米国食品医薬品局(FDA)、急性心筋梗塞後の予後改善のためにエンパグリフロジンをファストトラック審査の対象に指定

和訳リリース,
  • FDAのファストトラック審査の対象指定は、重篤な疾患を治療し、アンメットメディカルニーズを充足する新規治療薬候補の開発を促進します
  • エンパグリフロジンがファストトラック審査の対象に指定されたことは、糖尿病合併の有無を問わず、一般的に心臓発作として知られている急性心筋梗塞後の予後を改善する治療薬に対する切実なニーズを表しています

報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2020年9月15日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果、慢性心不全の適応は取得しておりません。

2020年9月15日 米国/コネチカット州リッジフィールドおよびインディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は、米国食品医薬品局(FDA)が、一般的に心臓発作として知られている急性心筋梗塞を発症した患者(糖尿病合併の有無を問わない)において、心不全による入院および死亡リスクの減少を評価するエンパグリフロジンの臨床試験がファストトラック審査の対象に指定されたことを発表しました。米国では、心不全の主な原因であり、高い死亡リスクと関連する心臓発作が年間150万件以上発生しています。心臓発作は、心筋の一部で血流が低下して起こります。

ベーリンガーインゲルハイムの心血管代謝・呼吸器内科の臨床開発・メディカルアフェアーズ担当バイスプレジデントのMohamed Eid(M.D., M.P.H, M.H.A)は、次のように述べています。「虚血性心疾患(IHD)は、米国における死亡および身体障害の最大の原因となっています。心筋梗塞(心臓発作)は、IHDの中で最も致死率の高い急性疾患であり、予後を改善する治療オプションが切望されています。FDAと緊密に連携し、EMPACT-MI試験を通じて、急性心筋梗塞を発症した成人患者さんの心不全による入院を減少させ、生存率を改善するために、ジャディアンスの可能性について研究を行っています」

EMPACT-MI試験(急性心筋梗塞後の慢性心不全の発症および死亡に対するエンパグリフロジンの影響を評価する、多施設共同、無作為化、並行群間、二重盲検、プラセボ対照優越性試験)は、糖尿病合併の有無を問わず、慢性心不全の既往歴がない急性心筋梗塞後の成人患者において、全死亡および心不全による入院に対するジャディアンスの有効性と安全性を評価します。この第Ⅲ相無作為化臨床試験は、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーによる資金提供の下、デューク臨床研究所(DCRI)と共同で実施、解析、報告される予定です。EMPACT-MI試験は、幅広く、包括的に心腎代謝疾患へのエンパグリフロジンの影響を探索する臨床試験プログラムである、EMPOWERプログラムの一部です。

イーライリリー・アンド・カンパニーの糖尿病事業部製品開発部門バイスプレジデントのJeff Emmick(M.D.,Ph.D.)は、次のように述べています。「ジャディアンスに対するFDAのファストトラック審査の対象指定は、心臓発作の既往歴がある患者さんのアンメットニーズ充足に向けた重要な節目となります。2型糖尿病合併の有無を問わず、患者さんのために心不全の予防および治療の発見に引き続き取り組みます。EMPACT-MI試験の結果は、2023年に報告予定です」

参考情報
EMPOWERプログラムについて

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています1。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。臨床試験とリアルワールドエビデンス研究を含む9つの試験・研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で257,000人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものになります。

EMPOWERプログラムには以下の試験が含まれます。

  • EMPEROR-Reduced試験:左室駆出率が低下した慢性心不全の患者を対象とし、心血管死または心不全による入院に対するエンパグリフロジンの有効性と安全性の評価を目的とした試験2
  • EMPEROR-Preserved試験:左室駆出率が保持された慢性心不全の患者を対象とし、心血管死または心不全による入院に対するエンパグリフロジンの有効性と安全性の評価を目的とした試験3
  • EMPULSE試験:急性心不全で入院した患者を対象とし、臨床アウトカムおよび患者報告アウトカムの改善についてエンパグリフロジンの効果を評価することを目的とした試験4
  • EMPACT-MI試験:2型糖尿病合併の有無を問わない急性心筋梗塞後の患者を対象とし、全死亡および心不全による入院に対するエンパグリフロジンの効果を評価することを目的とした試験5
  • EMPA-KIDNEY試験:慢性腎疾患の患者を対象とし、腎疾患の進行および心血管死に対するエンパグリフロジンの効果を評価することを目的とした試験6
  • EMPERIAL-Reduced試験:左室駆出率が低下した慢性心不全の患者を対象とし、運動耐容能と患者報告アウトカムに対するエンパグリフロジンの効果を評価することを目的とした試験7
  • EMPERIAL-Preserved試験:左室駆出率が保持された慢性心不全の患者を対象とし、運動耐容能と患者報告アウトカムに対するエンパグリフロジンの効果を評価することを目的とした試験8
  • EMPA-REG OUTCOME®試験:心血管疾患の既往を有する2型糖尿病患者を対象とし、心血管死を含む主要心血管イベントに対するエンパグリフロジンの効果を評価することを目的とした試験9
  • EMPRISE研究:日常診療におけるエンパグリフロジンの心血管イベントリスクに対する有効性、安全性、医療資源利用、医療費をDPP-4阻害薬と比較評価することを目的とした非介入研究10,11

心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心血管代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます1

心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系統で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系統の健康状態を改善すれば、他の系統にも好影響を与えます12,13

両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。

エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です14,15,16。 血糖値が高い2型糖尿病患者にエンパグリフロジンを投与し、SGLT2を阻害することで、過剰な糖を尿中に排出させます。さらに、塩分(ナトリウム)を体外に排出させ、循環血漿量を低下させます。エンパグリフロジンによる体内の糖・塩分・水の代謝変化が、EMPA-REG OUTCOME®試験で確認された心血管死の減少に寄与する可能性が示唆されています17

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムの中核をなすのは、人と動物のためにより良い医薬品をお届けすることであり、生活を変える画期的な医薬品や治療法を開発していくことが当社の使命です。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持しています。将来のヘルスケアにおける課題を見据え、ベーリンガーインゲルハイムが最大限の力を発揮できる分野で貢献できるよう、長期的な視点をもって邁進していきます。

ベーリンガーインゲルハイムは、世界有数の研究開発主導型の製薬企業として、51,000人以上の社員が、医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。2019年度、ベーリンガーインゲルハイムは約190億ユーロの純売上高を達成しました。研究開発に約35億ユーロを投じてイノベーションに注力し、生命を救いクオリティオブライフ(生活の質)を向上させる新しい医薬品の創出に注力しています。

ベーリンガーインゲルハイムはパートナーシップを重視し、ライフサイエンス分野における多様な知見を活かして科学的な可能性を広げていきます。様々な協働を通じて、現在そして未来の患者さんの生活を変えるような画期的な治療法を提供していきます。

イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)

This press release contains forward-looking statements (as that term is defined in the Private Securities Litigation Reform Act of 1995) about Jardiance and reflects Lilly's current belief. However, as with any pharmaceutical product, there are substantial risks and uncertainties in the process of drug development and commercialization. Among other things, there can be no guarantee that future study results will be consistent with the results to date or that Jardiance will receive additional regulatory approvals. For a further discussion of these and other risks and uncertainties that could cause actual results to differ from Lilly's expectations, please see Lilly's most recent Forms 10-K and 10-Q filed with the U.S. Securities and Exchange Commission. Lilly undertakes no duty to update forward-looking statements.

References

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