ベーリンガーインゲルハイム ・イノベーション・プライズ2020東京を開催、受賞者が決定
2020年9月8日(火)にオンラインで開催した「イノベーション・プライズ」では、医療・バイオテクノロジー分野の起業家・スタートアップ企業10社により、がん治療、感染症、再生医療に関連するテーマや全く新しい創薬関連技術、診断技術など、革新的なアイデア・プロジェクトのプレゼンテーション・コンテストが行われました。
審査員による厳正な審査の結果、STAND Therapeutics株式会社(樺山博之氏)の「細胞内抗体“STAND Technology”を用いた治療薬の開発」が第1位を受賞しました。また第2位にはルクサナバイオテク株式会社(佐藤秀昭氏)、第3位にはCraif 株式会社(小野瀨隆一氏)が選ばれました。またオンライン聴講者からの投票により、Veneno Technologies株式会社(平良光氏)がオーディエンス賞に選ばれました。
各受賞者および審査員の小泉信一氏(Medicinal Creation Advisor 代表社員)のコメントは下記になります。
第1位
『細胞内抗体“STAND Technology”を用いた治療薬の開発』
STAND Therapeutics株式会社 代表取締役 樺山 博之氏
この度は、ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズ2020で、数多くの大変優秀な発表の中から弊社を第一位に選んで頂き、大変光栄に存じます。本受賞は、弊社の目指す創薬事業への力強い後押しになります。
弊社は、従来の抗体では不可能であった、細胞内の治療標的タンパク質にアプローチできる、細胞内抗体“STAND Technology”を用いた治療薬の開発を行っています。90年代から、ファージディスプレイ法などにより、多くの小型化した抗体(Single-chain Fv: ScFv)が作製されるようになりました。scFvは細胞外であれば、正しくフォールディングされて抗体として機能しますが、細胞内では凝集してしまい、抗体として全く機能しないという問題がありました。当社は”STAND Technology”により、細胞質でscFvが凝集するのを抑制し、抗体として機能させることに成功しました。弊社は本技術を用いて、未だ治療薬のない難治性の神経疾患やがんなど様々な疾患に対する治療薬の創製を目指していきます。
第2位
『脊髄損傷に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド療法の開発』
ルクサナバイオテク株式会社 代表取締役社長 佐藤 秀昭氏
この度はイノベーション・プライズ2020に発表機会を頂き深く御礼申し上げます。審査員の皆様、オーディエンスの皆様のご関心を頂き2位のご評価を受けたこと、社員一同望外の喜びを感じています。全社一丸となり、アンチセンス医薬開発に一層邁進して参ります。引き続きのご関心とご支援何卒宜しくお願い致します。
ルクサナバイオテクは、大阪大学小比賀聡教授らにより発明された修飾核酸群を基盤とし、2018年から核酸医薬品、特にアンチセンス医薬にフォーカスし創薬プラットフォームを構築、成長して参りました。医薬品開発においては、複数の製薬会社やアカデミアとの共同研究開発を実施しており、開発ステージアップ段階にあります。本ピッチでは愛知医科大学武内恒成教授グループとの共同開発である、優れた脊髄損傷治療薬と期待されるアンチセンスのコンセプト、優位性、開発の現況を説明しました。是非一緒に育てて頂けるパートナーを求めております。
第3位
『尿中エクソソームmiRNAプロファイルの包括的な分析による患者の層別化』
Craif株式会社 代表取締役社長(CEO)兼 共同創業者 小野瀨 隆一氏
当社は、名古屋大学発ベンチャーとして日本が誇る素材力を用いて尿からエクソソームを捕捉し、AI(人工知能)を組みあわせることで、エクソソームバイオマーカー解析プラットフォームを構築しています。
このプラットフォームを医療に応用することでわずか一滴の尿から、高精度でがんを早期発見する検査や個別化医療を実現する治療選択・診断ツールを開発しています。
今回のイノベーション・プライズ受賞を機に、製薬企業との協業の可能性を模索し、創薬支援を通じて技術を社会に還元することを目指して参ります。
オーディエンス賞
『大腸菌を使用した進化的分子工学に基づく膜貫通タンパク質をターゲットとするDRP創薬プラットフォーム』
Veneno Technologies株式会社 ディレクター 平良 光氏
この度のイノベーション・プライズ Audience賞の受賞を大変光栄に思います。この場を借りて会の運営にご尽力くださった皆様に厚く御礼を申し上げます。当社は、イオンチャネルに強力に作用する天然ペプチドの一種Disulfide-Rich Peptide (DRP) をモダリティとして、イオンチャネル等の膜タンパク質を標的としたペプチド医薬品を開発しています。DRPは、その高い標的選択性や分解酵素耐性、低い免疫原性から、世界各国の製薬企業が新しいモダリティとして注目し、自己免疫疾患、疼痛、がん、神経系疾患等の治療薬として開発を進めています。今回の受賞を励みに、当社が有する1) DRPライブラリ作成、2) DRP改変のための高速スクリーニング、3) DRP大量製造、の3つのプラットフォーム技術を活用し、自社パイプライン開発(脳浮腫や疼痛治療薬等)とDRP薬剤探索のパートナリング事業に取り組んでまいります。
審査員
Medicinal Creation Advisor 代表社員 小泉 信一氏
非常に印象的なイベントでした。ファイナルチームは、イノベーション・プライズの名前にふさわしい斬新な試みを提案するものであり、その事業内容も多岐にわたり、それぞれ志と自らの技術に対する情熱が伝わりました。現在の、COVID-19の影響下でも開催を決断した主催者の、優れたサイエンスに裏付けられた日本の創薬ベンチャーへの期待に、すべての参加チームが今後の事業の進捗で応えられることを楽しみにしております。
今回のイベントでのピッチ発表は下記になります。
Order of presentation |
Company / Team | Project Title (Presenter) |
---|---|---|
1 | MycHunter Therapeutics Inc | Novel therapeutic intervention for Myc gene amplification (Tesshi Yamada) |
2 | Luxna Biotech Co., Ltd. | Antisense Oligonucleotide Therapy for Spinal Cord Injury (Hideaki Sato) |
3 | Otolink | Innovative biotechnology treatments for hearing loss (Masato Fujioka) |
4 | Oligogen, Inc. | Clinical application of novel human neural stem cell “OligoGenie” (Tsuneo Kido) |
5 | Epsilon Molecular Engineering, Inc. | Rapid isolation of VHHs neutralizing COVID19 with combinations between cDNA Display and screening technologies. (Masayuki Tsuchiya) |
6 | STAND Therapeutics. Co., LTD. | Development of therapeutic drugs using STAND technology, a fully functional intracellular antibody (Hiroyuki Kabayama) |
7 | Craif Inc. | Patient Stratification by comprehensive analysis of exosomal urinary miRNA profile (Ryuichi Onose) |
8 | Veneno Technologies Co., Ltd. | DRP drug discovery platform targeting transmembrane proteins based on evolutionary molecular engineering using E. coli (Hikaru Taira) |
9 | Nexuspiral Inc | Precise genome editing using oligonucleotides (Naoyuki Masuda) |
10 | xFOREST Therapeutics Co., Ltd. | Novel 1 million-X HTS Platform technologies for RNA-targeting drug discovery: FOREST (Shunichi Kashida) |
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