第60回「ベルツ賞」受賞者
- 1964年に創設された、伝統ある医学賞「ベルツ賞」は、毎年優れた医学論文を表彰
- 今年は「間質性肺疾患」をテーマに募集し、徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野 教授 西岡 安彦先生の「肺線維症に対する抗線維化薬開発:がんと線維化肺の接点を捉えたトランスレーショナルリサーチ」が1等賞を受賞
- 2023年12月1日(金)に、ドイツ大使公邸において、第60回(2023年度)「ベルツ賞」の贈呈式を開催
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役会長 兼 社長 ヤンシュテファン・シェルド)は、本日、第60回(2023年度)ベルツ賞受賞論文を発表するとともに、贈呈式を執り行いました。
「ベルツ賞」は、日本とドイツ両国の歴史的な医学領域での交流関係を回顧し、またその交流関係を更に深めていく目的で、ベーリンガーインゲルハイムが1964年に創設した伝統ある医学賞です。毎年、時宜に応じたテーマで論文を募り、優れた論文に対し授与しています。記念すべき第60回を迎えた今年は、「間質性肺疾患」をテーマとして論文を募集し、12篇の論文が寄せられました。常任委員5名と専門委員4名からなる選考委員会による厳正な審査の結果、次の通り受賞者が決定いたしました。
1等賞 「肺線維症に対する抗線維化薬開発:がんと線維化肺の接点を捉えたトランスレーショナルリサーチ」
徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野 教授 西岡(にしおか) 安彦(やすひこ) 先生
【評価ポイント】
- 臨床と基礎の両面において非常に大きな成果をあげており、この双方向からの独創的アプローチによる新たな肺線維症治療薬の開発が期待される
- 病態にかかわると考えられる新たな線維細胞集団(fibrocyte cluster)を見いだし、この線維細胞を標的とする新たな治療戦略を追求している
- 線維化にかかわる因子としての血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor, PDGF)に注目し、ドラッグリポジショニング*を行うとともに、新規化合物の発見にも成功し、臨床試験を推進している
*ドラッグリポジショニング:ある疾患に有効な既存薬を転用し、別の疾患に有効な治療薬として開発すること。
2等賞 「間質性肺疾患の病態解明を目指した臨床・基礎研究」
京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 教授 平井(ひらい) 豊博(とよひろ) 先生
京都大学大学院医学研究科 呼吸不全先進医療講座 特定准教授 半田(はんだ) 知宏(ともひろ) 先生
京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 教授 後藤(ごとう) 慎平(しんぺい) 先生
【評価ポイント】
- 基礎と臨床双方向からの間質性肺疾患の病態解明を目指し、人工知能、数理モデル、iPS細胞、オルガノイドなど先端的手法を駆使し研究を推進している
- 臨床的には胸部CT画像定量化技術を開発するとともに、予後予測に有用な血清・気管支肺胞洗浄液のバイオマーカーを同定した
- 基礎的には世界に先駆けてiPS細胞から肺胞上皮を分化誘導し、長期培養する技術を開発、希少疾患を含む間質性肺炎の病態解明と創薬研究を展開している
※受賞者の略歴、受賞論文の抄録については、下記よりご覧ください。
受賞者の略歴、受賞論文の抄録
贈呈式は本日、ドイツ大使公邸で執り行われ、日本ベーリンガーインゲルハイム 代表取締役会長 兼 社長 ヤンシュテファン・シェルドより、1等賞受賞者には1000万円、2等賞受賞者には500万円の賞金、さらに賞状とメダルがそれぞれ贈呈されました。
ベーリンガーインゲルハイム ディジーズマップ シニアアドバイザーのDr.Florian Gantner(フローリアン・ガントナー)は祝辞のなかで、「約10年前に治療に導入された抗線維化剤は、いずれも特発性肺線維症患者の肺機能の低下を抑えていますが、肺機能を安定化させる、あるいは改善することができる治療法はまだありません。今年のベルツ賞受賞者は、間質性肺疾患の理解に大きく貢献し、臨床で切望されている画期的治療薬開発への道を切り開きました」と述べ、受賞者を称えました。また、日本ベーリンガーインゲルハイム 代表取締役会長 兼 社長 ヤンシュテファン・シェルドは、次のように述べています。「間質性肺疾患は、アンメットメディカルニーズの高い疾患であり、臨床現場から画期的な新薬が望まれております。当賞が少しでも受賞された先生方のご支援となり、この分野における研究がさらに進展し、一日も早く革新的な治療法が患者さんのもとに届くことを願っています」
日本ベーリンガーインゲルハイムでは日本の医学の発展のために、「ベルツ賞」を通じて、これからも日本における医学界の研究活動を支援してまいります。
第60回(2023年度)ベルツ賞 選考委員会
2023年度 常任委員 | |
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井村 裕夫 先生 | 京都大学 名誉教授 |
岸本 忠三 先生 | 大阪大学 名誉教授 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任教授 |
永井 良三 先生 | 自治医科大学 学長 宮内庁皇室 医務主管 |
中西 重忠 先生 | 京都大学 名誉教授 |
宮園 浩平 先生 | 理化学研究所 理事 東京大学大学院医学系研究科応用病理学 卓越教授 |
2023年度 専門委員 | |
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天谷 雅行 先生 | 慶応義塾大学医学部 皮膚科学 教授 |
熊ノ郷 淳 先生 | 大阪大学大学院医学系研究科長 大阪大学医学部長 |
新実 彰男 先生 | 名古屋市立大学大学院医学研究科 呼吸器・免疫アレルギー内科学 教授 |
藤本 学 先生 | 大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学 教授 |
ベルツ賞について
「ベルツ賞」(正式名称:「エルウィン・フォン・ベルツ賞」)はベーリンガーインゲルハイムが1964年に設立してから今年で60年を迎える伝統ある日本国内の医学賞です。日独両国間の歴史的な医学領域での交流関係を回顧し、またその交流関係を更に深めていく目的で設立されました。「ベルツ賞」の名称は、日本の近代医学の発展に大きな功績を残したドイツ人医師エルウィン・フォン・ベルツ博士の名を冠したものです。ベルツ博士は、ドイツ チュービンゲン大学で医学を学び、ライプチヒ大学講師を経て1876年(明治9年)に来日しました。在日中は、現在の東京大学医学部の前身である東京医学校で教鞭をとり、数多くの優れた日本人医学者を育てるとともに、皇室の侍医を務めた事でも広く知られています。医学教育のみならず、公衆衛生面でも日本の防疫事業の基礎を築くなど、明治から始まる黎明期に日本が西洋医学を導入する上で、大きな貢献をした指導者の一人です。「ベルツ賞」の歴代受賞者には、2018年度ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学 特別教授 本庶 佑先生(第22回 1984年度受賞)をはじめ、生命科学や医学を牽引する研究者が名を連ねています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、世代を超えて生活を変革する画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型のバイオ製薬企業のリーディンクカンパニーとして、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出を目指しています。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態により長期的かつサステナブルな視点を維持しています。ヒト用医療用医薬品とアニマルヘルスの2つの事業分野において、53,000人以上の社員が世界130ヵ国以上で事業を展開しています。
詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com/2022/
(アニュアルレポート 英語)