ベーリンガーインゲルハイム、SOS1::KRAS阻害剤(BI 1701963)とKRASG12C阻害剤LUMAKRAS™(一般名:ソトラシブ)の共同臨床開発契約をアムジェン社と締結

和訳リリース,
  • ファースト・イン・クラスのSOS1::KRAS阻害剤と米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた初のKRASG12C阻害剤の併用により、KRASG12C変異がん患者さんに新たな治療効果がもたらされる可能性
  • 新たな臨床開発パートナーシップにより、SOS1::KRAS阻害剤BI 1701963の併用療法を研究するベーリンガーインゲルハイムの包括的プログラムを拡充

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が9月16日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。

2021年9月16日 ドイツ・インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムは、幅広いKRAS遺伝子変異に対して作用を示し、最も研究開発が進んでいる初のSOS1::KRAS阻害剤であるBI 1701963と、成人患者の局所進行性または転移性非小細胞肺がんの治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた初のKRASG12C阻害剤LUMAKRAS(一般名:ソトラシブ)の併用療法を評価する第I相共同臨床試験について、アムジェン社と契約を締結したことを発表しました。この臨床試験では、特に肺がんや大腸がん患者さんにおける、この2剤の併用効果や、KRASG12C阻害剤の単剤療法を上回る治療アウトカムの改善を評価します。

非臨床データによると、KRASG12C阻害剤とBI 1701963の併用により、これらのがん分子標的薬の相補的な作用機序に基づいて、KRASG12C変異を有するがんにおいて抗腫瘍効果が高まることが示唆されています1,2。BI 1701963は、不活性型KRASから活性型KRASへの変換を阻害することにより、KRASG12C変異を有する腫瘍において、不活性型KRASに共有結合するKRASG12C阻害剤に対しての反応性を高めることが期待されます。さらに、SOS1阻害剤はKRASG12C阻害剤による経路阻害に際して起こるネガティブフィードバックによる再活性化を阻害します。

ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートシニアバイスプレジデント兼グローバルオンコロジー領域担当責任者のFrancesco Di Marco(Ph.D.)は、次のように述べています。「このたび、KRASG12C阻害剤の先駆者であるアムジェン社との提携が実現し、嬉しく思います。KRAS変異を有するがんの患者さんに新しい治療選択肢を提供するため、プログラムをさらに拡充していきます。ベーリンガーインゲルハイムは、がんに対する『包括的』な研究アプローチを採用しています。これには、最も研究が進んでいる初のSOS1::KRAS阻害剤であるBI 1701963も含まれ、がん患者さんに治療効果をもたらすべく、複数の併用療法や効果を示すがん種について研究を行っています」

今回の非独占的提携契約の条件に基づき、アムジェン社は本試験のスポンサーとなり、ベーリンガーインゲルハイムとアムジェン社は共同で併用療法の臨床開発を実施します。

BI 1701963について

BI 1701963は、SOS1の触媒ドメインに結合する開発中の経口投与可能な低分子化合物であり、不活性型KRASとの相互作用を阻害します。これにより、活性型KRASの形成を抑制し、その結果として、KRAS依存性がんにおけるMAPK経路のシグナルを阻害します。SOS1の阻害は、ネガティブフィードバックによるMAPK経路の再活性化も同時に阻害します。SOS1の選択的阻害剤は、KRAS変異型にかかわらず、KRAS阻害を可能にする治療コンセプトです(汎KRASアプローチ)。

SOS1::KRAS阻害剤は、Hofmann MH他によって米国がん研究会議(AACR)の学会誌であるCancer Discoveryに発表されたとおり、主なKRAS変異であるG12D/V/CおよびG13Dを含む幅広いKRAS遺伝子変異に対して作用を示します。BI 1701963は現在、進行性KRAS変異型がんの患者を対象とした第I相臨床試験において、BI 1701963単剤療法として、およびMEK阻害剤、KRASG12C阻害剤、またはイリノテカンとの併用療法として、安全性、忍容性、薬物動態学的・薬力学的特性、および予備的な有効性の評価が行われています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。

ベーリンガーインゲルハイムのがん治療における取り組み
がんは、私たちの人生から多くを、愛する人たちや貴重な時間を奪っていきます。ベーリンガーインゲルハイムオンコロジー部門は、患者さんに希望をもたらすため、がん治療に真摯に取り組み、努力を続けています。がんの治療法を確立するため、多様なサイエンスコミュニティとの連携を通し、患者さんの生活を一変させるためのブレークスルーを目指しています。私たちは、肺および消化器がんに焦点をあて、画期的なファースト・イン・クラスの治療を確立するために尽力しています。イノベーションに対する私たちの取り組みは、これまで肺がん治療に先駆的な進歩をもたらしました。より広範ながんとの闘いに挑むため、がん細胞を直接標的とする治療法の独自パイプライン、免疫腫瘍治療および理論的な併用アプローチを進展させています。

詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com
(アニュアルレポート 英語)

References

  1. Savarese et al., Vertical pathway inhibition with a SOS1::KRAS inhibitor enhances the efficacy of KRAS G12C inhibitors, delays feedback resistance and demonstrates durable response, 32nd EORTC-NCI-AACR Symposium, October 24-25, 2020; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959804920311230
  2. Hofmann et al, Trial in Process: Phase 1 studies of BI 1701963, a SOS1::KRAS Inhibitor, in combination with MEK inhibitors, irreversible KRASG12C inhibitors or irinotecan. [abstract]. In: Proceedings of the American Association for Cancer Research Annual Meeting 2021; 2021 Apr 10-15 and May 17-21. Philadelphia (PA): AACR; Cancer Res 2021;81(13_Suppl):Abstract nr CT210. https://cancerres.aacrjournals.org/content/81/13_Supplement/CT210

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