エンパグリフロジン、左室駆出率が低下した心不全の治療薬として欧州で承認を取得

和訳リリース,
  • この適応拡大は、eGFRが20ml/min/1.73 m2以上で、糖尿病合併の有無を問わず左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、心血管死または心不全による入院の複合リスクがプラセボと比較して有意に25%低下することを示したEMPEROR-Reduced試験に基づきます。
  • 欧州では、心不全が入院の主な原因となっており1、高齢化に伴い有病率の増加が予測されます。
  • エンパグリフロジンは、2014年5月に血糖コントロールが不十分な2型糖尿病成人患者さんの治療薬として初めて承認されました。

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2021年6月21日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび慢性心不全、腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。

2021年6月21日 ドイツ/インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、左室駆出率が低下した症候性慢性心不全(HFrEF)の成人患者の治療薬として、欧州委員会がエンパグリフロジンの販売を承認したことを発表しました2。今回の適応拡大は、2021年5月20日の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)による肯定的見解を受けたものです。

EMPERORプログラムの治験医師を務めた、フランス・ロレーヌ大学の治療学名誉教授であるFaiez Zannad氏(M.D., Ph.D.)は、次のように述べています。「本日の承認により、左室駆出率が低下した症候性慢性心不全を有する欧州の数百万人の患者さんに、重要な新しい治療選択肢を提供することが可能になります。このエンパグリフロジンのような新たな治療選択肢は、患者さんの命を救い、患者さんが病院にかかる時間を短縮して、ご家族と過ごす時間を増やすことを可能にするでしょう」

今回の販売承認は、エンパグリフロジンが心血管死または心不全による入院の複合リスクをプラセボと比較して有意に25%低下させることを示したEMPEROR-Reduced試験の結果に基づきます。主要評価項目に関する結果は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、サブグループ間で一貫していました。試験の重要な副次評価項目の解析から、エンパグリフロジンは心不全による入院の初回および再発のリスクをプラセボと比較して30%低下させると共に、腎機能の低下を有意に遅らせることが明らかになりました3

ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長のWaheed Jamal(M.D.)は、次のように述べています。「エンパグリフロジンは、2型糖尿病患者さんの心血管アウトカムを改善させることを示した初のSGLT2阻害薬です。糖尿病合併の有無にかかわらず、左室駆出率が低下した心不全の患者さんにエンパグリフロジンを届けることができ、嬉しく思います。この治療薬を確実に提供するため、欧州その他の国の規制当局と連携してまいります」

イーライリリー・アンド・カンパニーの製品開発部門バイスプレジデントのJeff Emmick(M.D.,Ph.D.)は、次のように述べています。「心不全管理の新たな1ページが始まり、現在は、今年予定されているEMPEROR-Preserved試験の結果を見据えています。この試験は、糖尿病合併の有無を問わず左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者さんにおいて、エンパグリフロジンを評価する試験です。私たちは、心不全や重大な代謝疾患を有する世界中の数百万人の患者さんのために、解決策を探索していきます」

心不全は、多くの場合、2型糖尿病や腎疾患などの心腎代謝系の疾患と関連しています。これらの臓器は相互に関連しているため、ある臓器が改善すると、別の臓器にも好影響をもたらす可能性があります。心不全とは、心臓発作においてよく見られる重篤な合併症であり4,5、心臓が全身に十分な血液を送り出せない場合に生じます。心不全には、左室駆出率が低下した心不全と左室駆出率が保持された心不全の2つの形態があります。左室駆出率が低下した心不全とは、心臓が正常に収縮できない状態であり、左室駆出率が保持された心不全とは、心臓が十分に血液を溜められない状態を指します。心不全患者では、息切れや疲労感が生じることが多く、QOLに大きく影響します6,7

EMPEROR-Reduced試験は、SGLT2阻害薬の中で幅広く、包括的に心腎代謝疾患の患者におけるエンパグリフロジンの影響を研究するEMPOWER臨床試験プログラムの一部です。

参考情報
EMPEROR慢性心不全試験8,9について
EMPEROR(EMPagliflozin outcomE tRial in patients with chrOnic heaRt failure:慢性心不全の患者を対象にしたエンパグリフロジンのアウトカム試験)慢性心不全の臨床試験プログラムは、現在心不全の標準治療を受けている2型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、エンパグリフロジンの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する以下の2つの第Ⅲ相無作為化二重盲検試験で構成されます。

  • EMPEROR-Reduced試験[NCT03057977]:左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
    • 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
    • 患者数:3,730人
    • 試験完了:2020年
    • Link to lay summaries
  • EMPEROR-Preserved試験[NCT03057951]:左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
    • 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
    • 患者数:5,988人
    • 試験完了:2021年

EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています10。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。8つの臨床試験と2つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。

心不全について
心不全とは、心臓が体中に十分な血液を送り出すことができず、酸素を含んだ血液の需要を満たせない状態、または満たすために血液量を増やさなければならず、肺および末梢組織に液体貯留(鬱血)が生じている状態の進行性の疾患であり、死亡に至る場合もあります4。心不全は、世界中で6,000万人以上が罹患しており、人口の高齢化が進むにつれて患者数が増加すると予測されます。心不全は糖尿病患者で大変多く見られますが11、心不全患者全体の約半分は糖尿病に罹患していません12

心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心血管代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます10

心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます13,14

両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。

エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です15,16,17

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。

イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)

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References

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  8. ClinicalTrials.gov. EMPagliflozin outcomE tRial in Patients With chrOnic heaRt Failure With Preserved Ejection Fraction (EMPEROR-Preserved). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03057951. Accessed June 2021.
  9. ClinicalTrials.gov. EMPagliflozin outcomE tRial in Patients With chrOnic heaRt Failure With Reduced Ejection Fraction (EMPEROR-Reduced). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03057977. Accessed June 2021.
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  15. Jardiance® (empagliflozin) tablets, U.S. Prescribing Information. Available at: http://docs.boehringer-ingelheim.com/Prescribing%20Information/PIs/Jardiance/jardiance.pdf. Accessed: June 2021.
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