SGLT2阻害薬「ジャディアンス®錠10mg」、慢性腎臓病に対し適応追加を承認申請
- 慢性腎臓病患者を対象とした臨床試験である、EMPA-KIDNEY第Ⅲ相臨床試験において、成人慢性腎臓病患者の腎臓及び心血管イベントに対する有効性が示され、主要評価項目を達成した結果に基づく申請。
- ジャディアンス®錠は、2014年に2型糖尿病治療薬として日本で製造販売承認を取得、2021年に慢性心不全の効能又は効果の追加承認を取得した後、2022年には左室駆出率を問わない慢性心不全の治療薬として電子化された添付文書を改訂。
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
*日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病および慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。 )であり、慢性腎臓病治療薬として国内外で承認されていません。
2023年01月31日
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(東京都品川区、代表取締役 医薬事業ユニット統括社長:ヤンシュテファン・シェルド、以下、「日本ベーリンガーインゲルハイム」)及び日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下、日本イーライリリー)は、SGLT2阻害薬『ジャディアンス®錠10mg』 [一般名:エンパグリフロジン]の慢性腎臓病(以下、CKD)に対する適応追加の製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省へ行いましたことをお知らせいたします。
CKDは腎障害を示す所見や腎機能の低下が慢性的に持続する疾患です1。CKDは死亡や心筋梗塞、脳卒中、心不全などの心血管疾患のリスクファクターであり、進行すると末期腎不全に至り、透析療法や腎移植術が必要となります。CKDの治療目的は、腎機能の低下を抑え末期腎不全への進行を遅らせること、および心血管疾患の発症を予防することです2,3。
今回の適応追加承認申請は、CKDにおけるSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の臨床試験であり、6,609名の糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず、日常診療で良く見られる患者(うち日本人612名)を対象とした4,5、EMPA-KIDNEY第Ⅲ相臨床試験のデータから得られた結果に基づいて提出しています。EMPA-KIDNEY試験において、成人慢性腎臓病患者の腎臓及び心血管イベントに対する有効性が示され、主要評価項目を達成しました4,5。エンパグリフロジンの投与により、慢性腎臓病の進行または心血管死のリスクがプラセボ投与群に比べ28%低下し、有意差が認められました (HR; 0.72; 95% CI 0.64 to 0.82; P<0.000001)4,5。また、慢性腎臓病を対象としたSGLT2阻害薬の臨床試験としては初めて、試験計画書で事前規定された主な検証的副次評価項目の1つであるすべての入院を有意に減少(14%)した試験となりました (HR; 0.86; 95% CI 0.78 to 0.95; p=0.0025 )4,5。
慢性腎臓病は、患者さんの入院リスクが倍増する世界の死因の上位にある疾患です6,7。今回の適応追加申請が承認された際には、CKDの治療選択肢が広がり、CKDに苦しんでいる患者さんに寄与できるものと考えています。
日本ベーリンガーインゲルハイム及び日本イーライリリーは今後も患者さんの治療に貢献できるよう、活動を続けてまいります。
参考情報
慢性腎臓病について
慢性腎臓病の症例の約3分の1は、糖尿病、肥満や高血圧などの代謝性疾患に起因しています8,9 。
特に、慢性腎臓病は、合併症発現率と死亡率の上昇をもたらします。慢性腎臓病の患者さんの大部分は、末期腎疾患まで進行するまでに、心血管系の合併症により死亡しています10,11 。末期腎不全まで進行した患者さんは、透析療法や腎移植などの腎代替療法が必要になります17。慢性腎臓病は、世界の多くの地域で有病率が高く、人口の10%以上が罹患しています9,10。
EMPA-KIDNEY試験について(エンパグリフロジンによる心腎保護効果の検討)11,12
EMPA-KIDNEY(NCT03594110)は、国際無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、腎臓病の進行と心血管死のリスクに対するエンパグリフロジンの影響を評価する試験として設計されています。主要評価項目は、心血管死または腎臓病の進行 [末期腎不全(透析や腎移植などの腎代替療法が必要とされる状態)、eGFRが10mL/min/1.73m2未満で持続する状態、腎死、またはeGFRの無作為化時点からの低下率が40% 以上で持続する状態のいずれか] のいずれかが生じるまでの期間としました。EMPA-KIDNEYには、慢性腎臓病の診断が確立した6,600人を超える成人患者が糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず参加し、標準治療に加えてエンパグリフロジン 10mgまたはプラセボの投与を受けました。
EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています13。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。9つの臨床試験と1つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。
心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心腎代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます。
心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます14,15,16。
両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。
エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です。エンパグリフロジンは、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています。また、世界各国で、成人の左室駆出率を問わない心不全患者の治療薬として、承認されています14,17。
*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、今日そして次世代にわたり、暮らしを変革する画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型のバイオ製薬企業のリーディンクカンパニーとして、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態により長期的視野を維持しています。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、52,000人以上の社員が世界130ヵ国以上の市場で事業を展開しています。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)
References
- 日本腎臓学会(編集). エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社; 2018.
- Matsushita K, van der Velde M, Astor BC, Woodward M, Levey AS, de Jong PE, et al. Association of estimated glomerular filtration rate and albuminuria with all-cause and cardiovascular mortality in general population cohorts: a collaborative meta-analysis. Lancet 2010;375:2073-81.
- 日本腎臓学会(編集). CKD診療ガイド2012. 東京医学社; 2012.
- EMPA-KIDNEY full data presentation, presented on 4 November 2022 at the American Society of Nephrology (ASN) Congress 2022 - Kidney Week
- Herrington, W.G. et al. Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease, N Engl J Med, online publication on November 4, 2022, at NEJM.org. DOI: 10.1056/NEJMoa2204233
- USRDS. 2021 Annual Report. [online] Last accessed: October 2022.
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- Levin A, Tonelli M, Bonventre J, et al. Global kidney health 2017 and beyond: a roadmap for closing gaps in care, research, and policy. Lancet. 2017;390:1888-917.
- Coresh J. Update on the Burden of CKD. J Am Soc Nephrol. 2017;28(4):1020–1022.
- Clinical Trials. EMPA-KIDNEY (The Study of Heart and Kidney Protection With Empagliflozin). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03594110 Last accessed: March 2022.
- The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. [Published online ahead of print March 3 2022]. Nephrol Dial Transplant. 2022. DOI:10.1093/ndt/gfac040.
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- Wanner C, Inzucchi SE, Lachin JM, et al. Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016;375:323-34.