ゾンゲルチニブ、Beamion LUNG-1試験の最新データにより、治療歴のあるHER2遺伝子変異陽性肺がん患者さんにおける有効性を確認

和訳リリース,
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が126日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。
 
202412月6日 ドイツ/インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムは本日、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024126日~8日、シンガポール)において、治療歴のあるHER2遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、ゾンゲルチニブ(BI 1810631)を評価する第1bBeamion LUNG-1試験コホート1の最新データを発表しました。世界肺がん学会のプレジデンシャルセッションで発表された肯定的な結果に加え、今回のデータ更新では、ゾンゲルチニブの治療群において持続的な有効性と管理可能な程度の(manageable)安全性プロファイルが確認されました。
  • ゾンゲルチニブ120mg 11回投与群(n=75)において、独立中央判定による確定奏効率(ORR)は71%であり、病勢コントロール率(DCR)は93%でした。
  • 最初の病勢進行のイベント発生までの期間に関するデータはゾンゲルチニブの奏効が持続的であることを示唆しており、6カ月時点での無増悪生存期間(PFS)と奏効期間(DoR)の割合はそれぞれ69%73%でした。データカットオフ時点で、患者さんの55%が治療を継続中でした。
  • コホート1のデータは現在も集計中であり、PFS中央値やDoR中央値のデータは、今後の医学会議で報告される予定です。

本結果を発表した治験責任医師である、国立がん研究センター中央病院 先端医療科長の山本 昇先生(MD.、PhD)は次のように述べています。「今回の最新データは、活性型HER2遺伝子変異陽性のNSCLC患者さんにとって、ゾンゲルチニブが将来的な治療選択肢のひとつとなる可能性を示すエビデンスをさらに積み重ねるものです。現在、この患者群では標的治療が限られています。このデータは、ゾンゲルチニブの可能性を示すものであり、HER2遺伝子変異陽性がんの基準を変えるという長期的なビジョンを裏付けるものです」
 

最新データの意義

  • 世界保健機関(WHO)によると、肺がんは、2020年に世界で221万人が診断を受け、世界で2番目に多く見られるがんとなっています。NSCLCは、その大部分(8085%)を占め1、そのうち24%の患者さんにHER2遺伝子変異が見られます2,3。これらの患者さんは、化学療法や免疫療法を含む現在の標準治療では十分な効果が得られない可能性があります。そのため、依然として新たな治療オプションに対する大きなアンメットニーズが存在します4
  • この病気は80%の症例で診断が遅れ、診断後の5年生存率は10人中3人未満です5,6。進行性NSCLC患者さんは、日常生活の中で身体、精神、感情面で悪影響を受ける可能性があります。
  • ベーリンガーインゲルハイムは、オンコロジー領域に重点的に取り組んでいます。私たちの目標は、治療が困難ながんに対して、患者さんの生活を変革する治療法を提供することです。

ゾンゲルチニブは開発段階の化合物です。どの規制当局からも承認されておらず、有効性や安全性はまだ確立していません。

非小細胞肺がん(NSCLC)について
肺がんは、他のがんよりも多くの人の死因となっており、発生率は上昇し、2040年までに世界で300万人以上に増加する見通しです7NSCLCは、最も一般的な肺がんです4。この病気は診断が遅れることが多く5、診断後の5年生存率は患者さん10人に3人を下回ります6。進行性NSCLC患者さんは、日常生活の中で身体、精神、感情面でさまざまな影響を受けます。進行性NSCLCでは、依然として新たな治療オプションに対する高いアンメットニーズが存在します。肺がんの約4%は、HER2遺伝子異常によって引き起こされます2HER2の遺伝子変異は、過剰発現や過剰活性化を引き起こし、制御不能な細胞産生、細胞死の阻害、腫瘍の成長・進展につながります8

ゾンゲルチニブについて
ゾンゲルチニブ(BI 1810631)は、治験中の経口HER2特異的チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、HER2遺伝子変異があるNSCLCの治療薬候補として開発されています。ゾンゲルチニブは、全身療法の治療歴があるHER2遺伝子変異陽性の進行性、切除不能または転移性のNSCLCの成人患者さんに対する治療薬として、2023年に米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定されており、2024年には、FDAおよび中国医薬品評価センター(CDE)よりブレークスルーセラピー指定を受けています。

Beamion臨床試験プログラムについて
Beamion LUNG-1NCT04886804)試験は、HER2遺伝子変異陽性の切除不能または転移性の固形腫瘍患者さんを対象に、単剤療法としてのゾンゲルチニブを評価する第1相非盲検用量漸増試験(用量の確認と拡大を含む)です。試験は2つのパートに分かれています。1つ目のパートは、前治療が奏効しなかった、変異、増幅、過剰発現、融合を含むHER2遺伝子変異陽性の、さまざまな進行がんの成人患者さんが対象です。2つ目のパートは、HER2遺伝子変異がある非小細胞肺がんの患者さんが対象です。Beamion LUNG-2試験は、第3相非盲検無作為化実薬対照試験であり、HER2チロシンキナーゼドメイン変異を有するNSCLCのうち、切除不能または転移性の非扁平上皮がんの患者さん270人を登録し、ゾンゲルチニブを標準治療と比較評価する予定です。

ベーリンガーインゲルハイムのオンコロジー領域について
私たちは、がん患者さんの生活を変革するために有意義な進歩を実現し、幅広いがんの治療を目指す明確な目標を持っています。ベーリンガーインゲルハイムが世代を超えて推進するサイエンスイノベーションへの取り組みは、がん細胞を標的とした治療薬およびがん免疫療法からなる開発パイプラインの進展、ならびにこれらのアプローチの組み合わせに反映されています。ベーリンガーインゲルハイムは多様な考え方を結集し、綿密かつ幅広いアプローチで研究を進めることで、オンコロジー領域における共同研究ネットワークを構築することを目指しています。これは、困難でありながらも大きな影響をもたらす可能性のあるがん研究分野に取り組む上で必要不可欠なアプローチです。ベーリンガーインゲルハイムは、これからもがんの個別化治療を目指していきます。

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の健康に取り組むバイオ製薬企業です。研究開発において業界トップクラスの投資を行い、アンメットメディカルニーズの高い分野で画期的な治療法の開発に注力しています。1885年の創業以来、ベーリンガーインゲルハイムは株式を公開しない独立した企業形態により長期的な視点を維持し、バリューチェーン全体にサステナビリティを組み込んだ活動を行っています。より健やかでサステナブルかつ公平な未来を築くため、53,500人以上の社員が130ヵ国以上で事業を展開しています。

詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)

References
1Molina JR, Yang P, Cassivi SD, Schild SE, Adjei AA. Non-small cell lung cancer: epidemiology, risk factors, treatment, and survivorship. Mayo Clin Proc. 2008 May;83(5):584-94.
2Ruiter G. et al. Phase Ib Analysis of Beamion LUNG-1: Zongertinib (BI 1810631) in Patients with HER2-Mutant NSCLC. presented at WCLC, San Diego, 7-10 September, 2024.
3Arcila, M. E. et al. Prevalence, clinicopathologic associations, and molecular spectrum of ERBB2  (HER2) tyrosine kinase mutations in lung adenocarcinomas. Clin. cancer Res.  an Off. J. Am. Assoc.  Cancer Res. 18, 4910–4918 (2012).
4Zappa C & Mousa Non-small cell lung cancer: current treatment and future advances, Transl Lung Cancer Res. 2016 Jun; 5(3): 288–300.
5Polanco D et al. Prognostic value of symptoms at lung cancer diagnosis: a three-year observational study. J Thorac Dis 2021;13:1485–1494
6National Cancer Institute Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER). https://seer.cancer.gov/statfacts/html/lungb.html (Accessed: August 2024).
7International Agency for Research on Cancer – World Health Organization. Rates of trachea, bronchus and lung cancer. Available at: https://gco.iarc.fr/tomorrow/en (Accessed August 2024).
8Galogre M, et al. A review of HER2 overexpression and somatic mutations in cancers, Critical Reviews in Oncology/Hematology, Volume 186, 2023, 103997.