米国食品医薬品局(FDA)、慢性腎臓病の治療のためにエンパグリフロジンをファストトラック審査の対象に指定
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2020年3 月12日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。なお、日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少に関連する効能・効果および慢性心不全、慢性腎臓病の適応は取得しておりません。
2020年3月12日 ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は、米国食品医薬品局(FDA)が慢性腎臓病の成人患者を対象とした腎臓病の進行および心血管死のリスクの減少を評価するエンパグリフロジンの臨床試験を、ファストトラック審査の対象に指定したことを発表しました。慢性腎臓病の患者さんの多くは末期腎臓病に進行するリスクが高く、エンパグリフロジンがファストトラック審査の対象に指定されたことは、世界中の慢性腎臓病の患者さんの新たな治療オプションに対する喫緊のニーズであることを示しています1。
ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長Waheed Jamal(M.D.)は次のように述べています。「慢性腎臓病は有病率の高い深刻な疾患であり、世界中の7億人近くの成人に影響を及ぼしています。今回のFDAの決定は、慢性腎臓病とそれに関連する心血管疾患や代謝疾患を有する患者さんにとって、効果的な治療オプションがいかに重要であるかを示しています」。
慢性腎臓病は心血管疾患を原因とする早期死亡のリスク増加と関連しており、世界的に主な死因の1つです1。その約3分の2は、糖尿病(糖尿病性腎臓病)、高血圧、肥満などの代謝疾患に起因しています2,3,4。
イーライリリー・アンド・カンパニーの糖尿病事業部製品開発部門バイスプレジデントJeff Emmick(M.D.,Ph.D.)は次のように述べています。「私たちは、心臓、腎臓、代謝系の健康が密接に関係していることを念頭に、心腎代謝に対するエンパグリフロジンのベネフィットを評価する幅広い臨床開発プログラムに取り組んでいます。FDAのファストトラック審査対象に指定されたことは、慢性腎臓病の患者さんの治療を向上させるエンパグリフロジンの可能性を評価する上で、重要な一歩となります」。
進行中のEMPA-KIDNEY試験では、糖尿病の有無にかかわらず、成人の慢性腎臓病患者を対象とした腎疾患の進行および心血管死に対するエンパグリフロジンの有効性を評価します。EMPA-KIDNEY試験はEMPA-REG OUTCOME®試験の有望な探索的解析結果に基づいて開始されました。EMPA-REG OUTCOME®試験では、心血管疾患を有する成人2型糖尿病患者にエンパグリフロジンを投与することにより、腎臓病の初回発現および悪化のリスクがプラセボと比較して39%減少することが明らかになりました。
EMPA-KIDNEY試験は、臨床試験サービスユニットおよび疫学研究ユニット(CTSU)を拠点とするオックスフォード大学の医療研究協議会公衆衛生ユニット(MRC PHRU)が、デューク臨床研究所(DCRI)と共同で、独立した立場で実施、解析、報告するものです。ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、試験に研究資金を提供しています。
今回の決定は、慢性心不全患者における心血管死および心不全による入院のリスク減少を評価するエンパグリフロジンの臨床研究が2019年7月にFDAからファストトラック審査の対象に指定されたことに続くものです。
参考情報
FDAのファストトラック審査について
FDAのファストトラック審査とは、重篤な疾患を治療し、アンメットメディカルニーズを充足する治療薬の開発を促進し、審査を迅速化するプロセスであり、治療薬が存在しない病気に治療を提供すること、または現行の治療薬よりも良い治療をもたらしうる治療薬を提供することと定義されています。目的は重要な新薬を早く患者さんに提供することです。ファストトラック審査の対象に指定された医薬品については、FDAと頻繁に連絡を取って医薬品開発計画を検討すると共に、該当する基準を満たした場合に、迅速承認および優先審査に適格と認められるかどうかが協議されます。
EMPA-KIDNEY試験について[NCT03594110]
EMPA-KIDNEY試験は慢性腎臓病患者を対象に、腎臓病の進行および心血管死のリスクに対するエンパグリフロジンの有効性を評価する、無作為化二重盲検、プラセボ対照の国際共同第Ⅲ相臨床試験です。主要評価項目は、無作為化後から腎臓病の進行(末期腎不全(透析や腎移植などの腎代替療法が必要とされる)、eGFR 10mL/min/1.73m2未満への持続的な低下、腎疾患による死亡、eGFRの40%以上の持続的低下)、または、心血管死、のいずれかのイベントが起きるまでの期間として定義されています。EMPA-KIDNEY試験は、糖尿病の有無にかかわらず、またタンパク尿を伴うかどうかにかかわらず、現在の標準療法にエンパグリフロジン10mgまたはプラセボを上乗せして投与されている約6,000人の慢性腎臓病の患者が対象となります。
慢性腎臓病について
慢性腎臓病は腎臓の働きが持続して低下する状態をいいます。慢性腎臓病の症例の約3分の2は糖尿病、高血圧および肥満などの代謝性疾患を起因としています2,3,4。
特に、慢性腎臓病は有病率と死亡率の増加に相関しています。世界的には、慢性腎臓病患者の死亡例の多くは心血管合併症の結果生じると考えられており、末期腎不全に至る前に死亡することも珍しくありません5,6,7。また、腎臓病の末期を迎えた患者さんは慢性的な透析や腎移植など、腎代替療法を受けなくてはなりません8。慢性腎臓病は世界的に有病率が高く、人口の9%以上が罹患しています1。現時点では、腎臓病の進行や心血管死を明確に軽減する治療薬は存在しないため、慢性腎臓病における新しい治療選択肢への包括的なアンメットメディカルニーズがあることは明らかです。
心腎代謝疾患について
心腎代謝疾患は、相互に関連する病気の一群であり、心臓、腎臓、内分泌系に影響を及ぼします。これらの病気は、合計すると世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの病気で死亡しています9。このグループに分類される病気として、特に、冠動脈疾患、心不全、慢性腎疾患、2型糖尿病が挙げられます10。
心腎系と代謝系の関連性に関する先端科学は、これらの症状を有する患者さんのための診断・予防・治療戦略に対する分野横断的アプローチの採用を支持しています。幅広い心腎代謝効果を有する新しい治療法も含め、関連する併存疾患の治療法を調和させ、患者ケアの最適化をチームで取り組むことにより、これらの病気のような重度の慢性疾患を有する患者さんのアウトカムを改善できる可能性があります。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、治療の発展に取り組み、心血管疾患、慢性腎臓病、2型糖尿病など、心疾患、腎臓病、代謝疾患の公衆衛生上の課題に対応するべく、研究を進めています。
エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスクを有意に低減するとして複数の国の規制当局に承認され、心血管疾患既往の成人2型糖尿病患者における心血管死のリスク低減に関するデータがラベルに記載された初めての治療薬です11,12,13。
高血糖の2型糖尿病患者にエンパグリフロジンを投与し、SGLT2を阻害することで、過剰な糖を尿中に排出させます。さらに、塩分(ナトリウム)を体外に排出させ、循環血漿量を低下させます。エンパグリフロジンによって、体内の糖、塩分(ナトリウム)および水分の代謝に変化が引き起こされ、EMPA-REG OUTCOME®試験でみられた心血管死の減少を引き起こす一助となっているのではないかと考えられています14。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。両社は、アライアンスに貢献する分子を地域ごとに共同で、または個別に開発します。同アライアンスは世界トップクラスの製薬企業である両社の強みを活かし、患者さんのニーズに重点的に取り組んでいます。提携により、糖尿病患者さんのケアだけでなく、アンメットメディカルニーズが存在する領域に対処する可能性を探るべく協力しています。心不全や慢性腎臓病の患者さんにジャディアンス®がもたらす影響を評価する臨床試験が開始されています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ヒトと動物の健康を改善することは、研究開発主導型の製薬企業ベーリンガーインゲルハイムの使命です。私たちは治療選択肢が存在せず、未だ十分な治療法が確立していない疾患に焦点を合わせ、患者さんが健やかな生活を確保できる革新的な治療法の開発に専念しています。アニマルヘルスでは、先進的な病気の予防と早期発見・早期治療に注力しています。
ベーリンガーインゲルハイムは世界におけるトップ20製薬企業の1つで、1885年の設立以来、株式を公開しない企業形態を維持しています。約50,000人の社員が、医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品の3つの事業分野において、革新的な製品開発を通した価値の創出に日々取り組んでいます。2018年度、ベーリンガーインゲルハイムは約175億ユーロの売上高を達成しました。研究開発費は32億ユーロ近くに達し、売上高の18.1%に相当します。
株式を公開しない企業形態の特色を生かし、ベーリンガーインゲルハイムは世代を超え、長期的な成功を重視しています。したがって、私たちは、研究活動において、自社のリソースに加えて、オープンイノベーションと戦略的アライアンスを重視し持続的な成長を目指しています。ベーリンガーインゲルハイムは、私たちが関連するあらゆるリソースを尊重し、人類と環境に対する責任を果たしていきます。詳細は、ベーリンガーインゲルハイムのWebサイト(www.boehringer-ingelheim.com)、またはアニュアルレポート(http://annualreport.boehringer-ingelheim.com)をご覧ください。
イーライリリー・アンド・カンパニーの糖尿病事業について
イーライリリー・アンド・カンパニーは1923年に世界で初めてインスリン製剤を開発して以来、糖尿病ケアの分野において常に世界をリードしてきました。現在も、糖尿病をもつ人々やケアを行う人々の様々なニーズに応えることで、この伝統を築いています。研究開発や事業提携、拡大し続ける幅広い医薬品ポートフォリオ、そして、医薬品からサポートプログラムをはじめとする実質的なソリューションを提供し続けることを通じて、世界中の糖尿病をもつ人々の生活の改善に努めます。詳細はウェブサイト(www.lillydiabetes.com.)をご覧ください。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー社の従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。リリーの詳細については、当社のWebサイト(http://www.lilly.com/およびhttps://newsroom.lilly.com/social-channels)をご覧ください。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
http://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
http://www.boehringer-ingelheim.jp
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
http://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
http://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)
This press release is issued from Boehringer Ingelheim Corporate Headquarters in Ingelheim, Germany and is intended to provide information about our global business. Please be aware that information relating to the approval status and labels of approved products may vary from country to country, and a country-specific press release on this topic may have been issued in the countries where Boehringer Ingelheim and Eli Lilly and Company do business.
This press release contains forward-looking statements (as that term is defined in the Private Securities Litigation Reform Act of 1995) about clinical trials to evaluate empagliflozin as a treatment for adults with chronic kidney disease and reflects Lilly's current belief. However, as with any pharmaceutical product, there are substantial risks and uncertainties in the process of development and commercialization. Among other things, there can be no guarantee that future study results will be consistent with the results to date or that empagliflozin will receive additional regulatory approvals. For further discussion of these and other risks and uncertainties, see Lilly's most recent Form 10-K and Form 10-Q filings with the United States Securities and Exchange Commission. Except as required by law, Lilly undertakes no duty to update forward-looking statements to reflect events after the date of this release.
References
- GBD Chronic Kidney Disease Collaboration. Global, regional, and national burden of chronic kidney disease, 1990–2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017. The Lancet. 2020; 395:709-23
- Levin A, Tonelli M, Bonventre J, et al. Global kidney health 2017 and beyond: a roadmap for closing gaps in care, research, and policy. Lancet 2017;390:1888-917.
- United States Renal Data System, USRDS 2012 Annual data report: Atlas of chronic kidney disease and end-stage renal disease in the United States, National Institutes of Health, National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, Bethesda, MD, 2012. Available from: http://www.usrds.org/reference.htm. See Appendix I, United States Renal Data System (USRDS).
- Liyanage T, Ninomiya T, Jha V, et al. Worldwide access to treatment for end-stage kidney disease: a systematic review. Lancet 2015; 385(9981):1975-82.
- Sarnak MJ, Levey AS, Schoolwerth AC, et al. Kidney disease as a risk factor for development of cardiovascular disease: a statement from the American Heart Association Councils on Kidney in Cardiovascular Disease, High Blood Pressure Research, Clinical Cardiology, and Epidemiology and Prevention. Hypertension 2003;42:1050-65.
- Tonelli M, Wiebe N, Culleton B, et al. Chronic kidney disease and mortality risk: a systematic review. J Am Soc Nephrol. 2006;17:2034-47.
- Schiffrin EL, Lipman ML and Mann JFE. Chronic kidney disease: effects on the cardiovascular system. Circulation 2007;116:85-97.
- American Kidney Fund. Kidney Failure (ESRD) Causes, Symptos, & Treatments. Available at: http://www.kidneyfund.org/kidney-disease/kidney-failure/. Accessed March 2020.
- Wang H et al. Global, regional, and national life expectancy, all-cause mortality, and cause-specific mortality for 249 causes of death, 1980–2015: A systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. The Lancet 2016; 388(10053):1459–544.
- Arnold SV et al. Burden of cardio-renal-metabolic conditions in adults with type 2 diabetes within the Diabetes Collaborative Registry. Diabetes, Obesity and Metabolism. 2018 Aug;20(8):2000-2003.
- Jardiance® (empagliflozin) tablets U.S. Prescribing Information. Available at: https://docs.boehringer-ingelheim.com/Prescribing%20Information/PIs/Jardiance/jardiance.pdf. Accessed March 2020.
- European Summary of Product Characteristics Jardiance®, approved May 2018. Data on file.
- Jardiance® (Full Prescribing Information). Mexico; Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals, Inc; 2017.
- Vallon V and Thompson SC. Targeting renal glucose reabsorption to treat hyperglycaemia: the pleiotropic effects of SGLT2 inhibition. Diabetologia 2017;60(2):215-25.