為化二重盲検試験で構成されます。

  • EMPEROR-Reduced試験 [NCT03057977]:左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
    • 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
    • 患者数:3,730人
    • 試験完了:2020年
  • EMPEROR-Preserved試験[NCT03057951]:左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
    • 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
    • 患者数:5,988人
    • 試験完了:2021年

EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています9。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。9つの臨床試験と1つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。

心不全について
心不全とは、心臓が体中に十分な血液を送り出すことができず、酸素を含んだ血液の需要を満たせない進行性の状態であり、死亡に至る場合もあり、酸素を含んだ血液の需要を満たすために、血液量を増やさなければならず、その結果、肺および末梢組織に液体貯留(鬱血)が生じます10,11。心不全は、欧州では1500万人以上2、世界中で6,000万人以上が罹患しており、高齢化が進むにつれて患者数が増加すると予測されます12,13。心不全は糖尿病患者で大変多く見られますが、心不全患者全体の約半分は糖尿病に罹患していません14

心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心腎代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます。

心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます15,16,17

両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。

エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です18,19。エンパグリフロジンは、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています18,19。また、米国と欧州では成人の左室駆出率を問わない心不全患者の治療薬として、世界各国で、成人の左室駆出率が低下した心不全患者の治療薬としても承認されています*19

*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。なお、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」、「『臨床成績』の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。」

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。

イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)

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References

  1. European Commission. Union Register of medicinal products for human use. Available at: https://ec.europa.eu/health/documents/community-register/html/h930.htm. Last accessed: March 2022.
  2. Health Policy Partnership. Heart failure policy and practice in Europe. Available at: https://www.healthpolicypartnership.com/app/uploads/Heart-failure-policy-and-practice-in-Europe.pdf. Last accessed: March 2022
  3. Andersen MJ, Borlaug BA. Heart failure with preserved ejection fraction: current understandings and challenges. Curr Cardiol Rep. 2014 Jul;16(7):501.
  4. Butler J, Fonarow G, Zile M, et al. Developing therapies for heart failure with preserved ejection fraction: Current State and Future Directions. JACC Heart Fail. 2014 Apr;2(2):97–112.
  5. Shah SJ, Borlaug B, Kitzman D, et al. Research priorities for heart failure with preserved ejection fraction. Circulation. 2020;141:1001–26.
  6. Anker S, Butler J, Filippatos G, et al. Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction. N Engl J Med. 2021;10.1056/NEJMoa2107038.
  7. ClinicalTrials.gov. EMPagliflozin outcomE tRial in Patients With chrOnic heaRt Failure With Reduced Ejection Fraction (EMPEROR-Reduced). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03057977. Last accessed: March 2022.
  8. ClinicalTrials.gov. EMPagliflozin outcomE tRial in Patients With chrOnic heaRt Failure With Preserved Ejection Fraction (EMPEROR-Preserved). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03057951. Last accessed: March 2022.
  9. GBD 2015 Mortality and Causes of Death Collaborators. Global, regional, and national life expectancy, all-cause mortality, and cause-specific mortality for 249 causes of death, 1980–2015: A systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. Lancet. 2016; 388(10053):1459–544.
  10. American Heart Association. What is Heart Failure? Available at: https://www.heart.org/en/health-topics/heart-failure/what-is-heart-failure. Last accessed: March 2022.
  11. American Heart Association. Types of Heart Failure. Available at: https://www.heart.org/en/health-topics/heart-failure/what-is-heart-failure/types-of-heart-failure. Last accessed: March 2022.
  12. Lippi G, Sanchis-Gomar F. Global epidemiology and future trends of heart failure. AMJ. 2020;5:15
  13. Kenny HC, Abel ED. Heart Failure in Type 2 Diabetes Mellitus. Circ Res. 2019;124(1):121–41.
  14. Dunlay SM, Givertz MM, Aguilar D, et al. Type 2 Diabetes Mellitus and Heart Failure: A Scientific Statement From the American Heart Association and the Heart Failure Society of America. Circulation. 2019;140:e294–e324.
  15. Thomas M, Cooper M, Zimmet P. Changing epidemiology of type 2 diabetes mellitus and associated chronic kidney disease. Nat Rev Nephrol. 2015;12:73–81.
  16. García-Donaire JA, Ruilope LM. Cardiovascular and Renal Links along the Cardiorenal Continuum. Int J Nephrol. 2011;2011:975782.
  17. Leon BM, Maddox TM. Diabetes and cardiovascular disease: Epidemiology, biological mechanisms, treatment recommendations and future research. World J Diabetes. 2015;6(13):1246–58.
  18. Jardiance® (empagliflozin) tablets. European Product Information, approved April 2020. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/jardiance-epar-product-information_en.pdf. Last accessed: March 2022.
  19. Jardiance® (empagliflozin) tablets, U.S. Prescribing Information. Available at: http://docs.boehringer-ingelheim.com/Prescribing%20Information/PIs/Jardiance/jardiance.pdf. Last accessed: March 2022.

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