EVIS(エビス)とサイエンスカフェ 〜ボトムアップのアイデアをかたちに〜

KPRIの自由闊達な風土は、年齢や専門性を超えて生まれる活発なコミュニケーションと、それを支えるボトムアップの様々な施策から醸成されています。社員間の連携と成長を促すプラットフォームづくりに参画した二人の社員に、取り組み内容やKPRIで働く魅力について話を聞きました。

研究者のボトムアップイノベーション活動

——普段の業務内容について教えてください。

溝口さん:イノベーション・テクノロジー・リードとして、社内で必要とされる技術や情報を社外で見つけ、導入するのが仕事です。ベーリンガーインゲルハイム全体では、米国に2名、中国とドイツに1名ずつ担当者がおり、私は主に日本国内を担当しています。

寒川さん:薬物動態安全性研究部の非臨床レギュラトリーサイエンスグループに所属して、医薬品開発のための非臨床安全性評価のサポートをしています。具体的には、国内の承認申請に向けた書類作成や、それに伴う開発チームへの情報提供、海外担当者との折衝などです。

神戸医薬研究所
イノベーション・テクノロジー・リード
溝口 雅之さん

マッチングプラットフォーム”EVIS”:100人の知見で課題解決

——溝口さんはEVISのプロジェクトに関わったそうですね。

溝口さん:2022年4月から運用を開始したKPRIのイントラネット内に設置したマッチングプラットフォーム「EVIS」の立ち上げと管理を担当しています。EVISとは、「EVeryone Is a Scout in KPRI」の略で、普段の実験業務やミーティングなどであがってきた技術的ニーズをプラットフォームに投稿し、他の社員が回答となりえる社内外のシーズ(アイデアや情報)を提示し、社員間の知識交換により課題を解決する場です。EVISに参加する全員が、一人の研究上の悩みに対して社外のトレンドからヒントを探し出す“スカウター”です。新しい技術や研究に興味のある所員が積極的に参加してくれているおかげで、これまでに公開された6件のニーズに対し、77件のシーズが寄せられ、スムーズな研究開発の助けとなっています。

寒川さん:EVISで扱う情報は、会社全体の研究開発の方針を把握する上でも役立っています。EVISでの情報共有の機会がなければ知り得なかったプロジェクトの側面を知り、業務への理解が深まりました。

溝口さん:EVISの立ち上げのきっかけは、KPRIのシニアマネジメントと「技術革新に追いつくために社外トレンドを取り込むにはどうすればいいか」という課題意識を共有したことです。医薬品の研究開発の最近のトレンドとして、イメージングやドラッグデリバリーシステムなどの分野における技術面での進歩が特に目まぐるしく、オープンイノベーションやスカウティングは不可欠な時代です。

寒川さん:KPRIをはじめとする仲間が、情報提供者として協力してくれるのは心強いですよね。

溝口さん:そうですね。100人以上のスカウターが助けてくれるようなもので、社外の最新情報が、膨大かつ迅速に集まるのがEVISの強みです。研究者として新しい技術に敏感な社員の皆さんが積極的に参加いただいているからこそうまくいっていると思うので、今後も皆さんに還元できるよう運営に努めていきたいです。

Science café:ボトムアップで始まった交流の場、サイエンスが共通言語

——寒川さんが携わった「Science café」についても活動内容を教えてください。

寒川さん: 2020年からオンラインで展開している「Science café」の初代事務局メンバーとして関わりました。コロナ禍による所員同士の対面でのコミュニケーション不足を解消することを目的に始まった活動で、週一回、業務時間内の30分〜1時間の活動で、自分の専門分野の最新トピックなどをテーマに参加者が持ち回りで発表や交流を行います。

溝口さん:Science caféの初期に私も登壇しました。事務局は一年交代でメンバーが代わるのですが、それに伴い、扱うトピックがより豊富になっていきましたね。アニマルヘルスに関連する内容や、新しく入社した所員の専門分野の紹介、また、外部から講師を招いての講演もあり、普段の業務の中ではなかなか知ることのない話題で、重要なコミュニケーションの場になっていると実感しています。

寒川さん:私が特に印象に残っているのは、本社のマーケティング担当者による、新薬が患者さんに届くまでのプロセスの紹介です。私自身の業務内容は開発の初期段階となる非臨床安全性評価ですが、患者さんに届くまでの話を聞いたことで、日常の業務と紐付けて自らの仕事の意義を確認する良い機会になりました。
今、溝口さんから社外のゲストを招いての交流のお話がありましたが、社外との協働は、今後より注力していきたいですね。神戸市はポートアイランドの研究開発拠点化を推進しており、「神戸医療産業都市」構想を掲げていますが、私たちも本プロジェクトを通して産官学の連携強化を後押ししていきたいです。アカデミアの先生方やベンチャー企業の方々などとの交流がごく普通に行われ、社外からも「開かれた研究所」として認知されるような職場環境にしていければと考えています。

日本重視の姿勢と自由な職場環境

――KPRIで働く魅力をどうとらえていますか。
神戸医薬研究所
薬物動態安全性研究部        
寒川 祐見さん

溝口さん:ベーリンガーインゲルハイムは、日本発祥でないグローバル製薬企業の中では珍しく、日本に研究所を置いている製薬企業です。KPRIはグローバルの研究開発体制の中で重要な役割を担い、日本の市場や日本の研究開発力は高く評価されています。さらに自由度が高い職場環境と、本業以外でも興味あるサイエンスの追求を後押しする職場風土があり、研究者として非常に恵まれた環境にあると思っています。
また、ベーリンガーインゲルハイムは売上の21%を研究開発費に充てており、対象になる疾患領域も幅広く、じっくりと自分の研究に集中できるのも魅力です。

寒川さん:私は昨年、ドイツの研究所に約1年間出向し、非臨床安全性の研究業務に携わりました。本当に刺激的な1年で、自分のキャリアを考える良い機会にもなりました。より人脈が広がったことで、さらに業務もしやすくなったと思います。国の垣根を越えて活躍できる環境があるのもやりがいにつながりますね。

 
――最後に今後の目標について教えてください。

寒川さん:非臨床安全性のスペシャリストとして、今後、当局との交渉にも積極的に参画して経験を積んでいければと思っています。

溝口さん:自社完結での研究開発が今後難しくなる中で、スカウティングの業務は、ますます重要な業務になっていくと確信しています。創薬における連携はもちろん、今後は、イメージングやドラッグデリバリーシステムの領域においても、有望な提携先との関係構築が求められています。そうしたところで自分の専門性を発揮していきたいと考えています。