EMPULSE第Ⅲ相試験において、エンパグリフロジンは急性心不全で入院後の安定した成人患者に対して有意な臨床的ベネフィットを示す

和訳リリース,
  • 急性心不全で入院した成人患者に対し、状態の安定化後から退院するまでにエンパグリフロジンを開始することにより、プラセボと比較して90日後に臨床的ベネフィットが得られる可能性が36%高くなりました。
  • このベネフィットは、心不全の新規発症、再発を問わず、また左室駆出率の値に関わらず一貫していました1

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2022年3月1日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。なお、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎です。また、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」

2022年3月1日 ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は本日、共同で実施したEMPULSE第Ⅲ相試験において、急性心不全で入院した成人患者に対して、状態が安定してから退院するまでにエンパグリフロジンを開始することで、プラセボと比較して90日後に臨床的ベネフィットが得られる可能性が36%高くなることが明らかになったと発表しました。臨床的ベネフィットは、全死亡、心不全イベントの頻度、初回の心不全イベントまでの期間、カンザスシティ心筋症質問票総合症状スコア(KCCQ-TSS)を含む主要評価項目を反映したものです。この結果は、Nature Medicine誌に本日掲載され、2021年米国心臓協会(AHA)の最新情報セッションで発表されました 1,2

EMPULSE試験の治験責任医師を務めたオランダ・フローニンゲン大学医療センター循環器科 Adriaan Voors教授は、次のように述べています。「心不全で入院後の最初の数カ月間は、患者さんにとって特に脆弱な時期です。未だ心不全の予後は不良であり、再入院や死亡を防ぐため、入院患者の臨床管理を改善する差し迫った必要性があります。今回、エンパグリフロジンによってプラセボと比較して有意な臨床的ベネフィットが得られたことは、退院直後の心不全治療を理解するための助けとなります」

心不全は、入院の主な原因であり、米国と欧州では年間100万件以上に上ります3。心不全で入院した患者さんの予後は不良ですが、米国の全国再入院データベースによると、2010年から2017年の間に患者さんの30%以上が90日以内に再入院しています4

エンパグリフロジンによる総合的な臨床的ベネフィットは、心不全の新規または再発、糖尿病の有無、左室駆出率の値に関わらず、一貫していました1。探索的な副次的評価項目において、エンパグリフロジンは、ベースラインから90日後までの期間に、KCCQ-TSSをプラセボと比較して有意に4.5ポイント改善しました1

EMPULSE試験における安全性について、治験医の報告に基づく急性腎不全の発生率は、エンパグリフロジン群で7.7%、プラセボ群で12.1%、低血糖症の発生率は、同1.9%と1.5%、体液量減少は、同12.7%と10.2%でした1

ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長Waheed Jamal(M.D.)は、次のように述べています。「EMPULSE試験では、急性心不全で入院し、状態が安定した後に標準治療に加えてエンパグリフロジンによる治療を受けた成人患者さんは、プラセボの投与を受けた患者さんと比較して、死亡、入院、生活の質(QOL)の複合的な評価項目が向上する可能性が高いことが明らかになりました。また、平均KCCQ-TSSスコア上昇は、患者さんの自己報告に基づく症状が総合的に改善したことを示しています。これらのデータから、エンパグリフロジンは、幅広い症状を有する、心不全の新規発症及び既往のある患者さんにおいて、臨床効果があることが示唆されました」

イーライリリー・アンド・カンパニー製品開発部門バイスプレジデントJeff Emmick(M.D., Ph.D.)は、次のように述べています。「EMPULSE試験の結果は、幅広い心腎代謝疾患にエンパグリフロジンがおよぼす潜在的な影響を検討するEMPOWERプログラムで得られたエビデンスを補強するものです。退院後の脆弱な時期に、臨床的ベネフィットと、これまでと同様の安全性が確認されたことは、入院時に適切な患者さんにエンパグリフロジンの投与を開始することによって、重要な数カ月間のアウトカムが改善する可能性があることを示しています」

今回のデータ公開は、最近の欧州及び米国でのエンパグリフロジンの成人心不全に対する治療薬としての製造販売承認取得を受けたものです。2021年にエンパグリフロジンは、欧州と米国で成人の左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の治療薬としても承認されています* 5,6。今回の適応拡大は今までに有効な治療法がなかった左室駆出率が保持された成人心不全患者も含まれます。

さらに、エンパグリフロジンは現在、効果不十分な成人の2型糖尿病に対して適応があります5,6,7。現在、心筋梗塞後の心不全リスクが高い患者さんを対象に、エンパグリフロジンが心不全による入院や死亡に及ぼす影響を検討する試験が進行中です8。また、慢性腎臓病へのエンパグリフロジンの影響を検討する試験も進行中です9

*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス®錠10㎎(一般名:エンパグリフロジン)であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。なお、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」、「「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。」

参考情報
EMPULSE試験について
EMPULSE試験は、急性心不全(新規または非代償性慢性心不全)で入院し、状態が安定した患者530人を対象に、エンパグリフロジン10 mg 1日1回投与が臨床的ベネフィット、安全性、および忍容性に及ぼす影響をプラセボと比較して評価する90日間の多施設共同無作為化二重盲検優越性試験です。主要評価項目は、全死亡、心不全イベントの頻度、初回の心不全イベントまでの期間、および治療から90日後のKCCQ-TSSで評価した症状の階層的な複合評価項目という臨床的ベネフィットに基づき、win ratio法で評価しました10

win ratioとは、エンパグリフロジン群の患者がプラセボ群の患者よりも優れた臨床ベネフィットを有する可能性を推定するものです。高いwin ratioは、エンパグリフロジンの臨床的ベネフィットが大きいことを示唆します。

EMPULSE試験では、新規の急性心不全と非代償性慢性心不全を階層化しました。それぞれの階層内において、エンパグリフロジン群の患者一人ひとりをプラセボ群の患者一人ひとりと比較しました。win ratioは、エンパグリフロジン群における合計勝者数を合計敗者数で割って求めます。主要評価項目の要素は、心不全イベントや症状よりも死亡を重視して、臨床的な重要性の順に評価しました1

EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています11。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。9つの臨床試験と1つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。

心不全について
心不全とは、心臓が体中に十分な血液を送り出すことができず、酸素を含んだ血液の需要を満たせない状態、または満たすために血液量を増やさなければならず、肺および末梢組織に液体貯留(鬱血)が生じている状態の進行性の疾患であり、衰弱し、死亡に至る場合もあります12,13。心不全は、世界中で6,000万人以上が罹患しており、高齢化が進むにつれて患者数が増加すると予測されます14,15。心不全は糖尿病患者で大変多く見られますが、心不全患者全体の約半分は糖尿病に罹患していません16,17

心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心腎代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます11,15

心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます18,19,20

両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。

エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です4,5,6。エンパグリフロジンは、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています4,5,6。また、米国では成人の左室駆出率を問わない心不全患者の治療薬として、欧州を含む世界各国で、成人の左室駆出率が低下した心不全患者の治療薬としても承認されています4,5

*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。なお、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」、「『臨床成績』の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。」

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。

イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)

This press release is issued from Boehringer Ingelheim Corporate Headquarters in Ingelheim, Germany and is intended to provide information about our global business. Please be aware that information relating to the approval status and labels of approved products may vary from country to country, and a country-specific press release on this topic may have been issued in the countries where Boehringer Ingelheim and Eli Lilly and Company do business. This press release contains forward-looking statements (as that term is defined in the Private Securities Litigation Reform Act of 1995) about Jardiance as a treatment for adults with type 2 diabetes, to reduce the risk of cardiovascular death in adults with type 2 diabetes and known cardiovascular disease, and to reduce the risk of cardiovascular death plus hospitalization for heart failure in adults with heart failure with reduced ejection fraction, and as a potential treatment for adults with cardio-renal-metabolic conditions and reflects Lilly's current beliefs and expectations. However, as with any pharmaceutical product, there are substantial risks and uncertainties in the process of drug research, development, and commercialization. Among other things, there can be no guarantee that planned or ongoing studies will be completed as planned, that future study results will be consistent with the results to date or that Jardiance will receive additional regulatory approvals. For a further discussion of these and other risks and uncertainties that could cause actual results to differ from Lilly's expectations, please see Lilly's most recent Forms 10-K and 10-Q filed with the U.S. Securities and Exchange Commission. Except as required by law, Lilly undertakes no duty to update forward-looking statements to reflect events after the date of this release.

 

References

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  2. Voors AA, Angermann CE, Teerlink JR, et al., for the EMPULSE Trial Investigators. Empagliflozin in patients hospitalized for acute heart failure: the EMPULSE trial. Presented at the 2021 American Heart Association Scientific Sessions, Virtual; November 14, 2021. Late-breaking session 5.
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