慢性腎臓病におけるSGLT2阻害薬の第Ⅲ相試験であるEMPA-KIDNEY試験、エンパグリフロジンの有効性を示す肯定的なエビデンスを受け早期終了へ
- 独立データモニタリング委員会は、正式な中間評価を行い、試験の早期終了を勧告しました。
- EMPA-KIDNEY試験は、慢性腎臓病におけるSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の臨床試験です。
- EMPA-KIDNEYの詳細な結果は、今年中に発表される見込みです。
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2022年3月16日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。なお、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎です。また、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」
2022年3月16日 英国/オックスフォード、ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス
オックスフォード大学の医療研究協議会ポピュレーションヘルス研究ユニット (Medical Research Council Population Health Research Unit; MRC PHRU)、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE: LLY)は、慢性腎不全(CKD)の成人患者を対象としたEMPA-KIDNEY試験について独立データモニタリング委員会の推奨をもとに早期終了することを発表しました。この決定は、正式な中間評価を行った結果、慢性腎臓病の成人患者におけるエンパグリフロジンの有効性に関して、試験計画書に規定された基準を満たした結果を受けて提出された勧告に従ったものです。
EMPA-KIDNEY試験は、慢性腎臓病を対象としたSGLT2阻害薬の大規模臨床試験で、実臨床でみられることの多い慢性腎臓病の成人患者で、過去に行われたSGLT2阻害薬の臨床試験では対象外で、重要なアンメットニーズがあった患者も組み入れられ、エンパグリフロジンの有効性と安全性を検討しています。対象には以下の患者が含まれます1,2 。
- eGFR値(腎機能検査値)の軽度~重度の低下がみられる患者
- 尿中アルブミン濃度(尿中タンパク質の一種)が正常~高値の患者
- 糖尿病患者及び非糖尿病患者
- 様々な基礎疾患に起因する慢性腎臓病の患者
EMPA-KIDNEY試験は、6,600名を超える慢性腎臓病の成人患者を対象とした、学術機関が主導する大規模な二重盲検無作為化プラセボ対照試験です2。試験の実施、解析と報告は、オックスフォード大学MRC PHRUが行います。主要評価項目は、腎臓病の進行*または心血管死の複合評価項目としました。重要な副次評価項目は、心血管死または心不全による入院、すべての入院、および全死因による死亡2としました。これにより、EMPA-KIDNEY試験は、入院治療の必要性を重要な副次評価項目としました。
EMPA-KIDNEY試験の共同試験責任医師で、オックスフォード大学公衆衛生学のクリニカルサイエンティストで腎臓科名誉顧問のWilliam Herrington准教授は次のように述べています。「世界では、毎年500~1,000万人が慢性腎臓病のため死亡し、透析治療のため、多くの人々の生活に大きな影響が及んでいます。私たちは、できるだけ多くの患者さんで透析開始時期を遅らせ、心疾患の発症を防止することを目標として、腎機能が低下した患者さんを幅広く検討しました」
共同試験責任医師であるRichard Haynes教授は、次のように述べています。「EMPA-KIDNEY試験で検討した患者さんにおいて、エンパグリフロジンが有益であることを示すことができ、喜ばしく感じています。この試験の実施を可能としていただいた参加者の皆さまに深く感謝します。試験の詳細な結果については今年中に発表する予定です」
慢性腎臓病は、全世界の死因の上位にある疾患で、患者さんの入院リスクは慢性腎臓病のない人の2倍です5,6。慢性腎臓病は糖尿病、高血圧、肥満など、様々な代謝性疾患や心血管疾患と密接に関連しています。
ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長のWaheed Jamal M.D.は、次のように述べています。「数百万人にも及ぶ、慢性腎臓病とともに生きている患者さんを助けるためのコミュニティの一員として、EMPA-KIDNEY試験の早期終了は、そのゴールをより早く達成するための一歩前進となります。EMPOWER臨床試験プログラムでは、世界での患者数が数百万人にのぼる心腎代謝疾患の患者さんにおけるエンパグリフロジンの有益性が既に立証されていますが、今回のEMPA-KIDNEY試験は、本プログラムの新たな成功を示しています。」
EMPA-KIDNEY試験の全結果は今後開催される学会にて発表予定です。
イーライリリー・アンド・カンパニーの製品開発部門バイスプレジデントのJeff Emmick M.D., Ph.D.は、次のように述べています。「EMPA-KIDNEY試験は、従来、SGLT2阻害薬による腎臓病の進行阻止効果を検討する臨床試験において除外されたり、少数しか登録されてこなかった幅広い患者層を対象としています。今回の試験の早期終了は、腎臓病の成人患者さんの生活改善に向けた私たちの活動において、大きな一歩となります」
EMPA-KIDNEY試験は、ランドマーク試験であるEMPA-REG OUTCOME®試験と EMPEROR試験に続いて行われた試験で、いずれの試験でも心臓および腎臓に対するエンパグリフロジンの有益性を立証しました 10,11,12。EMPA-REG OUTCOME試験は、SGLT2阻害薬の心血管アウトカムに対する試験として心血管と腎臓のアウトカムに対する有益性 を立証した初の試験†で、心血管疾患の既往を持ち、標準治療を受けている2型糖尿病の患者さんを対象としました10。また、各種のEMPEROR試験のサブ解析では、慢性心不全の成人患者さんにおいて、エンパグリフロジンが左室駆出率(LVEF)に関わらず心臓と腎臓に対して有益性を示すことが明らかにされました11,12。
EMPA-KIDNEY試験を含むEMPOWERプログラムは、SGLT2阻害薬の試験としては広範囲かつ包括的なプログラムであり、エンパグリフロジンが心腎代謝疾患の患者さんの生活に及ぼす影響を検討しています。
*末期腎臓病(維持透析の開始または腎移植)、eGFRが10 mL/min/1.73 m2未満で持続、腎死、またはeGFRの無作為化時点からの低下率が40%以上で持続と定義
†試験計画書で規定した探索的副次評価項目:腎症の発症または悪化、相対リスクの39%低下。顕性アルブミン尿への進行、血清中クレアチニン濃度の2倍上昇(eGFR [MDRD] ≤45 mL/min/1.73 m2を認める場合)、腎機能代替療法の開始、または腎疾患による死亡と定義
eGFR、推算糸球体濾過量 MDRD、(Modification of diet in renal disease)
参考情報
慢性腎臓病について
慢性腎臓病の症例の約3分の1は、糖尿病、肥満や高血圧などの代謝性疾患に起因しています13,14 。
特に、慢性腎臓病は、合併症発現率と死亡率の上昇をもたらします。慢性腎臓病の患者さんの大部分は、末期腎疾患まで進行するまでに、心血管系の合併症により死亡しています15,16 。末期腎不全まで進行した患者さんは、透析療法や腎移植などの腎代替療法が必要になります17。慢性腎臓病は、世界の多くの地域で有病率が高く、人口の10%以上が罹患しています14,15。
EMPA-KIDNEY試験について(エンパグリフロジンによる心腎保護効果の検討)2,16
EMPA-KIDNEY(NCT03594110)は、国際無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、腎臓病の進行と心血管死のリスクに対するエンパグリフロジンの影響を評価する試験として設計されています。主要評価項目は、心血管死または腎臓病の進行 [末期腎不全(透析や腎移植などの腎代替療法が必要とされる状態)、eGFRが10mL/min/1.73m2未満で持続する状態、腎死、またはeGFRの無作為化時点からの低下率が40% 以上で持続する状態のいずれか] のいずれかが生じるまでの期間としました。EMPA-KIDNEYには、慢性腎臓病の診断が確立した6,600人を超える成人患者が糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず参加し、標準治療に加えてエンパグリフロジン 10mgまたはプラセボの投与を受けました。
オックスフォード大学のMRC PHRUについて
オックスフォード大学の医療研究協議会ポピュレーションヘルス研究ユニット(Medical Research Council Population Health Research Unit, MRC PHRU )は、オックスフォード・ポピュレーション・ヘルス(Oxford Population Health)の一部門として、慢性疾患の治療と予防の向上を目標に掲げ、世界的に成人の早期死亡と障害による負担の多くを占めている心血管疾患と代謝性疾患(糖尿病や慢性腎臓病など)を対象とした研究を進めています。MRC PHRUは、EMPA-KIDNEY運営委員会の共同議長を務めたColin Baigent教授が率いています。MRC PHRUは、健康に大きなインパクトをもたらす革新的な臨床試験やメタアナリシスの調整役を果たしています 。今回の試験以外にも、MRC PHRUは、新型コロナウイルス感染症における画期的な無作為化評価(RECOVERY; Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy)を進め、これにはEMPA-KIDNEY運営委員会の共同議長である Sir Martin Landray教授がリーダーの一人として関わりました。MRC PHRUはその世界的なアプローチを通じて多数の被験者を対象とする研究に関与し、病因や治療効果に関する信頼性の高い情報を提供し、グローバルヘルスに大きなインパクトをもたらしています。
EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています18。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。9つの臨床試験と1つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。
心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、心腎代謝疾患という、死因の上位にあり相互に関連した疾患群の患者ケアを変えるべく取り組んでいます20。
心腎代謝系は相互に関連しており、それぞれ危険因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つのシステムで機能不全が起こると他のシステムの機能不全が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病など相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つのシステムの状態が改善されれば、他のシステムにも好ましい影響が生じます7,19,20。
両社は、研究と治療を通じて、人々の健康を守り、相互に関連する心腎代謝系のバランスを回復させ、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートすることを目標としています。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを進め、治療ギャップの解消に向け、資源を重点的に投資してまいります。
エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です21,22。エンパグリフロジンは、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています21,22。また、米国および欧州では成人の左室駆出率を問わない心不全患者の治療薬として、世界各国で、成人の左室駆出率が低下した心不全患者の治療薬としても承認されています21,22。
*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。なお、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」、「『臨床成績』の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。」
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
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(日本イーライリリー)
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