エンパグリフロジン、EUにおいて慢性腎臓病の成人患者の治療薬として推奨される
- CHMPの肯定的な見解は、今までに行われた慢性腎臓病(CKD)におけるSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の臨床試験であるEMPA-KIDNEY試験の結果に基づきます1,2,3
- 承認されれば、エンパグリフロジンは、EU内の4700万人以上の慢性腎臓病の患者さんおよび、他の相互に関連する心腎代謝疾患の患者さんに対する標準治療に進歩をもたらす可能性があります4
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2023年月6月23日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。なお、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎です。
2023年6月23日 ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス – ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は、欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)がエンパグリフロジンを慢性腎臓病の成人患者の治療薬として承認することを推奨する肯定的な見解を採択したことを発表しました1。エンパグリフロジンは現在、成人の慢性心不全および2型糖尿病への適応を取得しています 。新たな適応が承認されれば、EUでのエンパグリフロジンの適応に成人の慢性腎臓病患者も含まれることとなり、相互に関連する心腎代謝疾患の増大するリスクを管理できる道が開かれます。
英オックスフォード大学公衆衛生学医療研究協議会ポピュレーションヘルス研究ユニットのクリニカル・サイエンティストで、EMPA-KIDNEY試験の共同試験責任医師である William Herrington教授は、次のように述べています。「CHMPの見解の根拠とされたEMPA-KIDNEY試験は、慢性腎臓病の成人患者を幅広く対象とし、腎臓病の進行と心血管死に明らかなベネフィットを示しました」また、共同試験責任医師であるRichard Haynes教授は次のように加えました。「エンパグリフロジンが慢性腎臓病の治療薬として承認されれば、これらの重要な知見を臨床現場で慢性腎臓病患者さんに大いに役立てることができるでしょう」
EMPA-KIDNEY試験は、成人の慢性腎臓病患者6,609名を特定の病因や併発疾患で絞り込むことなく幅広く登録して実施した第3相臨床試験で、今までに行われた慢性腎臓病におけるSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の患者層を対象とした試験です。エンパグリフロジンは慢性腎臓病の成人患者の腎臓と心血管系に有意のベネフィットをもたらすことを示し、腎疾患の進行または心血管死の相対リスクをプラセボと比較して28%低減しました。
ベーリンガーインゲルハイムのヒューマンファーマビジネスユニット担当取締役カリン・ブルヨンは、次のように述べています。「EU全体では慢性腎臓病の患者さんは4700万人以上に及び、これをさらに上回る数の人々が心腎代謝疾患に苦しんでおられます。私たちは、エンパグリフロジンが心腎代謝疾患の管理で大きな役割を果たしていく可能性を秘めていることに心が躍る思いでいます」
イーライリリーの糖尿病・肥満グローバルメディカルアフェアーズ担当シニアバイスプレジデントであるレオナルド グラス, M.D., F.A.C.E.は、次のように述べています。「慢性腎臓病、2型糖尿病や心不全などの心腎代謝疾患は、欧州では死因第一位となる疾患です。私たちはこれからも世界各国の規制当局と密接に連携し、成人の慢性腎疾患患者さんや、患者さんの治療にあたる医療従事者の方々ができるだけ早くエンパグリフロジンのベネフィットを得られるよう活動を進めてまいります」
参考情報
EMPA-KIDNEY試験について(エンパグリフロジンによる心腎保護効果の検討)2,3,6
EMPA-KIDNEY試験(NCT03594110)は、国際無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、慢性腎臓病の進展と心血管死のリスクに対するエンパグリフロジンの影響を評価する試験として設計されました。主要評価項目は、心血管死または慢性腎臓病の進展[末期腎不全(透析や腎移植などの腎代替療法の必要性)、eGFRの10mL/min/1.73m2未満への持続的な低下、腎死、eGFRの無作為化時点からの40%以上の持続的な低下]のどちらかが生じるまでの期間としました。主な副次評価項目は、心血管死または心不全による入院、すべての入院、および全死亡としました。EMPA-KIDNEY試験には、慢性腎臓病の診断が確立した6,609人の成人患者が糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず参加し、標準治療に加えてエンパグリフロジン 10mgまたはプラセボの投与を受けました。
慢性腎臓病について
慢性腎臓病は、全世界で人口の10%以上である約8億5千万人が罹患しています7。 この病気は、腎臓の障害が進行し、本来の機能を発揮できなくなることで起こります。慢性腎臓病は、症状が進行するまで無症状のため、ほとんどの人が診断されず、毎年数百万人が慢性腎臓病と関連する合併症で死亡しています6,8,9。ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、慢性腎臓病及び相互に関連する心腎代謝疾患を持つ人々の治療の変革に取り組んでまいります。
心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で14億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心腎代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます10,11。
心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます12,13,14。
両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。
エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です。エンパグリフロジンは、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています。また、世界各国で、成人の左室駆出率を問わない心不全患者の治療薬として、承認されています15,16。
*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントのみならず、アンメットメディカルニーズを満たす可能性のある領域にも力を注いでいき、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。心不全やCKDの患者さんに対するエンパグリフロジンの影響を評価するための臨床試験が開始されています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、世代を超えて生活を変革する画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型のバイオ製薬企業のリーディンクカンパニーとして、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出を目指しています。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態により長期的かつサステナブルな視点を維持しています。ヒト用医療用医薬品とアニマルヘルスの2つの事業分野において、53,000人以上の社員が世界130ヵ国以上で事業を展開しています。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp(日本イーライリリー)
References
- Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP). Jardiance summary of opinion. Available at: [https://www.ema.europa.eu/en/documents/smop/chmp-post-authorisation-summary-positive-opinion-jardiance-ii-74_en.pdf]. Accessed: June 2023.
- EMPA-KIDNEY full data presentation, presented on 4 November 2022 at the American Society of Nephrology (ASN) Congress 2022 - Kidney Week.
- Herrington W, Staplin N, Wanner C, et al. Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2023; 388:117-127.
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