ベーリンガーインゲルハイムとMIRATI THERAPEUTICS社、SOS1: 汎KRAS阻害剤であるBI 1701963とKRAS G12C選択的阻害剤のMRTX849との併用療法を評価する共同臨床試験の開始を発表

和訳リリース,
  • KRAS G12Cとその活性化因子であるSOS1を阻害する新規併用療法を評価する初の臨床試験であり、肺がんおよび大腸がん患者の治療効果を高められる可能性
  • KRAS G12CおよびSOS1阻害のシナジー効果を示唆する前臨床エビデンスに基づく臨床試験

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が9月17日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。

2020年9月17日 ドイツ・インゲルハイムおよび米国カリフォルニア州サンディエゴ
ベーリンガーインゲルハイムとMirati Therapeutics社(NASDAQ:MRTX)は、本日、KRAS G12C変異を有する固形がんの患者を対象とし、変異型にかかわらずKRASを阻害するSOS1:汎KRAS阻害剤であるBI 1701963と、KRAS G12C選択的阻害剤であるMRTX849の併用療法を評価する共同臨床試験を開始することを発表しました。本共同研究では、この併用療法によって、現時点では治療選択肢が限られている肺がんおよび大腸がん患者における有効性と効果の持続性について評価します。

前臨床データによると、KRAS G12C阻害剤とSOS1:汎KRAS阻害剤の併用により、これらのがん分子標的薬の相補的な機序に基づき、抗腫瘍効果が高まることが示唆されています。活性型KRAS(オン)から不活性型KRAS(オフ)へ平衡を移行させることにより、SOS1:汎KRAS阻害剤はKRAS G12C変異を有する腫瘍に働きかけ、KRAS(オフ)に結合する共有結合KRAS G12C阻害剤に対しての応答反応性を高めることが期待されます。

Mirati Therapeutics社のシニア・バイスプレジデント兼最高医学責任者のJoseph Leveque氏(M.D.)は、次のように述べています。「ベーリンガーインゲルハイムとの共同臨床試験で、この併用療法を評価できることを楽しみにしています。今回の提携は、MRTX849に関する当社の広範かつ積極的な開発戦略に沿っており、KRAS G12C変異を有する患者さんに新たな治療選択肢をもたらす可能性を秘めています」

ベーリンガーインゲルハイムのオンコロジー領域担当グローバル医学責任者のVictoria Zazulina(M.D.)は、次のように述べています。「KRASが関与するがんの患者さんに貢献するため、Mirati社と共同で取り組めることを嬉しく思っています。当社のSOS1:汎KRAS阻害剤を変異特異的なG12C阻害剤と併用することにより、双方にメリットをもたらし、治療効果を高めるようなアプローチを実現させる可能性があります。当社は、臨床段階に進んだ初のSOS1:汎KRAS阻害剤(BI 1701963)を含む包括的なKRASプログラムを実施しており、幅広い患者群に対する治療効果を最適化することを目的として、複数の併用療法を探求しています」

今回の非独占的提携契約の条件に基づき、Mirati社は本試験のスポンサーとなり、ベーリンガーインゲルハイムとMirati社は共同で併用療法の臨床開発の費用を分担して実施します。

MRTX849について
MRTX849は、置換変異(G12C)を有するKRAS型を選択的かつ強力に阻害するようデザインされた開発中の経口投与可能な低分子です。KRAS G12C変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)腺がん患者の約14%、大腸がん患者の3~4%、他の種類のがんのサブセットに発現します。KRAS G12C変異を特徴とする腫瘍は、一般に、予後不良および治療抵抗性を伴っており、利用できる治療オプションは非常に限られています。MRTX849は、分子同定されたKRAS G12C陽性の進行固形がんを有する患者を対象とした第Ⅰ相/第Ⅱ相試験で評価されており、2020年第1四半期にNSCLC、大腸がん、および膵臓がんの単剤療法コホートの登録が開始されました。

BI 1701963について
BI 1701963は、SOS1の触媒ドメインに結合するようデザインされた開発中の経口投与可能な低分子化合物であり、KRAS(オフ)との相互作用を抑制すると同時にSOS1によるフィードバックを阻害します。これにより、KRAS(オン)の形成を抑制し、その結果として、KRAS依存性がんにおけるMAPK経路のシグナルを阻害します。SOS1の選択的阻害剤は、KRAS変異型にかかわらず、KRAS阻害を可能にする治療コンセプトです(汎KRASアプローチ)。SOS1::KRAS阻害剤は、最近、Hofmann MH他によって米国がん研究会議(AACR)の学会誌であるCancer Discoveryに発表されたとおり、すべての主なG12D/V/CおよびG13D腫瘍性タンパク質を含む幅広いKRAS対立遺伝子に対して作用を示します。BI 1701963は現在、進行KRAS変異型がんの患者を対象とした第I相臨床試験において、BI 1701963単剤療法およびMEK阻害剤との併用療法の安全性、忍容性、薬物動態学的・薬力学的特性、および予備的有効性の評価が行われています。

Mirati Therapeutics社について
Mirati Therapeutics社(NASDAQ:MRTX)は、サンディエゴに拠点を置く臨床段階のバイオテクノロジー企業で、がんの遺伝・免疫ドライバーに対する直接的な取り組みを通して患者さんの寿命を延ばす新規治療薬の発展に取り組んでいます。Mirati社は、腫瘍の成長と腫瘍に対する免疫反応の抑制の両方に関わる幅広いチロシンキナーゼを選択的に標的とするようデザインされたシトラバチニブ(sitravatinib)を開発しています。シトラバチニブは、非小細胞肺がん(NSCLC)におけるシトラバチニブとチェックポイント阻害剤との併用療法に関する、第Ⅲ相試験を含め、免疫チェックポイント阻害剤による過去の治療に抵抗性を示した患者を対象とする複数の臨床試験で評価が行われています。

またMirati社は、強力なKRAS G12C選択的阻害剤であるMRTX849を含め、KRAS変異の新規阻害剤の開発を進めています。KRAS G12Cに関する研究は、G12Cよりも多くの患者において腫瘍をさらに成長させるG12Dを含め、膵臓がん、大腸がん、その他のがんを含め他のKRAS変異を標的とするブレークスルーにつながりました。KRAS G12Dに関する当社のリード臨床候補化合物であるMRTX1133は、IND申請試験で評価中です。詳細については、www.mirati.comをご参照ください。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムの中核をなすのは、人と動物のためにより良い医薬品をお届けすることであり、生活を変える画期的な医薬品や治療法を開発していくことが当社の使命です。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持しています。将来のヘルスケアにおける課題を見据え、ベーリンガーインゲルハイムが最大限の力を発揮できる分野で貢献できるよう、長期的な視点をもって邁進していきます。

ベーリンガーインゲルハイムは、世界有数の研究開発主導型の製薬企業として、51,000人以上の社員が、医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。2019年度、ベーリンガーインゲルハイムは約190億ユーロの純売上高を達成しました。研究開発に約35億ユーロを投じてイノベーションに注力し、生命を救いクオリティオブライフ(生活の質)を向上させる新しい医薬品の創出に注力しています。

ベーリンガーインゲルハイムはパートナーシップを重視し、ライフサイエンス分野における多様な知見を活かして科学的な可能性を広げていきます。様々な協働を通じて、現在そして未来の患者さんの生活を変えるような画期的な治療法を提供していきます。

詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com
(アニュアルレポート 英語)

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