左室駆出率が保持された成人心不全患者へのエンパグリフロジン適応拡大に対して、CHMPが肯定的見解を発表
- この肯定的見解は、左室駆出率が40%超の心不全患者において有意な結果を示したEMPEROR-Preserved第Ⅲ相試験に基づきます1。
- 承認された場合、エンパグリフロジンは左室駆出率が保持された患者さんを含む、すべての成人の心不全全体に対する臨床的有効性が明らかになった初の治療薬となります。
- 心不全は、欧州での入院の主な原因となっています2。罹病率は上昇しており、世界で6,000万人以上に影響を及ぼしていると推定されます3。
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2022年1月28日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得しておりません。なお、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎です。また、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」
2022年1月28日 ドイツ・インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは本日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、慢性心不全の成人患者の治療薬として、エンパグリフロジンを推奨する肯定的見解を与えたことを発表しました1。エンパグリフロジンは、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者の治療薬として、すでに承認されています4。今回承認された場合、この肯定的見解により、左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)を含む、左室駆出率(LVEF)の全範囲にわたる心不全の成人患者に適応が拡大されます。
ドイツ・シャリテベルリン(Charité Berlin)の心不全専門医で、EMPEROR-Preservedの試験責任医師であるStefan Anker教授は次のように述べています。「我々にとって初めて、左室駆出率を問わない心不全全体の臨床転機を改善する治療薬が誕生することになります。心不全患者さんの半数は、左室駆出率が保持された患者さんであり、承認を取得した有効な治療薬がないために予後不良となっています。本日のEMAの肯定的見解は、心不全治療を再定義する重要な一歩であり、欧州の何百万人ものHFpEFと診断された慢性心不全患者さんの命綱となるものです」
この肯定的見解は、EMPEROR-Preserved第Ⅲ相試験の結果に基づいています。この試験では、LVEFが40%を超える心不全の成人患者5,988人を対象に、エンパグリフロジン10 mgとプラセボを1日1回、標準療法に追加して比較検討しました5。エンパグリフロジンは、主要評価項目である心血管死または心不全による入院のリスクを、プラセボと比較して21%低下させました(絶対リスク減少3.3%、0.79 HR、0.69-0.90 95% CI)。このベネフィットは、左室駆出率や糖尿病合併の有無にかかわらず認められました5。
ベーリンガーインゲルハイムのコーポレートバイスプレジデント、心血管代謝部門長のWaheed Jamal(M.D.)は、次のように述べています。「成人の心不全患者さんの治療薬として、CHMPがエンパグリフロジンを推奨することを決定したのは喜ばしいことです。相互に関連する心腎代謝系を理解することにより、医療の最大の課題に対するソリューションを科学的に証明し、糖尿病から心不全へと適応範囲を拡げることができました。EMPEROR-Preserved試験で確認された前例のない臨床ベネフィットによって、十分な治療を受けられていない患者さんに新たな希望をもたらす可能性があることを誇らしく思います」
イーライリリー・アンド・カンパニーの製品開発部門バイスプレジデントのJeff Emmick(M.D.,Ph.D.)は、次のように述べています。「本日の肯定的見解は、心血管系治療薬における最大のアンメットニーズに対処するものであり、左室駆出率の全範囲にわたるエンパグリフロジンの可能性を確証するものです。私たちは、まだ十分な治療法が確立されていないこの分野での研究に、引き続き取り組んでいます。EMPA-KIDNEY試験の結果、及び慢性腎臓病におけるエンパグリフロジンの可能性にも期待しています」
EMPEROR-Preserved試験は、SGLT2阻害薬の中で最も幅広く、包括的に心腎代謝疾患の患者におけるエンパグリフロジンの影響を研究するEMPOWER臨床試験プログラムの一部です。
参考情報
EMPEROR慢性心不全試験6,7について
EMPEROR(EMPagliflozin outcomE tRial in patients with chrOnic heaRt failure:慢性心不全の患者を対象にしたエンパグリフロジンのアウトカム試験)慢性心不全の臨床試験プログラムは、2型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、エンパグリフロジンの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する以下の2つの第Ⅲ相無作為化二重盲検試験で構成されます。
- EMPEROR-Reduced試験 [NCT03057977]:左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
- 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
- 患者数:3,730人
- 試験完了:2020年
- EMPEROR-Preserved試験 [NCT03057951]:左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の成人患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価します。
- 主要評価項目:判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間
- 患者数:5,988人
- 試験完了:2021年
EMPOWERプログラムについて
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患における心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するエンパグリフロジンの影響を調べています。心腎代謝疾患は、世界の死因のトップを占め、年間2,000万人がこれらの疾患で死亡しています8。EMPOWERプログラムを通じて、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいます。9つの臨床試験と1つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者さんの予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みです。世界で40 万人以上の患者さんが参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっています。
心不全について
心不全とは、心臓が体中に十分な血液を送り出すことができず、酸素を含んだ血液の需要を満たせない進行性の状態であり、死亡に至る場合もあり、酸素を含んだ血液の需要を満たすために、血液量を増やさなければならず、その結果、肺および末梢組織に液体貯留(鬱血)が生じます9,10。心不全は、世界中で6,000万人以上が罹患しており、高齢化が進むにつれて患者数が増加すると予測されます3,11。心不全は糖尿病患者で大変多く見られますが16、心不全患者全体の約半分は糖尿病に罹患していません12,13。
心腎代謝疾患について
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、世界で10億人以上に影響を及ぼし、主要な死因の1つとなっている相互に関連した一群の病気である心腎代謝疾患の患者ケアを変えるべく取り組んでいます11,14。
心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有しています。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながります。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えます14,15,16。
両社は、研究と治療を通じて、より多くの患者さんの健康を守り、相互に関連した心腎代謝系のバランスを回復し、重篤な合併症のリスクを減少させられるようサポートします。心腎代謝疾患によって健康が脅かされている患者さんのための取り組みの一環として、両社は、今後も患者ケアに向けた分野横断的なアプローチを採用し、治療ギャップの充足のための資源を重点的に投資してまいります。
エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬であり、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です17,18。エンパグリフロジンは、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています17,18。また、欧州と米国を含む世界各国で、成人の左室駆出率が低下した心不全患者の治療薬としても承認されています*17。
*日本において慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠®10㎎であり、効能・効果は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)です。なお、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載があります。「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」、「『臨床成績』の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。」
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者さんのニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の生活を向上させる画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型の製薬企業として、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態を維持し、長期的な視点をもって邁進していきます。医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、約52,000人の社員が世界130カ国以上の市場で業務を展開しています。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー・アンド・カンパニーは、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー・アンド・カンパニーは、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー・アンド・カンパニーの従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
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(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
https://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
https://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)
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References
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