エンパグリフロジンの画期的な試験結果:EMPEROR-Preserved試験は左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者で良好な結果が得られた最初の臨床試験に
- EMPEROR-Preserved第Ⅲ相試験において、エンパグリフロジンは左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者の心血管死または心不全による入院のリスクを有意に低下させ、主要評価項目を達成しました。
- HFpEFは、その有病率、転帰不良、そして現在までに臨床試験において、臨床イベントに対して有効であることが証明された薬物療法がないことから、「心血管領域で最大のアンメットニーズ1」とされてきました2。
- 承認された場合、エンパグリフロジンは、左室駆出率にかかわらず幅広い心不全患者のアウトカム改善が臨床的に証明された最初の治療薬となります。
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2021年7月6日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび慢性心不全、腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。
2021年7月6日 ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は本日、EMPEROR-Preserved第Ⅲ相試験が主要評価項目を達成したことを発表しました。これにより、エンパグリフロジンは2型糖尿病合併の有無を問わない左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者において、心血管死または心不全による入院の複合アウトカムのリスクを有意に低下させることが示された最初の治療薬となりました。今回の結果とEMPEROR-Reduced試験の結果をあわせると、エンパグリフロジンは左室駆出率を問わない幅広い心不全において有効性を証明したことになります。安全性は、エンパグリフロジンの既知の安全性プロファイルと概ね一貫していました。
ドイツ・シャリテ ベルリン(Charité Berlin)の心不全専門医で、EMPEROR-Preservedの試験責任医師であるStefan Anker教授は次のように述べています。「EMPEROR-Preserved試験の結果は、心血管領域の薬物療法において、重要で画期的な内容であり、有病率が上昇し続け、公衆衛生上の問題となっているHFpEFの患者さんにとって新たな希望となります。その結果をESC2021で発表するのを心待ちにしています。HFpEFは長らく心不全のなかでも最も治療が困難なタイプとされてきました。EMPA-REG OUTCOME®試験や、左室駆出率が低下した心不全患者さんを対象としたEMPEROR-Reduced試験で既に得られている結果に加えて、EMPEROR-Preserved試験で今回の結果が得られたことにより、エンパグリフロジンが心血管死または心不全による入院のリスクを減少させ、心不全患者さんの治療に変革をもたらす可能性が示されました」
心不全は世界的に重大な問題となっています。世界における心不全の有病者数は6000万人以上にのぼり、その半数がHFpEF患者さんです3,4。心不全は、入院の主な原因となる疾患であり、西欧諸国でも高齢化に伴い有病率が上昇しつつあります3。心不全患者の死亡リスクは、入院回数に応じて増加します5。左室駆出率が保持された心不全の患者さんでは、左心室内に十分に血液を溜められないため、全身へ必要な量の血液を送り出すことができません6。
ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長のWaheed Jamal(M.D.)は、次のように述べています。「この試験で明らかになったことは、エンパグリフロジンによって、世界中で約3,000万人にものぼる左室駆出率が保持された心不全患者さんの治療が見直される可能性を示しています。このように有病率が高く、また生命に関わる疾患である左室駆出率が保持された心不全に対して、これまで心不全による入院または心血管死のリスクの減少を示した臨床試験はありませんでした。先のEMPEROR-Reduced試験の結果とあわせ、エンパグリフロジンがあらゆる心不全患者さんの生活に好影響をもたらす可能性があると確信しています」
イーライリリー・アンド・カンパニーの製品開発部門バイスプレジデントのJeff Emmick(M.D.,Ph.D.)は、次のように述べています。「エンパグリフロジンは、2型糖尿病と心血管疾患を合併した患者さんの心血管死を低下させた初のSGLT2阻害薬でしたが、私たちは今回、心不全においても重大な転換点を迎えました。EMPEROR-Preserved試験のトップラインの結果は、今まで治療が困難とされてきたタイプの心不全の治療が進む可能性を示すものです。心不全患者さんを対象とした一連のEMPEROR試験は、様々な心腎代謝疾患におけるエンパグリフロジンの影響を検討するEMPOWER臨床試験プログラムの一部として行われた試験で、多くの人々の生活に影響を及ぼす、有病率が高いこの疾患における有意なアウトカム改善を目指して私たちは研究を進めています」
EMPEROR-Preserved試験では、エンパグリフロジン10mgとプラセボを比較検討しています7。EMPEROR-Preserved試験の詳細な結果は、2021年8月27日に欧州心臓病学会議(ESC)にて発表される予定です。
今回の結果に先立ち、すでに終了しているEMPEROR-Reduced第Ⅲ相試験では、成人の左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象に検討が行われ、エンパグリフロジンは心血管死または心不全による入院からなる複合評価項目の相対リスクをプラセボと比べて有意に25%低下することが明らかにされています8。これらの試験結果は、HFrEFとHFpEFを含む幅広い心不全の患者さんにおけるエンパグリフロジンのベネフィットを示しています。
EMPEROR-Reduced試験の結果に基づき、成人の左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を適応とする承認申請が行われ、このほど欧州委員会の承認を取得しました9。米国では、HFrEFの成人患者の心血管死と心不全による入院のリスク低減を目的とする治療薬として、エンパグリフロジンの適応追加申請(sNDA)を食品医薬品局(FDA)に提出しました。審査結果は年内に得られる見通しです10。エンパグリフロジンは現在、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されており、欧州連合では、HFrEF患者の治療薬としても承認されています9,11,12,13。現在、心筋梗塞後の心不全リスクの高い患者を対象に、エンパグリフロジンが心不全による入院または死亡に及ぼす影響を検討する試験が進行中です14。また、慢性腎臓病へのエンパグリフロジンの影響を検討する試験も進行中です15。
参考情報
EMPEROR慢性心不全試験7,16について
EMPEROR(EMPagliflozin outcomE tRial in patients with chrOnic heaRt failure:慢性心不全の患者を対象にしたエンパグリフロジンのアウトカム試験)慢性心不全の臨床試験プログラムは、2型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、エンパグリフロジンの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する以下の2つの第Ⅲ相無作為化二重盲検試験で構成されます。
- EMPEROR-Reduced試験 [NCT03057977]:左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
- 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
- 患者数:3,730人
- 試験完了:2020年
- EMPEROR-Preserved試験[NCT03057951]:左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
- 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
- 患者数:5,988人
- 試験完了:2021年
左室駆出率は、左心室が収縮するごとに送り出される血液量の左心室容積に対する割合です17。心臓が弛緩すると、心室に血液が満たされます。
EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています18。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。9つの臨床試験と1つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。
心不全について
心不全とは、心臓が体中に十分な血液を送り出すことができず、酸素を含んだ血液の需要を満たせない状態、または満たすために血液量を増やさなければならず、肺および末梢組織に液体貯留(鬱血)が生じている状態の進行性の疾患であり、死亡に至る場合もあります19。心不全は、世界中で6,000万人以上が罹患しており、高齢化が進むにつれて患者数が増加すると予測されます3,4。心不全は糖尿病患者で大変多く見られますが20、心不全患者全体の約半分は糖尿病に罹患していません21。
心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心腎代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます4。
心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます22,23,24。
両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。
エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です11,12,13。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進しています。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
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(日本イーライリリー)
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